■イシダイ釣りをはじめよう  〜むずかしくない究極の磯釣り〜
第1回 「イシダイという魚」
 みなさんはイシダイというとどんなイメージを持たれているでしょうか。磯釣りをする人なら「難しい釣り」「幻の魚」、釣りをしない人なら「ああ、あの縞がある美味しい魚ね」などなど、いろんな思いがあるでしょう。でも、食べておいしいのは正解ですが、イシダイ=むずかしい釣りとか幻の魚というのは、いささかオーバーだと思います。その証拠にイシダイは基本さえマスターすれば誰にでも釣ることが可能で、しかも、いつ大型がヒットするかもしれません。→
また、イシダイは離島に遠征しなければならず、費用や日程の確保が大変と最初から敬遠されている人も見受けられますが、それは大間違い。むしろクロ(メジナ)より身近な場所に生息しています。
 とにもかくにも、イシダイ釣りは独特のアタリから合わせ、そして手にしたときの満足感は他の釣りにはないものがあります。限りない魅力がいっぱいつまったイシダイ釣りの世界をぜひ覗いてみてください。
●イシダイとイシガキダイ

 この文を読まれる方は多かれ少なかれ釣りに親しまれているでしょうから、イシダイとイシガキダイの違いはほとんどの方がご存知だと思います。そう縞模様があるのがイシダイで、斑点模様があるのがイシガキダイです。生息海域はイシダイに比べてイシガキダイの方がやや南方系といわれていますが、九州の場合はほとんどの地域で混生しているようです。とくに幼魚期はイシダイとイシガキダイが群れで行動することが多く、これに出くわすと釣りにならないことがしばしばあります。というのも、イシダイもイシガキダイも30センチ以下は口が小さいのでなかなかハリに掛からず、いわば最強のエサ盗り軍団?といえるでしょう。

 さて、イシダイは幼魚期を過ぎ、体長が40センチを超える頃になると体の表面に変化が現れます。俗に「銀ワサ」とか「銀ピシャ」とかいわれる現象です。これはトレードマークである七本の縞模様が消え、口の周囲を除いて体中が銀色になることを意味しますが、変化が見られるのはオスだけで、メスはどんなに大きくなっても縞模様は消えません。ただし、ハリ掛かりしてからのパワーは雌雄に違いはなく、どちらも60センチ級になると想像を絶するほどの力で釣り人を楽しませてくれます。

 いっぽうイシガキダイはというと、こちらも成長するに連れて変化が生じます。といっても斑点が消えるのではなく、オスの口の周囲が白くなってくるのです。これが「クチジロ」といわれる魚です。まれにメスも口の周りが白くなることもありますが、メスが尖った口をしているのに対し、オスの口は全体に丸みを帯び、その面構えはまさに「磯の王者」と呼ぶに相応しい貫禄があります。ちなみにイシダイは最大で70センチ級ですがクチジロは80センチまで達し、中には1メートルを超えるウルトラヘビー級がいるといわれています。参考までに80センチ、10キロオーバーのクチジロの口は大人の握りこぶしが入るくらいの大きさをしており、頑丈な歯と強靭な顎はイシダイバリを簡単に噛み潰すほどの威力があります。
イシダイのオスは大きくなるにつれて縞模様が消える
防波堤で釣ったイシダイ。
マキエを入れ続けると身近な場所でも釣れ
る。
●イシダイの生息場所

 幼魚は防波堤や砂浜でも姿を見受けられるイシダイですが、大きくなるに連れて岩礁地帯へと生息域を移します。これはイシダイが主食とする貝類などが岩礁地帯でないと付着していないからで、いきおい荒磯がイシダイ釣りのフィールドとなるわけです。しかし、実際は湾内の磯や防波堤など、そこにエサがあればイシダイがいる確率はかなり高く、言い換えると近場の磯でもイシダイは狙えるということになります。

 いくつか具体例を挙げると福岡県宗像郡の恋の浦海岸、志賀島、糸島半島の野北などでは数は少ないもののイシダイが回遊してきます。それも30センチ以下のサンバソウではなく40センチオーバーの立派なイシダイで、恋の浦では3キロ級が釣れたという事実もあります(もちろんイシダイ仕掛けで)。また、長崎県の平戸にある春日の地磯は、今まで上物ですら浅いため敬遠されていた場所ですが、一昨年にポイントを発見されるや爆発的にイシダイが釣れ、私自身も行く度に2枚、3枚とイシダイをモノにしました。サイズは2キロ級が平均ですが、昨年末には60センチ4キロ級というデカバンも釣れています。参考までに春日は40メートルの遠投でも水深5メートル前後。にもかかわらず、潮さえよければガンガン当たってくるのだから驚きです。

 このように、イシダイは意外と身近なところにいる魚といえ、マキエ(カラス貝やウニガラ)などを定期的に入れることによって、新たにポイントを作ることも十分可能です。ポイントの作り方は実戦編で詳しく説明しますが、もしかすると貴方が通っているお手軽フィールドも実はイシダイの宝庫かも? 上物釣りをしていてたまに正体不明の大物にハリスを切られる・・・そんな釣り場は期待大といえるでしょう。
一本のラインを通してイシダイと対峙する。
これが最大の魅力だ。
<九州の主なイシダイ釣り場>
福岡県 宗像沖ノ島
佐賀県 馬渡島、加唐島
長崎県 壱岐、対馬、二神島、平戸全域、大瀬戸一帯、
野母半島、五島列島、男女群島
熊本県 天草全域(牛深、大江、高浜、下田など)
大分県 県南一帯(鶴見、蒲江、高島、深島など)
宮崎県 県北一帯(北浦〜南浦、細島など)、日南海岸一帯
鹿児島県 薩摩半島(野間池、秋目、坊津、枕崎など)、
大隈半島(佐多岬、船間、内之浦、間泊など)、
薩南諸島(甑島、鷹島、宇治群島、草垣群島、硫黄島など)、屋久島、種子島、トカラ列島、奄美大島周辺
*沖縄にはイシガキダイ、クチジロが生息している。
 
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