06 クロダイ釣り実践編2

大型を狙うなら「 投げクロダイ 」
解説 : 中本嗣通

 ピンクの魚体にコバルト色のアイシャドーを引いたマダイと比べて、甲冑をまとったような無骨な面構えから野武士を連想させられるのがクロダイだ。しかし、どちらかといえば、僕ら釣り人にとっては、このクロダイの方が身近に思えるのとちがいまっかな?
 クロダイを狙う波止や磯、イカダといったジャンルの釣りは常に人気が高く、最近ではSWルアーの人気も急上昇中。もちろん投げ釣りにおいても人気のターゲットであり、その激しいアタリと重量感タップリの抵抗で多くのキャスターを魅了してまっせ。
 多彩なフィールドを攻める投げ釣りで釣れるクロダイは型が良いことが特徴。超 50cm の大型もめずらしくなく、ときにはロクマルと呼ばれる 60cm オーバーの超大型がハリに掛かることも。…ということは、記録物のクロダイを狙うならば投げ釣りが大本命なのかも知れまへんな♥

夏は夜投げ

 投げクロダイの釣期を考えてみると、まず4~5月に産卵を目的として接岸をする乗っ込み期を迎える。この時期は抱卵した良・大型がターゲットとなり、大物を狙うならシーズン中で最も期待が持てる。
 6~9月は水温の上昇と共にクロダイも高い活性をみせるが、明るい時間帯には無尽蔵に湧き出るエサ取りとの戦いになるのが難点。そんな雑魚たちの猛攻を避けるために夜投げがメインとなる。ロッドの穂先で輝く「 ぎょぎょライト 」の緑光が大きく引き込まれる瞬間を待つことになりまっせ♪
 数が釣れるのは10~12月。20~35cm の中・小型が多くなるが、回遊してくる群れを探り当てれば二ケタ釣果も。落ちへ向かう前のクロダイは良好な活性&コンディションをキープしているので、サイズの割にはパワフルな抵抗をみせてくれます。
 投げ釣りで釣れるクロダイには正調の「 クロダイ 」と、汽水域を好む「 キチヌ 」がいます。食い込みにシビアさをみせるクロダイと違い、キチヌは一気にエサを食い込んで反転するので、大きなアタリを出すパターンが多い。したがって、向こう合わせでハリ掛かりする確率も高くなり、投げ釣りではキチヌの方が釣りやすい魚だといえまっかな。

ぎょぎょライト - 竿先の動きもしっかりチェック

ポイント

 投げといえば砂浜や砂利浜のサーフ、地磯や沖磯、大小の河口付近といった場所が定番です。これらのフィールドでクロダイが回遊するルートを探し出し、的確にエサを置いてアタリを待つのが絶対的なセオリーといえます。
 攻略の目安となるのは「 海底に変化のある場所 」です。たとえば大小のシモリが点在し、なおかつ縦横に走る窪みが形成された砂地底は、潮流によってエサが吹き溜まることから有力なスポットだといえる。シモリや海藻帯と砂地との間際、浚渫されて深みとなった船道も押さえておきたい。
 また、遠投だけに固持するのではなく、日中にサビキ釣りが絶え間なくアミエビや集魚剤を撒く場所、波止の基部にある捨て石の周辺やテトラ際といった近投スポットも絶好のポイントになるので、近~遠までキッチリと攻めることをお忘れなく。
 なお、ポイントにおける潮通りの良し悪しについてはさほど気にすることはおまへん。たしかに潮のメリハリが効いたポイントが有利に働くこともありますが、広範囲な回遊ルートをもつクロダイは潮が動きづらいような湾奥のポイントでも平気で食ってきますからネ。
 水深も心配ご無用。狙いのスポットが回遊ルートに入っていれば、たとえ 2m 前後の浅場であってもアタリを出してくれるもの。その時期におけるクロダイの行動パターンを先読みして、過去の実績などのデータと考え合わせて釣場を選定するようお奨めしますわ。

時合い

 「 臆病で警戒心が強い 」といわれるクロダイを狙うとすれば、その警戒心が緩む夜釣りが有利やといえまんな。夜投げで時合いとなるのは日没~22時までと、夜明けに向けて活性が再び上がる3~4時から夜明け直後まで。完全に夜が開けきると、クロダイのアタリは極端に少なくなるのが通例です。
 ただし、海中における日光照度が低い曇天や雨天の日、降雨によってササ濁りが入った河口などでは陽が昇ったあとにもチャンスはあるので、粘りと頑張りで釣果に結び付けまひょ♥
 また、潮流に変化が起きるときにクロダイが活性を上げて時合いを迎えるケースもあるので、潮止まりから干満へと潮が動きはじめる時間帯は気を抜くことができまへんで。

タックル & エサ

 警戒心の強いクロダイをフカセで釣ろうと思えば、0.8~0.6号という極細ハリスの出番もあるようで…。しかし、投げクロダイではそんな細いハリスを使用することは皆無でんな。太いハリスでも海底を這わせれば目立ちにくいもの。そこで、僕はたとえ日中であろうとモトス&ハリス通しでフロロ7~8号を 100~170cm ほどの長さに取り、その先にカレイ鈎や丸セイゴの16~18号を結ぶスペックにしています。
 夜の投げクロダイで釣果を押し上げるアイテムとして、ハリスにルミカの「 ちもとホタル 」を忘れずに入れておきたい。漆黒の海底で光る ちもとホタル がエサの存在をひと際アピールしてくれる。しかも、ゴム管で微妙な光量の調節が可能で、点のような控えめな光から派手な光までのアピールを好みで選択することができまっせ。
 ラインには伸びがないことでクロダイの口元へ違和感を伝えるPE系よりも、伸びでワンクッションが生まれるナイロンが食い込み面で有利に働いてくれる。
 ロッドは、食い込みに優れた軟調穂先を持つ25~27号か、障害物をかわして強引に引き寄せるパワーを備える30~35号負荷のどちらかを、ポイントによってセレクトしてやりまひょか。
 エサはマムシを中心に、エサ取りに強いユムシ、ボリュームのあるアオイソメの房掛けなどが一般的です。一部の地域では高価なタイムシや本コウジも使われていますが、中~近投ポイントならボケやカメジャコといった甲殻類が好釣果を引き出してくれるケースもあります。

ちもとホタル - 世界最小の集魚ライト

合わせ

 シッカリと食い込ませる「 遅合わせ 」が基本。クロダイの口の骨は硬いことからハリ先の掛かりが浅くなり、それが原因でのバラシも少なくない。それならば、ハリスが歯で傷付く恐れもあるが、クロダイに呑み込ませた方がハリ掛かり率のアップにつながるからです。穂先に灯る「 ぎょぎょライト 」がアタリを伝えてきたら間髪を入れずにラインを送り込み、海面に浮かぶラインが沖へ走るのを確認してから合わせを入れまひょか。大きな合わせでクロダイの顔をこちらへ向かせたら、あとのやり取りは自分のタックルと仕掛けのポテンシャルを信じて強引に巻き寄せるのが正解。ヘンに躊躇してラインのテンションを緩めてしまえば、巻き上げ途中の海藻帯や障害物へ突っ込まれてバラシの原因になりまっからネ。

取り込み

 夜釣りでの取り込み時にはライトが欠かせませんが、警戒心の強いクロダイ相手に海面を不用意に照らすと、アタリが止まる原因になりまっせ。そんな弊害を避けるためには、タマ網の枠に ケミホタル を取り付けておけば暗い海面でも一目瞭然。仕掛けにつけた「 ちもとホタル 」で魚の動きを確認しながら取り込みを行えば、無灯火でもスムーズにフニッシュが可能。直後の釣りに与える悪影響は最小限で済みます。
 …てなことで、ザックリと投げクロダイを講釈しましたが、何もむつかしく考えることはありまへんで。要は、エサをポイントへ投げ込んでアタリを待つだけのシンプルな釣りです。しかも、僕らの生活圏からほど近い海の魚が相手ということで、出勤前の早朝や仕事帰りの半夜釣りというお手軽なアプローチで楽しむことができまっからネ♪ そんな投げクロダイですから、やっぱり「 やめられまへん! 」ってことでっかな♥

中本嗣通

[ プロフィール ]
関西在住のお気楽系投げ釣りスペシャリスト。
投釣倶楽部大阪会長。
ケミホタルフィールドスタッフ、ダイワ精工フィールドテスター、SASAMEスペシャルフィールドテスター、ボナンザテクニカルアドバイザー。
月刊誌「 関西の釣り 」で「 やめられまへん!! 投げ釣りはっ 」を22年間にわたって連載中!

春の風物詩
富山湾ホタルイカパターン
解説 : 丸山達平

 富山湾周辺では2月から6月にかけてホタルイカが産卵のため接岸してきます。産卵後にその命を終えると、波によって浜に打ち上げられることがあり、これをホタルイカの身投げと呼んでいます。その身投げするホタルイカを捕食するため、数々のフィッシュイーターが岸近くまで寄ってきます。クロダイやマダイ、スズキ、大型メバル、キジハタなどが、いっせいに釣れるのがこのホタルイカパターンです。今回はこの中でもクロダイについてレポートします。

タックル

 サーフからの釣りが多いため7~9ftのグラスロッド ( ライト ) 。クロダイは引きがつよいので短いとタメが効きません。リールは3000番を使用します。ドラグですが、ファーストランでいったん走らせるため、最初は気持ち緩めで。ヒットしたら締めていきます。
 ラインはPE1号前後を使います。リーダーはナイロンの20LB前後です。なぜリーダーはナイロンかってことですが、リフト&フォールか、ストップ&ゴーでかなりスローな釣りになるため、ラインだけが先に沈んで根掛かりの原因にならないよう、浮力のあるナイロンラインを使用するわけです。長さは2ヒロ必要です。

ポイントと条件

 比較的シャローな河口やテトラ帯でホタルイカが接岸するところ。ホタルイカは常にいるわけではありません。とくに接岸が多く見られるのは大潮です。新月でも満月でも、どちらかを境にホタルイカの接岸が始まります。
 群れが大きいときはベイトが多すぎて釣りにくいので、数が少ないときを狙ってください。クロダイが競い合ってバイトしてくるので比較的釣りやすくなります。

回遊魚と居着き

 クロダイには回遊型と居着きの2種類がいて、両者は見た目もアタリも違います。回遊型はボディーが銀色で歯が鋭く、ベイトも小魚や小型のイカを好んで捕食します。回遊型は初めからイカを喰う気なのでヒットしたら一気に走ります。シーズン中はこのような回遊クロダイが多く接岸してきます。
 居着きクロダイはボディーが黒くて歯が丸いのが特徴です。居着きはホタルイカを捕食対象にしていないけど、産卵前なので気が立っていて攻撃的です。食べるつもりがないので、フッキングしても一気に走ることはありません。

釣り方

 ほかのルアーフィッシングと違ってかなりスローな釣りになります。ホタルイカは、いつもはスローな動きなのに、敵に襲われたときの動きは素早く、墨を吐いて分身を作って逃げます。小さくてもイカなので、生きのいいときは捕食されにくいのです。しかし、産卵後にはその命を終えようとします。どちらがフィッシュイーターにとって食べやすいか、考えると簡単です。無駄なエネルギーを使わず、楽をして食べることができる方を選ぶでしょう! 自然界では当たり前のことです。このことから、生きのいい食べられにくいホタルイカを演出するのではなく、死にかけのあまり動かないホタルイカを演出することが重要になります。

光の使い分け

 死にかけのホタルイカは最後の力を振り絞って光を出します。敵を威嚇しているといわれますが、このことでかえって、クロダイに狙われやすくなります。ここがポイントです。何かわかりますよね。そうです。ケミホタル の登場です。
 私はルアーによって変えますが、からまんホタル ( 小 )ルミコアクアルミコブルー を使い分けます。潮の色の変化で、たとえば濁りのきついときは、ルミコアクア を使い、澄み潮のときは ルミコブルー を使うようにします。

ルミコ - 充実のラインナップ

少し元気なホタルイカ

 ルアーによっての使い分けですが、まずは、ラッキークラフトのワンダー80のイカのカラーに近いもの。このルアーは水平にフォールし、あまり動かず、ゆらゆら滑らかに泳ぎます。ぶりぶり動く魚とちがい、イカのパターンではこのようなルアーが有効になります。この場合はリフト&フォール。表層まで泳いだホタルイカが力なく沈むようなイメージでフォール中のバイトを狙います。
 このルアーには、ルミコ または からまんホタル ( 小 ) を使います。つける位置はルアーから 3~10cm 。黒チューブを 3mm くらいに輪切りにし、等間隔でスキマを開けて使うのが有効です。これで息絶えそうなホタルイカが、必死で光をだして威嚇しているところを演出します。ホタルイカはここにあり!ってことをアピールしてバイトチャンスを多くするのがワンダーの使い方!これはまだ少し生きがいいホタルイカパターンです。

死にそうなホタルイカ

 次はホタルイカパターン専用に開発された TAPP Craft の Standing Squid の使い方です。
 形はホタルイカそのままですが、その動きは独特で、キックバックしてスライドしながらフォールし、着底するとルアーが立ち上がります。リーリングすると垂直にリフトし、ジャークでドルフィンアクションします。これでホタルイカパターン特有の、死にかけたホタルイカの動きを完全に再現できます。
 このルアーにも、ルミコ もしくは からまんホタル を使用します。ただし、ワンダーと違うのがルアーにあまり近づけないことで、ルアーから 30~50cm が理想です。この ルミコ には「 元気なホタルイカ 」を演じて遠くまでアピールする役目があります。
 まず、黒チューブで小さな光の ルミコ をつくり、これで1匹の光の強い生き生きとしたホタルイカを演出します。その下に死にかけのホタルイカルアー Standing Squid を配置すれば、クロダイは底にいる捕食しやすいホタルイカを狙ってきます。リアフックには夜光玉をつけて弱った光を演出してください。クロダイは元気な上の光を攻撃することはありません。必ずこのルアーを攻撃します。
 アクションは底を転がすようにして、死にかけのホタルイカが最後の力を振り絞って泳ぐ動きを再現します。常に底の地形をイメージしながら、リーリングでリフトするかジャークで走らせる、またはトゥイッチでトントンと上に上がろうとする動きを織り交ぜてください。
 このときに上の ルミコ は下のルアーよりハードに動きます。ルミコ をつけることで、生きのいいホタルイカと、死にかけのホタルイカの2つのホタルイカを再現するのです。これが Standing Squid のホタルイカパターン。
 この釣りはナイトフィッシングです。ルミコ を使うことで集魚効果があるだけじゃなく、自分のルアーの位置も確認できるし、距離感もわかりやすい。暗闇での釣りに心強いアイテムですよ。クロダイは群れでいることが多いので、釣れ始めれば連発も可能です。クロダイだけじゃなく、キジハタみたいな高級魚まで釣れるのがホタルイカパターンの美味しいところ。ぜひ試してみてくださいね。

からまんホタル - 夜釣りに便利なウキ止めマーカー

丸山達平

[ プロフィール ]
TAPP Craft 代表
ホタルイカパターンの先駆者であり開発者。本職である原型師のウデを活かして、産卵後のホタルイカ独特の動きを完全再現するスクイッドルアーを制作販売中。