06 アジ釣り実践編 その3

意外な場所から大型連続! 渚釣り

 渚釣りはビーチからのフカセ釣りです。サーフはウキを使わずに遠投してベタ底を狙いますが、渚釣りはウキを使って遠投し、回遊しているアジを撒き餌で足止めしながらフカセで釣ります。沖目の群れを狙うためには30~40m、できれば50m以上飛ばせる仕掛けを準備してください。
 同じ渚釣りでもクロダイの場合は、撒き餌が沖に出るように潮の払い出しを見つけるのがコツになりますが、アジの場合は回遊するので離岸流についているとは限りません。条件としては満ち潮の時間帯で、とにかくベイトが岸寄りしていること。波打ち際に小イワシが打ち上げられていればフィッシュイーターがいて、小イワシを追っている証拠です。うまく群れに当たれば日没からの2時間でクーラー満タンも珍しくありません。
 時合いはやはり朝夕のマズメになるので、自重があってよく飛ぶウキと ケミホタル を用意してください。撒き餌にパン粉を入れるのは水分を吸収させるためです。ド遠投できるように時間をかけてしっかりと練り込んでください。もちろん撒き餌ヒシャクも遠投用。付け餌も身切れしにくいものを用意します。
 仕掛けを遠投したら、ケミホタル の光を見て仕掛けが流れる方向を判断し、付け餌と同調する場所に撒き餌をかぶせます。ヒシャク数杯を撒いたら、仕掛けを操作して撒き餌の煙幕の範囲内で誘いを入れてください。中通しウキのほうが絡みにくいのですが、環付きタイプの棒ウキを使えば、波の上から ケミホタル がよく見え、ライン抵抗が少ないので、ウキを動かさずに誘いをかけることが出来ます。
 ヒットしたら波打ち際まで一定の速度で巻きあげ、うまく寄せ波に乗せて取り込んでください。波打ち際での鈎外れを防ぐためには、小さめの ケミブライトフック を使って、飲ませ釣りするといいでしょう。

ケミホタル - 夜釣りはこれがないと始まらない

デンケミはON/OFFできるケミホタル。ケミホタルと同じサイズなのでお手持ちのケミ用ウキをそのままご使用いただけます。

水深40m以上であれば昼間でも抜群の集魚効果を発揮します。喰い渋りのときにぜひお試しください。

泳がせ釣りで餌にするアジはフタを開けると驚いて跳び出してしまう。これを防ぐのがルミカライト6inch。バケツの中に放り込んでおくと中がよく見えてアジを取り出しやすいだけでなくビックリ跳び出しも防いでくれる。

マズメ時にはいかにアジに餌を見つけてもらうかが釣果の決め手になる。カゴにデンケミを取り付けると、真っ暗な海中でもコマセがよく見えるためヒット数が飛躍的に増える。これのケミホタルバージョンがアジホタルである。

デンケミ - ワンプッシュ! 進化した電子ケミホタル

アジといえば関アジ

 関アジとは、大分県と愛媛県に挟まれた豊予海峡で一本釣りされ、厳重な取扱い管理のもと、大分県佐賀関町の漁協から出荷されるブランドアジのことです。
 佐賀関と、対岸の愛媛県佐多岬をつなぐ線上のほぼ中央に「 ホゴ瀬 」と呼ばれる主要漁場があります。ホゴとはカサゴの地方名。最浅部は50m程度なのに、わずか5kmほど南は365mの水深があり、5kmほど北は465mの深いツボになっています。岬の張り出しで巾が狭くなっている上、斜度8%の駆け上がりに5.9ノット( 時速約11km )もの急流が当たるため、潮の流れが非常に速く、複雑な海底の地形もあって網を入れることが難しい海域です。そのため昔から一本釣りの漁場とされてきました。
 ホゴ瀬は南北を深場に挟まれているせいで、急流でありながらも水温が年間を通じて安定しています。周辺の海域から発生する豊富なプランクトンを求めて瀬つきとなったアジは、尾ビレが発達し、体の大きさの割に頭が小さいのが特徴です。栄養充分で太っていながら、ハンパではない運動量によって充実した身を持つ関アジは、全国各地のブランドアジ中、最高の味と知名度を誇ります。日によっては200隻もの漁船がひしめくホゴ瀬に入って釣ることは難しいですが、周辺に設けられたマキエ釣り禁止区域を避けて遊漁することは可能です。場所によって持ち帰りできる匹数に制限があるのでご注意ください。
 釣場が決まったらアンカーを打って船を一カ所に停め、底カゴのサビキ仕掛けでベタ底を狙います。カゴが着底したら糸フケを取り、竿を大きくあおってマキエを振り出してください。すぐに竿先を下げて道糸をふかせ、マキエの煙幕の中にサビキを紛れこませます。120号のカゴが転がって流れるような急流は全然珍しくありません。吹き上げられる仕掛けを、道糸を送りこんでは海底に落ち着かせますが、少し流しすぎれば他の釣人とのオマツリ必至です。マキエがあっという間に流出してしまい、サビキと同調する時間はごくわずか。いかにサビキとマキエを同調させるかが釣果の分かれ目になります。

[ 註 ] 1ノットは時速1海里=1.852km。1時間に地球の緯度1分を進むこと。60分が緯度の1度に相当。

潮回り

 関アジのベストシーズンは春先から梅雨入りまでです。シーズンによってタナが変動し、釣り方も変わりますが、基本的にアジは底モノなので上潮だけ流れてもダメで、底潮の動きが重要になります。潮の流れがあまりに速いときは潮止りのわずかな時間しか釣ることができず、釣座による釣果の差も出やすくなります。
 潮位差が小さいときには糸絡みも少なく、他人数での乗船が可能になります。釣人が多ければマキエが効いてアジの群れを足止めできるため長く釣れますが、潮が止まってしまえば、マキエは真下に溜まるだけで流れていかず、離れた場所を回遊中のアジを引き寄せることができません。刻々と変化する潮流に対する対応力が求められます。

サビキの極意

 この海域では蓄光スキンの赤混ざりの釣果が安定しています。しかし常に絶対とは限らないので、色違いを何種類か用意しておいて、そのとき釣れている人の色に合わせるか、またはウーリーなどがミックスされた多色サビキをパイロット的に使ってヒットカラーを探ります。パラパラと釣れる日にもミックスが向いているようです。
 鈎の数は、6本では少ない、10本では多いということで8本鈎が主流となっています。底カゴなのでコマセに同調しやすい下部の鈎が消耗しがちですが、仕掛け1本を丸々取り替える必要はありません。サビキ下半分の傷んだ部分を切り捨て、新品の上部に結んだら、鈎4本分を取り出したところで切ってカゴを取り付けます。下半分が残った4本サビキはまた次回使います。朝早くの暗いうち、水深があるときは ちもとホタル をセットする手間を惜しんではいけません。
 エダスは8cmの短ハリスが主流です。エダスが短ければ必然的に枝間を短くでき、アジのタナに入る本数を多くすることができます。短くて太いほど張りがあるので、幹糸に絡まずによく踊り、ただ流れるだけの撒き餌の中で、動くサビキをアピールできます。
 短ハリスの欠点は、鈎がかりしたアジの動きが制限され、その場でクルクル泳ぐので尾巻きが多くなることです。尾巻きすれば取りはずしに時間がかかる上、身割れして食味も下がってしまいます。
 鋭いゼンゴで幹糸に傷が入って、仕掛けロストの原因にもなりかねません。時合の短い回遊魚釣りでトラブルを起こせば数が伸びないので、潮が速いときには長いハリスを使うといいでしょう。

ちもとホタル - 世界最小の集魚ライト。2種類のアタッチメント付属!

マキエの極意

 釣り始めて最初の数投はポイントを作るつもりで多めのマキエを投入してください。潮が速いときは流出しやすいので、しっかりと大量に詰めても大丈夫です。
 潮が緩いときは流れる距離が短いので、カゴから出やすいように軽めに詰め、いったん着底してから3mほど巻き上げてから振りだします。カゴから完全に出てしまうまで3分位あるのでサビキが同調するように落ち着いて操作できます。そこにアジがいることが判っているときもマキエを軽目にしてください。
 時間が経って、冷凍アミが解けると水分を吸って体積が増し、カゴの目から出にくくなります。マキエが少ないので釣れない、釣れないから長く流してオマツリになる、といいことはないので、上手に使い切る必要があります。裏技として、カゴの底に凍ったアミを入れ、中段に溶けたアミを詰めて、上から冷凍でフタをする方法があります。底の冷凍が先に流れて空洞になることで、アミが流れやすくなります。

取り込みは一匹だけ

 アジがヒットしたとき、いきなり電動のスイッチを入れると、オモリが浮き上がったときの反動で口切れを起こすので、いったん竿を起こしてカゴを海底から浮かせたあと、ゆっくりと電動リールのレバーを回してください。
 ダブル、トリプルでヒットした場合には、優先して網に入れる魚を決めます。タモの中に無理に2匹も3匹も入れると、糸絡みで時間を浪費するおそれがあるので、大きい方か、口切れ寸前のアジだけを優先してタモ入れし、2匹目はブラ下げて取り込めば、結果的に手返しが速くなることで釣果が伸びます。
 デッキの上まで取り込んだら、上のアジから順番に鈎を外して、サビキ仕掛けを船外に垂らすとトラブルの発生を防げます。下のアジから先に外すと、カゴの重さと上に残ったアジの重さで糸絡みを起こしやすいので注意してください。枯れ潮で釣果が上がりにくいとき、また大潮で釣る時間が短いときの時間ロスは命取りです。常に手返しよく取り込むことを心がけてください。
 アジとサバのアタリの違いをマスターすれば、アジのときだけ追い喰いさせることが出来て効率がアップします。普段は手繰り上げでリズムよく取り込むようにして、口切れしそうなときだけタモを使うくらいでいいでしょう。

水深が深いとき、潮が速いとき、および竿が硬いときにバラシが多くなります。巻上げるときのショックを柔らげる役目のクッションゴムですが、ビョンビョンとした伸びが気になる人は、5~8号のナイロンラインを5~10mほどリーダーとして代用してください。PEとリーダーの結び目が大きくなるとガイドを通らないので気をつけてください。

潮が速いときにはいくらカゴの重さを揃えてもちょっとしたことでオマツリが発生します。オマツリ上等の釣りだと割り切る覚悟が必要です。

流し釣りの場合、先にポイントに入る船首の釣り座が有利になりますが、アンカーを打ってかかり釣りするときは、船後方の釣り座に分があります。潮下から寄ってきたアジが撒き餌の広がる場所に群がって足止めされるため、前方にいる人には釣れにくいものですが、潮さえ緩めばチャンス到来です。上手から仕掛けを入れるのでオマツリが起こりにくく、逆に釣果が上回ることがあります。

タイタニック21

取材協力:タイタニック21
大分県杵築市美濃崎港
[ TEL : 090-4484-9333 ]

冷凍のワザ

 海の生態系においては、太陽光線から有機化合物を作り出す植物プランクトンが、食物連鎖の底辺になっています。植物プランクトンを食べるのがイワシなどの小魚と動物プランクトン。アジはこの動物プラントンを中心に補食しています。成長すると小魚も食べますが、口がマトウダイのように吸い込みに適した形状( だから口切れしやすい )になっていることから分かるように、もともとはプランクトン食が中心の魚です。小さくて消化の速いプランクトンを常食にしているため、腹から腐敗が進みやすいアジは、すぐに血抜きして腹の中まで一気に冷やす必要があります。
 一般に深い海に棲む魚類はマイナス2℃まで氷結しませんが、回遊性の浮き魚はやや高いマイナス1.5℃で氷結します。この氷結温度からマイナス5℃までの間で、細胞内の水分の結晶が大きく成長します。結晶が大きいほど解凍したときに組織に隙間ができてグズグズになるので、冷凍の場合でも解凍の場合でもこの温度帯をできるだけ短い時間でやりすごすように心がけてください。
 生魚を何匹もまとめて冷凍するとくっついてしまい、一匹ずつ取り出して解凍することができません。面倒ですが、丸のままであれ、開きにしたものであれ、一匹ずつラップしてください。さらに上からアルミフォイルをきっちり巻き付けると空気が抜けて酸化防止になります。
 これを冷凍するときはとにかく早く凍るように、一枚ずつ隙間を空けて並べ、30分~1時間経ったころに裏返して場所変えしてください。発泡スチロールのトレイは断熱効果があるので使ってはいけません。
 中型魚に向いたウラ技ですが、ラップで包んで凍らせたあと、いったん取り出して水につけてから再度凍らす方法もあります。体表に薄い氷の皮膜( glaze )ができることで乾燥や酸化を防ぐ効果があります。食べるときは、表面と内部に温度差が出来ないよう、できるだけ10℃以下で解凍してください。常温で解凍すると表面だけ温度が上がってしまい、雑菌が繁殖するおそれがあります。
 唐揚げで食べるような小アジの場合は、ジップロックなどのチャック付き密封袋に塩水を入れ、丸のまま入れて凍らせます。海水だと雑菌が心配なので、水道水に重量比1.5~2%( 鮮度が落ちた場合は濃いめ )の食塩を入れた人工海水に浸して凍らせます。これも早く凍らせるために1時間くらいたったらパックごと裏返してください。