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 マダイとクロダイは体型が酷似していてDNAの配列も近いため、もとは同じ種類だったのが、深場を好むグループと浅場を好むグループに分かれて進化してきたと考えられています。
 クロダイは淡水池に棲めるほどの広塩性を武器に生活圏を広げ、紫外線から身を護る黒い体になりました。
 逆にマダイは川の流れ込みのある場所さえ苦手になり、普段から塩分濃度の変化しやすい浅場を避けて索餌回遊しています。
 青い海の中で赤い色は消えてしまいます。クロダイと生活圏を棲み分けて深場に適応したマダイは、保護色になる赤い体を獲得しました。マダイはこの赤色をキープするためにも、赤色色素のアスタキサンチンを多く含むエビやカニを好んで捕食します。もし色素を与えられずに飼育されると、クロダイと同じ色になってしまいます。
 両者はともに底性生活の雑食性の魚であり、多様な生物を食べるために好奇心がつよく、その割に用心深いといった性格まで似ています。
 視線の中心は前方斜め下を向いており、常に海底が見えていないと安心できないため、浮き上がることは少なく、幅のある海溝を越えて遠くまで移動することはありません。


「 鯛 」 はどこから来たのか

 鯛という文字は奈良時代(710〜784年)になって初めて歴史に登場(註1)します。それまでは赤女(アカメ)と呼ばれていたのが、奈良から平安にかけて平らな魚という意味でタヒと呼ばれ始めました。
 日本最古の百科事典とされる「倭名類聚鈔」(註2)に「鯛 和名太比(タヒ)」とあることから判るように「鯛」はこのころ中国から渡ってきた漢字であり、北京語での音はディアオ(diao)です。(註3)
 現代でもマダイは中国語で「真鯛」または「鯛魚」と表記されます。しかし中国でマダイを真鯛や鯛魚と書くのは文語的な表現で、市場では無礼にも「大頭魚」、「大斗魚」(註4)と呼ばれることがあります。このほか、背ビレ(鬣)の棘が目立つことから「棘鬣魚」。色に着目したのが「真赤鯛」「銅盆魚」。一般的には「加級魚」「加吉魚」または「嘉魚」とも呼ばれます。加級とは官吏の昇進のことなので、中国庶民もやはり赤くて姿のよいマダイをお目出たいと感じていることが判ります。

註1 :
註2 :
註3 :
 
註4 :
「鯛」は713年の風土記、720年の日本書紀、759年の万葉集などに登場
938年発行。略称で「和名鈔」とも
魚を古語でイオと発音するが、これは中国語のイユから来ている。鯛の中国語音であるディアオが、テャア→タヒとなった可能性も否定できない
タラも大頭魚。鯉科の淡水魚にも大頭魚と呼ばれる魚がいる


海の赤いフナ

 和の雰囲気を濃厚に漂わせるマダイですが、ヨーロッパからアフリカ北部にかけて多くの同類が分布しているため、先祖は地中海あたりで発生したのではないかと考えられています。
 仲間は100種以上いて、中でもオーストラリア南部からニュージーランドにかけて分布するスクワイアーフィッシュが、遺伝的にはマダイに一番近いとされます。現地では通称でスナッパーと呼ばれていますが、姿が非常に似ているため「豪州マダイ」(註5)として日本に氷蔵輸入されています。
 ヨーロッパにもパルーゴと呼ばれるそっくりさんがいて、「ヨーロッパマダイ」として国内に流通しています。
 ほかにもスペインでベスーゴ、フランスでパジョットというやや細身の種類が「スペインダイ」として市場に出回ることがあります。ドラードと呼ばれる種類も、色は赤くないものの、マダイによく似た体型で食味が良いため、現地の日本人に人気があります。
 英米ではレッドポーギー、レッドスナッパーまたはレッドシーブリーム(Red sea bream)と呼ばれるのが一般的です。breamの原義は「ギラギラと輝く」ですが、実際にはウロコの目立つフナのことを差すので、Red sea breamは「赤い海のフナ」という意味になります。ロシア語でも普通はドラードですが、まれにクラースヌィ(赤い/美しい)・モーレ(海)・カラースィ(フナ)、つまり「赤い海のフナ」と呼ばれることがあります。(註6)

註5 : 豪州マダイはマダイよりやや色が淡いものの寿命が長く、体重20kg以上まで成長する
註6 :  クラースヌィ /  モーレ /  カラースィ
また、古事記に  という呼び名が残されています。  はフナやタナゴのことなのでこれも「赤い海のフナ」という意味になります。


**ダイは何種類?

 明治時代までは魚名の標準化が進んでおらず、日本各地に合計で3万もの魚名があったとされます。しかし同じ魚が地域によって別々の名前で呼ばれていたのでは不便きわまりないため、明治の終わりから大正にかけて、地方名の標準化が行われました。中心となったのは日本魚類学の基礎を築いた田中茂穂博士と阿部宗明博士です。
 淡水魚は琵琶湖での通用名を中心に、海水魚は築地の魚市場と神奈川県三浦周辺での通用名を中心にして標準名が与えられていきました。このとき、分類学に関係なく、縦に扁平な魚や赤い魚であれば**ダイという名称が付けられたそうです。これを境に、本来のタイはマダイと呼ばれることになりました。
 1943年(昭和18年)発行の渋澤敬三著「日本魚名集覧第三部 魚名に関する若干の考察」には、通り名を含めて235種の**ダイが掲載されているそうです。2002年(平成14年)時点の日本産魚類は希少種も含めて3,863種。
 ルミカ企画室で、そのうち一般に見られる931種類を調べたところ90種類の**ダイが見つかりました。
 これはマダイの威光にあやかる輸入の代用魚を除いても一割弱に相当するわけですが、当然のことながら、マダイが含まれるスズキ目に集中しており、フグ目やウナギ目、カレイ目などには一匹も含まれていません。


ホントのタイ科は何種類?

 日本近海にはマダイ亜科として右記の4種類が分類されています。
 マダイ亜科のほかに、キダイ亜科としてキダイ(レンコダイ)、ホシレンコ、キビレアカレンコの3種類。
 ヘダイ亜科としてヘダイ、クロダイ、キチヌ、ミナミクロダイ、オーストラリアキチヌ、ナンヨウチヌの6種類があり、全部で13種類のファミリーになります。ヘダイ亜科は浅場に棲むため体が赤くありません。

 マダイ 北海道南部から中国南部海南島まで分布。最大1.2m 14Kgまで成長する。尾ビレの端が黒いことで近似種との見分けが可能。寿命は20年説、30年説、40年説があって未確定。
 チダイ マダイによく似ているが最大40cmまでしか成長せず、エラ蓋の縁が赤いことで見分ける。鼻の部分が出っ張っているので別名をハナダイ、またはデコダイとも呼ばれる。
 ヒレコダイ 九州以南に産する。チダイによく似ていてエラ蓋の縁も赤いが、さらに小型で、背ビレの第3・4棘が糸状に長く伸びる。体表の青色点が縦に連続して並んでいるのが特徴。
 タイワンダイ 名前の通り南方系で、まれに鹿児島や高知で釣れることがある。体高が高くて体色が薄く、背から腹向きに4本のピンク色の縞模様がある。背ビレの第1〜5棘が糸状で長い。


大きなマダイは暗さにつよい

 人間と同じく魚類の視細胞にも明るい場所で色を識別する錐体細胞と、暗い場所で明暗を感じる桿体細胞が存在します。マダイは魚類の中でもかなり視力がいい方で、体長20cmの場合、500ルクス(明るい事務所内程度)の明るさがあれば16.8m離れた場所から2cmの物体を見分けることができ、わずか0.1ルクスしかない闇夜でも6.9mの距離から識別できるそうです。
 家庭の蛍光灯をスモールランプにしたときの床面の明るさがほぼ1ルクスです。マダイはこのくらいの暗さになると桿体視に移行して視界から色彩が失われ、わずかな明暗差を感じる暗視モードに切り替わります。この状態では自発光する物体以外の色は認識できないことになります。
 眼のレンズは直径が大きいほど光が多く入るため、大きく成長したマダイほど暗い場所につよくなります。体長60cmになれば、たった1ルクス(蛍光灯のナツメ球の下程度)の明るさで、12.2mも離れた距離から2cmの物体を識別できるそうです。

参考資料 : 大修館書店 有元貴文著 「 魚はなぜ群れで泳ぐか 」


夜は大物の時間

 瞳の直径が5mmのとき、その面積は約20muですが、直径が7.2mmになるだけで2倍の40muになります。入ってくる光が2倍に増えれば、理論的には半分の明るさで活動できることになります。
 大きな魚体を動かすにはたくさんの燃料が必要なので、基本的には食べるために夜遅くまで活動すると考えられます。これは、大きなマダイほど、群れの個体数を少なくしてエサの奪い合いを避けていることからも判ります。
 また、体が大きくなれば天敵から襲われることも減るので、夜間安全な場所に避難する必要がなくなり、出歩いて索餌することが可能になります。まだ何も知らない幼魚はともかく、経験を積んだ成魚は警戒心がつよくなっており、ラインが見えるような明るさでエサを喰うことは多くありません。夕マズメの時間帯から夜間、さらに朝のマズメが大ダイの好機なのはこのためです。


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 マダイの適正水温は16〜22℃とされています。海水は空気の25倍も熱を伝えやすいため、水温の変化は変温動物である魚の生命活動に直接的な影響を与えます。水温が適当だと運動量が増え、マダイの体温は水温を0.5〜1℃ほど上回ります。低温期には水温の安定した深場に移動しますが、急激な水温低下には弱く、わずか1〜2℃の変化でも浮き袋が膨らんで浮いてしまうことがあります。通常は14℃以下で餌を喰わなくなり、12℃で冬眠状態になり、6℃で凍死します。


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