04 ポイント選定とタックル選び

エリア別のコツ

 ダイバーさん情報によると、いろんな魚がいるところへ潜水して近づいていくと、まず最初に逃げだすのがクロダイだそうです。一匹が驚いて逃げるとほかの魚もつられて逃げだします。クロダイの次にはメジナが逃げだし、さらにニザダイやアイゴが続きます。ベラなどは動こうともしないのに、いつも真っ先に逃げ出すのがクロダイとの事です。
 クロダイはそのくらい警戒心がつよい魚なので、日光があたってハリスが反射したり、仕掛けが見えたのでは喰ってくれません。
 1940年代の終わりに、透明で強度の高いナイロンラインが登場するまで、クロダイは昼間釣れるような相手ではなく、もともとは夜釣り専用のターゲットでした。
 日没前には太陽光の入射角度が浅くなって、日光の大部分は水面で反射してしまい、地上には明るさがあっても、海中では釣り糸が見えにくい絶好の条件になります。
 この時間帯はクロダイの喰いも立っており、よほど不自然な動きをしない限り仕掛けを見破られることはありません。
 丈夫な仕掛けが使えるお陰で、昼間のようにムダに遊ばせる必要がなく、残りの魚を散らさずに、そのまま次のヒットに持ち込めるのもメリットです。

堤防

 川の流れ込みがある内湾の堤防で、近くにイカダでもあればベストです。養殖イカダは当然として、釣用イカダも撒き餌をするため、居着きだけでなく回遊性のクロダイまでが足止めされます。
 ポイントが豊富な堤防周辺ではコマセを撒かなくても釣れます。現地に生息しているフジツボや牡蛎虫、イガイの付け根にいるゴカイに似た虫など、クロダイが常食しているエサが効果的です。夕マズメからの時間帯、止まっている潮が動き出して30分~1時間がチャンス! 日中は用心している大物も、あたりが暗くなれば動きだします。潮が不安定に左右に入れ替わるような場所を狙ってみてください。

  1. 潮が引きったころに底洗いの濁りがでます。大潮の夜、下げの8分から上げの2分までが大物を狙える時間帯です。
  2. 満潮の前後には足元まで寄ってきています。意外な浅場で釣れるので、水深が 2m もあれば竿を出してみてください。
  3. 月明かりのある夜と、引き潮の時間帯にはできるだけ沖目に遠投します。
  4. 釣人が多くて、魚がスレている堤防でも 40m くらい先にはまだたくさんの魚が残っています。遠投ウキで竿抜けポイントを狙ってください。

河口

 夏場のクロダイは淡水混じりの汽水域から、水温の低い河川域まで行動範囲を広げます。河口では雨後で濁りが出たときが数釣りのチャンス。ただし、あまり雨が多いと塩淡成層 ( 比重の違う海水と淡水が混じり合わず層になった状態 ) が変化しやすいので釣況は安定しません。クロダイが居着くには上側の淡水層と下側の海水層の温度差が小さいことが条件になります。
 淡水が流れ込む範囲には、磯でやっかいなネンブツダイなどの餌盗り軍団がいません。したがってオキアミでも大丈夫なのですが、川底が砂泥地なら、砂泥地を本来の住処とする虫エサに分があります。虫エサは細軸の鈎を使うと長持ちします。新鮮な青ケブや本ムシは重量があって動きがいいため、ウキの感度を甘めにしてアタリをとるのがコツです。

藻場

 夜は地上の様子が見えなくてクロダイも安心するのか、浅いゴロタ浜や藻場まで寄ってきます。産卵期のクロダイはこの藻の根元に潜んでいます。しかし、タナを藻の根に設定したのではエサを見つけることができません。藻が立っているときはタナを藻の上に設定してください。藻の隙間から撒き餌が落ちてくるので、藻の上まで浮いてきて補食します。
 流れがあって藻が寝ているときは、クロダイは居場所がなくなって藻の上に出てきます。だからやっぱりタナは藻の上でOK。水温が上がって目隠しの藻が切れる時期にはエサを見つけやすくなるためアタリが頻発します。

地磯

 磯の夜釣りでは、クロダイが入り込んでくる移動ルートを見極めることが重要です。クロダイは沖から続くワレや溝を辿って、岩と岩に挟まれて潮が直接当たらない場所にやってきます。サメなどの外敵から見えない閉鎖的な浅場が、クロダイの食堂兼寝室です。眠り込んでも流されない程度に潮が緩く、襲われたときの逃げ道が確保されている場所を探してください。
 アタリは大きく出るので釣り方は難しくありません。ポイントに10~20分ほど撒き餌をしたらあとは待つだけです。夜は景色が見えず、正確な打ち込みが難しくなるので、撒き餌を散らさないように、とにかく一点に集中して打ち込むことに専念します。
 根掛かりでラインが切れてもウキをロストしないよう、また振込時の糸絡みを防ぐために、ウキの下には「 からまんホタル 」をセットしてください。仕掛けを投入して、ウキと からまんホタル の光がひとつのままなら糸絡みしている証拠。そのままでは絶対に釣れないので回収して再投入します。どんなに複雑な潮だろうと、ウキと からまんホタル の光の位置関係から、撒き餌を打つ場所を知ることができます。もちろん仕掛けが馴染む途中のアタリを取るのも容易です。

からまんホタル - 朝夕のマズメから半夜釣り、夜釣りに便利なウキ止めマーカーです。いつも通りの仕掛けでOK! 暗くて仕掛けが見えにくいときに光るウキ止め「 からまんホタル 」に取り替えてください。潮が速いとき、複雑なとき、湧昇流があるときに仕掛けが入る方向を確認できます。仕掛けの方向が見えれば撒き餌を打つ場所がわかります。発光が終わってもそのままウキ止めとしてご利用いただけます。

離島

 大物を狙って離島まで遠征するときには、船長に釣場の水深を聞いておくとか、荷物を間違えて下ろさないよう ケミホタル を目印にするなど、周到な準備が釣果につながります。
 もし夜間に瀬上がりするなら、自分がどの瀬に上礁したのか判るよう、地図を頭の中に入れておくことが大切です。暗くて景色が見えなくても、上礁する瀬の位置が把握できれば、潮の動きを先読みすることが可能になります。
 沖磯でも地磯と同じように、潮が溜まる場所や、流れの緩やかな場所をポイントにしてください。雨が降ったときに淡水が流れ込むような場所、海底が駆け上がりになっている場所は狙い目です。クロダイは「 意外性の魚 」です。警戒心がつよい割に好奇心もつよく、思わぬ場所で捕食しているので、アタリがないときにはセオリーに捕らわれず、いろんなポイントを探ってみましょう。

ケミホタル - 夜釣りはこれがないと始まらない

タックルの極意

ロッド

 昼間は小型しか釣れなくても夜になれば 40cm 級が廻ってきます。パワフルな大型ゲストに備えてロッドは1~1.5号を準備してください。夜間はライトで照らした範囲しか見えないのでついつい目配りがおろそかになります。穂先へのライン絡みを防ぐため、ガイドのない中通しロッドをお勧めします。仕掛けが重いので糸の出は問題ありません。
 糸がらみは、ほとんどの場合、エサ付けなどで仕掛けのテンションがなくなったとき、ラインに残ったカーリングが原因で発生します。外ガイド竿を使うときは、釣り始める前にラインを伸ばしてクセを取っておいてください。

リール

 #2500~#3500。スプール一杯にラインを巻くと、巻きが緩んで絡むことがあるので8分程度の量にします。リールの付近に ピタホタル を貼り付けておけば、誤って竿を踏まずに済むうえ、とっさのときも正しい位置を握ることができます。

ピタホタル - ピタッと貼りつく平面型ケミホタル

ライン

 クロダイの本来の居場所は底なので、ピンチになると底に逃げ込みます。根に潜られないよう、その場で強引にやりとりできる太仕掛けで備えてください。道糸は3号でも魚に見破られる心配はありません。警戒心のつよいクロダイは一度バラすと極端に活性が落ちるので、とにかく取り込むことを優先します。

ウキ

 夜釣りでは小さなアタリを取る必要がありません。ケミホタル が消し込めばそれがヒットです。昼間ならウキがジワリとシモったのを目で確認できますが、夜だとアタリとの見分けが難しくなります。そのときは標準よりも軽いオモリを使って対応してください。

ハリス

 1.5~2号を1ヒロ程度。竿を上げたときにウキ下をつかみやすい長さにします。エサ盗り軍団が影を潜めるといえ、フグやウツボなどの攻撃は避けられません。夜はキズやキンクを目で見て確認することが難しくなります。指先でラインをなぞるようにして頻繁にチェックしてください。とくにチモトから上 5cm は要注意です。

 基本的には付け餌のサイズで決定すべきですが、サイズを一段上げて大きくすることで、小魚に鈎を呑まれにくくなり、大物一発にも対応できます。蓄光塗料を塗布した ケミブライトフック ならオキアミを光らせるという大ワザも使えます。

ケミブライトフック - 光が違う! 元祖光る鈎

照明具

 瀬渡し船から下りて周囲の状況を調べるときや、釣座を移動するときには大光量のライトが必要です。ベースキャンプとなる場所には消費電力の少ないLEDランタン。エサ付けとライン結び用に、汚れた手でもON/OFFが簡単に行えるヘッドライト。これは近くを見るだけなので大光量である必要はありません。

エサ箱

 フタの内側に粘着テープか輪ゴムで ケミホタル75 を取り付ければいちいちライトで照らす手間がなくなります。撒き餌用のバッカンには大きな光量の ルミカライト6インチ 。小さな ケミホタル だといっしょに掬って投げてしまいます。

ルミカライト6インチ - 大光量で視認性バツグン

撒き餌

 発光するアミを使うのが夜釣りの鉄則。アミエビもオキアミも鮮度がよければ発光して暗い海中で目立ってくれます。アミを使うと粘りがでるので配合エサは一袋分でOK。暗くても見えやすい白さ優先の成分と、嗅覚に訴えるニオイのつよい成分を主体にします。水中に音を伝えないよう、混ぜ込みは別の場所で済ませておいてください。

ヒシャク

 輪ゴムで ケミホタル を固定しておけばカップの向きが判って便利です。軽くてなくなりやすいので、つよい風で飛んでいかないよう尻手ロープを付けてください。

タモ

 釣場についたら一番にセットするのがタモです。タモさえあれば仕掛けの準備中に何かが海に落ちても掬うことができます。

安全のために

 釣行前には天気予報で風向きと波の高さを調べてください。携帯電話は車のキーといっしょに防水ポーチに入れて身につけておきます。
 明るいうちから釣場に入れたら、まず高い場所から沈み瀬の状況を調べます。大物がたくさんいそうで、向かい風にならず、波をかぶらず、取り込みやすい場所に釣り座を決め、危険な場所には ケミホタル を置いてマーカーにします。
 磯は海藻で滑りやすいのでスパイクブーツとライフジャケットは必需品。転倒したときに備えて、暑い時期でも長袖長ズボンを着用してください。ヘッドライトの光だと海が実際以上に浅く見えます。岩の起伏も判りづらくて危険なので単独行は避けてください。自分自身にもマーカーを付けておくと、よその瀬に上がった友人からウオッチして貰えます。

ウキフカセとは

 クロダイは普段、海底から 1~2m の層を遊泳して底生のエサを食べているため、撒き餌も基本的に海底で補食します。魚はたくさん集まればエサの争奪戦を始めるものですが、クロダイの場合、撒き餌の中心に突っ込んでエサを独占するようなことはなく、端の方で上から落ちてくるエサを待っています。このような習性に対応して、重い撒き餌を使って底を釣るのが従来からのクロダイ釣りです。
 ところが、エサを競い合うライバルが多いときには、さすがのクロダイも活性が高くなって2ヒロから水面近くまで浮きあがります。このようなヤル気の出た群れを手返しよく釣り上げるべく開発されたのがウキフカセ釣りです。
 撒き餌で浮きあがるのは青白くてパワフルな回遊性クロダイです。したがって地つきの大物を狙うのには不向きですが、群れで回遊するクロダイを足止めし、短いストロークで釣り上げるには最適の釣法です。撒き餌には、自分の釣りやすい場所に群れを誘導する役目もあります。
 釣り始めや、喰いがよくないときには全遊動でタナを探ります。海中では、小さなオモリが付いただけのエサが、撒き餌と同じような自然な動きをして、スレたクロダイにも喰わすことができます。エサをくわえてラインを引き込むとき、ウキの浮力分だけ抵抗が発生するので、浮力をできるだけゼロにするのがポイントです。この、軽い仕掛けを潮に乗せて上から下まで探る攻撃的な釣法は、トーナメント的な効率優先の思想とともに広まってきました。
 仕掛けが沈んでいくときも、ただ単純にアタリを待っているだけではありません。エサの位置を常に把握して、次の一匹を釣るまでの時間をセーブします。さらに、喰いが立ってタナが竿の長さよりも浅くなったときは、ウキ下を固定して手返しよく確実に釣り上げます。

 夜釣りの場合、クロダイは浅場まで寄ってきます。摂餌にきているので基本的に食い気はありますが、エサが落ちてくる状態が見えにくいためか、水面まで浮きあがることはめったにありません。そのため底だけを集中して狙うことができます。
 底性のクロダイは常に海底が見えていないと安心できません。堤防のカベや海藻、ボートの張り綱などは、海底と同じ安心感を与えます。クロダイから見て、常に何かが視界に入る範囲を攻めることが重要です。