02 メバルの生態

習性

 夜間に行動することを選んだメバルは、光りが乏しい環境に適応するため、眼が大きく発達しました。夜陰に紛れて小魚を襲う以上、対象がよく見えないことには生命を維持できないからです。月夜ばかりでなく、新月の暗闇でもエサを喰う必要はあります。そのためメバルは、深海魚なみに大きくて暗視能力の高い眼を持つことになりました。
 メバルは大きな魚ではありません。敵に襲われやすいので群れを作って身を守り、海底近くから上を見上げて生活しています。
 海底にいれば少なくとも下から襲われる心配はなく、上だけに注意していればいいのです。口は受け口です。
 これは下から獲物を襲う魚種に見られる特徴です。さらに、口が大きくて歯が小さく貧弱なことから、獲物を呑み込むタイプの魚だと判ります。メバル釣りにふところの大きい鈎が向いているのはこのためです。

 昼間のメバルは、海底からやや浮いた位置で、斜め上を向いてホバリングしています。
 あまり遊泳力がつよくないため静かな海域を好み、波風がでると着底するので喰いが止まります。
 それぞれ散らばって海底に腹を着けて休憩し、海が凪いで潮が動きだすとまた浮き上がって群れをつくります。
 数10匹単位の群れがいくつか集まって大きな群れを構成し、水深に余裕がある場所では上下に分布しますが、水深が浅い場所では、密度が薄く平面的に広がります。
 大型のメバルはつよくて仲間にエサを横取りされる心配がありません。その場で居喰いすることが多いため、大きな反応を出しません。小型のメバルはエサを盗られないよう、捕食したら、すばやく安全な場所まで逃げようと反転するのでフッキングします。大型の微細なアタリをとることがメバル釣りの秘訣です。

【画像】 日中のメバルは集団で等間隔に並んでいる。側線レーダーをオンにしたまま居眠りしているので、かなりまで近づくことができるが、ある一線を超えると、波動を感知して逃げだす。夜になると隊列をとき、個人行動モードでキビキビと泳ぎまわって捕食する。

浅場のメバルは戦闘モード

 昼間は水深のある場所に潜み、陽が落ちる頃になるとエサを求めて中層から表層を活発に泳ぎ回ります。この夕暮れと満ち込みが重なると、スネくらいの水深でもガンガン喰ってきます。
 喰い盛っているときには外灯の周辺でボイルが見られ、短時間に爆釣しますが、警戒心がつよいときには1匹釣れただけで喰いが止まることがあります。とくに澄み潮での連続ヒットは難しくなります。
 メバルの時合は数分~30分と極端に短いため実釣時間は限られています。体の割にパワフルな引きを見せるとはいえ、平均体長は20㎝そこそこですから、鮎やワカサギと同じく、ある程度数を釣る必要があります。時合のときの手返しの良さが釣果を左右する釣りといえるでしょう。

夏の夜のメバル

 夏はメバルのシーズンではない、といった思いこみがあります。たしかに、夏は水温が上がって、エサとなる小魚があちらこちらにいるため、メバルたちも分散しています。そのため冬よりも数を釣りづらいのは事実ですが、狙う人が少ないだけで、釣ることは充分可能です。

 大半のメバルは夏場、沖の岩陰に潜んでいます。大きな岩が重なって屋根のようになっている場所です。このようなポイントを攻めるには船か、または沖磯からの釣りが一般的でしたが、陸っぱりで行ける近場にもたくさんのメバルが残っています。
 夏のつよい日差しは、集光性の高いメバルの目には過酷ですから、夕方から夜にかけての時合を釣ります。夏場は流れのある場所でないとエサを追いません。
 良型は表層でヒットしますから、潮通しがよくて、昼間身を隠せるだけの水深がある場所の、浅いタナを狙って竿を出してください。
 釣れたら、その場所の特徴を分析して、海底の状態や潮の流れが同じような場所を探り釣りします。
 夏場は平面的に散らばっていて、一か所でまとめて釣ることが難しいため、いろいろな潮や風向きに応じた釣り場をいくつも知っておくことが釣果につながります。
 日中に、藻場や沈み石などの居つき場所を確認しておき、夜釣りになったら群れを散らさないよう表層の魚から順に釣りながら、いろいろなポイントを探ってまわることが釣果を上げるコツです。
 釣り場が少ない場合でも30分休ませればポイントは回復します。

バイブレーション

 群れをつくるタイプの魚は、仲間と同じ行動がとれないと身を守ることができません。一匹だけ迷子になればたちまち補食されてしまいます。そのため小魚たちは、仲間と一定の距離を保てるよう、目で見て自分の位置をコントロールしています。ところが最近の研究で、目が見えなくても仲間と同調して動けることが判ってきました。水は振動を非常によく伝えるので、仲間の起こす波動を側線で感知して、距離や方向を保っているようです。
 群れをつくるメバルの側線感度は高く、ワームが発生するバイブレーションに敏感に反応します。感度がいいだけに、アピールがつよすぎるワームはすぐに見切られてしまいます。