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投げ釣り  [ フィールドスタッフ 菅原 隆 ]

[ ケミホタルフィールドスタッフ 菅原 隆 ]

北海道千歳市在住。全日本サーフキャスティング連盟北海道協会会長。世界大会出場経験もある超遠投派釣師。日本有数の遠投技術を持つサーフ界のトップアスリートである。


ハンマーフロートで100m先のイカを攻める

 初冬からカレイを追いかけて、6月も後半になると北海道ではカレイシーズンも一段落する。多少早いが夏枯れ状態になるのだ。そしてその時期から待ちに待った夜釣りがメインになり、ソイや真アナゴ、スルメイカのシーズンに突入する。
 私の釣りは遠投一本槍で、どちらかというと夜釣りは苦手なほうだ。そのため必然的にターゲットは平物を狙うことが多かった。ところが、数年前に大ヒット商品となった ハンマーフロート が発売されてからというもの、苦手としていたソイの釣果が大幅にアップ! おかげで夜釣りが苦にならなくなった。
 さらに昨年まで試行錯誤を繰り返しテストしていたイカバージョンの ハンマーフロートF型 の試作品でイカ釣りを重ねるたびに釣果がアップ。完成品が出回った今では、すっかりイカ釣りにはまっている。

 当初、試作品を手渡された頃は、投げ専門のタックルしか持っていなかったため、現場では毎回、四苦八苦した。と言うのも、イカが多少は乗るが、投げ専門のタックルではどうにもバランスが悪いのだ。そこで ハンマーフロートF型 に合わせたタックルを用意し、久しぶりに投げ竿を磯竿に持ち替えることにした。同時にテーマを決めて、それを目標にした。
 そのイカバージョン秘策のキーワードは「遠投、沈める、誘う」の3つだ。
 まず第一は ハンマーフロート で飛ばすこと。第二はテーラー仕掛けを素早く沈めること。しかしこれが多少厄介だった。遠投するためには必ず力糸を使う。さらに道糸はPEラインのため、風と波に弱い。風が吹くと仕掛けは軽いし、力糸は太く、PEラインは風に引っ張られて沈まないのだ。テーラー仕掛けが沈まなければ誘うことも出来ないし、沈まない以上、当然イカは乗ってこない。
 そこで今回、ロッドは遠投用のホリデー磯450XT4号PTS。リールはエアレックスC3000。それにデュラAR-C1.2号を巻く。さらにテーラーを遠投用に改造、ナマリで重くして、イカ釣りのメッカ積丹半島で再チャレンジとなった。この日は風が良かったこともあり、100m前後の場所を攻める。着水して1〜2回も誘うと「コッ、コッ」と90%の確率で明確なアタリがでる。「グッ」と重くなったところで大きく合わせると、スルメが乗って4.5mの磯竿が大きく弧を描く。今までの「掛かる」から「掛ける」に変わって面白さは倍増する。
 釣り方は簡単で、先ずフルキャストするが、タナは5mと深めにセットする。これは一定のタナを流すのではなく、ウキから5mの間をリフト&フォールで誘うためだ。つまり ハンマーフロート が着水してからテーラーが沈み、沈みきったところでそのテーラーを再度ウキのところまで引き上げる。それを何度も繰り返すのだ。イカの回遊に当たれば百発百中の優れ技である。ただし100m前後と遠くて明かりが見えにくいため、ぎょぎょライト はダブル付けが無難だろう。この日の釣果は私が94杯。同行した友人も37杯と船釣りに引けを取らない釣果だった。おかげで最近はこの釣りにすっかりはまっている。ただ流すだけの釣りより、遠投して探る釣りの方が格段に釣果が倍増する事うけあいだ。またもう一つの楽しみが、釣ったイカを一部生かしたまま持って帰ること。それをお造りにして一杯やると絶品この上ない。これは釣り人の特権だ。ぜひお試しあれ。




『 イカ墨の秘密 』

 イカは敵から襲われると墨を噴出し、その反動で逃げ出します。噴出のパワーは意外につよく、アオリイカでも空中を数メートルもジャンプすることがあります。あとに残された墨はあまり広がらないでイカの分身の役目を果たすほか、豊富に含まれるアミノ酸の匂いでも敵を引きつけます。この墨は血液と同じく、自分で作った栄養成分(*註)なので、あまり何発も吐いたイカは疲弊して死んでしまいます。
 墨には粘性があり、もし吸い込むと吐いたイカ自身もエラが塞がれて危険です。狭い場所で墨を吐かれると全滅するため、漁師さんは流れのある海中で吐かせてからイケスに取り込みます。
 墨の成分に毒性はありませんが、同種のイカは危険を感じて身を潜めてしまいます。逆に、チヌなどの稚魚は栄養分を求めて寄ってきます。この集魚効果に着目したのがフィリピンの漁師さん。イカ墨をビニール袋に入れて小さな穴をあけ、流れ出した匂いでマグロを集めて獲る漁法を開発しました。
 イカの天敵であるクエやタチウオは海の底から襲いかかります。夜間でも月明かりがあれば、黒い墨でもダミー効果を発揮できるでしょう。しかしイカ本体が光っている場合、暗い海中で墨を吐いてもダミー効果を得ることはできません。そのため、発光イカであるヒカリダンゴイカやギンオビイカは発光する液を吐いて敵の眼を欺くそうです。
註:グルタミン酸・チロシン・メチオニン・プロリン・セリンなど。抗菌作用のあるリゾチームが含まれているため保存性も高い。



特別企画 : 「 イカの色覚大研究 」

色を見分ける2つの条件

 物体の色は外部から当たった光の反射なので、さまざまな色彩を見るためには、太陽光のように巾広い波長を持った光が必要になります。単波長の光だけしかない場所で、その色以外の色を見ることはできません。正常に色を識別できる目でも、トンネル内の黄色いナトリウムランプのもとでは、すべての物体が黄色と黒だけになってしまいます。
 深い海中は、水や浮遊物による光の吸収と散乱のために480nm(ナノメートル)を中心とした青い単色光の世界です。その水深に青い光だけしか存在しない以上、黄色や赤の物体を地上のような色に表現することはできません。自から発光する物体だけがその色彩を表現可能です。

 つぎに、眼球内に色の違いを感知するためのセンサーがあること。色を見分けるには、特定の波長に反応する複数の視物質が必要です。人間には650nm(赤)・530nm(緑)・420nm(青)に対応した3種類の視物質がありますが、紫外線を感じる物質を持たないため、そこに紫外線を反射する物体があったとしても、色として感じることができません。多くの鳥や魚類は4種類の視物質を持っており、人間には見えない範囲の色まで見えていることが判っています。
 従来はS-電位(註)の発生によって、その生物の網膜が特定の波長の光に反応したかどうかを判定していました。現在では視物質を直接生化学的、分子生物学的に解析することで、はるかに精度の高い結果が得られるようになっています。従来は色盲と判別された魚種にも色覚が存在することが判ってきました。


(註)S-電位
網膜の水平細胞が光に反応した場合に生じる電位。スェーデン人研究者スベティヒン(Gunnar Svaetichin 1915〜1981)の頭文字をとってS-電位と呼ばれる。



イカの偏光グラス

 光には固有の振動数(波長)と振動方向があります。太陽光には海の波のように上下に振動する光や、ヘビのように水平に振動する光、斜めに振動する光などが入り混じっていて、物体にあたった場合、特定の振動方向(面)の光だけがつよく反射します。この、反射によって振動方向が揃った光が偏光と呼ばれます。
 一方、光を受けとる側の網膜には視細胞が並んでいます。タンパク質とレチナールが結合した視物質には分子の並ぶ方向があり、その向きによって吸収しやすい振動方向の光と吸収しにくい方向の光があります。脊椎動物の網膜では、たくさんの分子が円盤状に配置されているため、振動の方向がバラバラであっても、全体としては均等に吸収します。
 これに対してイカの網膜は、視物質が一定方向に規則正しく整列した微絨毛構造のため、特定方向に振動する光が吸収されにくい仕組みになっています。つまり偏光グラスの機能を備えています。海中においては、浮遊する微粒子の反射から偏光成分が取り除かれるので、遠くまではっきりと見える効果があります。
 海面でギラギラと反射する光は水中への視界を遮ります。このとき、ギラギラ光は水中へも同じように放射されて、水中からも水上の視界が制限されます。イカはこの水中への偏光を自分の眼でカットして、明瞭な水上の景色を見る能力を持っています。


[ 写真 ] イカの眼は耳鼻科のお医者さんの額帯鏡と同じ仕組みになっているため、くらい海中でわずかな光を集めて照明することができます。



ホタルイカの色彩感覚

 ホタルイカの網膜にはA1(レチナール:ビタミンA)、A2(3-デヒドロレチナール)、A4(4-ヒドロキシレチナール)という3種類の視物質の存在が確認されています。視物質とは、色識別の基本になる複合タンパク質(オプシン)のことです。
 A1は484nmに吸収極大波長があり、人間からすれば緑青に相当する波長を感じることができます。A2は501nm(緑)を、A4は471nm(青)を中心にした色を感じる視物質です。
 脊椎動物の網膜では、これらの視物質はひとつの平面に並んでいるのが常識です。イカの網膜には一種類しか確認されないため、今までイカは色盲とされてきました。
 ところがイカの眼の発生のルーツは一般の魚類とは異なります。最新の研究により、ホタルイカの視物質は平面に並んだベイヤー配列ではなく、上下に重なったフォビオン構造だと判明しました。網膜は2重構造になっていて、上の層の視物質には黄色い色がついています。これをカラーフィルターと考えれば、下の層にある視物質は550nm(黄緑色)の光を受容していることになり、色盲どころか、意外にも広い色域が見えていることが判ってきました。
 ホタルイカの網膜に、この3種類のレチナールが均等に分布しているのではありません。網膜の、体の下側に相当する部位には501nmの波長を吸収するA2レチナールが多く分布しています。レンズを通った光は逆像なので、空側で緑色がよく見える仕組みになっているわけです。底方向は青色を中心に見ていても、上方向では可視範囲が広がって、海藻のグリーンまで見えることになります。
 イカやタコの視細胞は似通った形状をしていますが、種類によって環境への適応の度合いは違います。甲イカの場合、視物質は水平方向に密度が濃く分布していて、水平方向の解像度は上下の4〜8倍ほど高くなっています。
 現在のところ研究が進んでいるのは限られた種類だけで、ほかの種類のイカはA1レチナールだけしか持ってないとされます。

[ 参考図書 ] 東海大学出版会 奥谷喬司著「ホタルイカの素顔」

[ 写真下 ] アオリイカは英語で bigfin reefsquid または oval squid または big-eye squid と呼ばれる。眼が大きく、周辺が緑色に発光するのが特徴。



『 イルカの集魚ライト 』

イルカの仲間、カズハゴンドウは体長2〜3メートル。世界中の熱帯-温帯域に生息する歯クジラの一種で、顔がマスクをつけたように黒く、唇が白いのが特徴です。群れは大きいものの、沖合い性がつよいため、人の目に触れることは多くありません。
 主食はイカですが、驚くべきはその集魚方法。なんと暗い海中で、自らの唇を発光させてイカを誘き寄せるのです。発光の化学的なメカニズムはまったく判っていませんが、このカズハゴンドウを設計した造物主は、イカが光を好きなことを知っていて、カズハゴンドウにその集魚装置を与えたことになります。



【 ハンマーフロート E型 / F型 】

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九州釣り情報で掲載しております 『 イカを極める 』
は ケミホタルクラブ誌 Vol.32 に掲載されている
ものと同じ内容です。
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