01 ロックフィッシュの基礎知識

イントロダクション

外洋を回遊するタイプの魚は筋肉の酸素消費量が大きく、酸素の供給を絶たれると長くは生きていられない。ところがロックフィッシュの多くは、どういうメカニズムなのか、酸素なしで数時間も生き続けることが珍しくない。同じ白い筋肉をしたキスの脆さと比べると驚くべきタフさである。しかも、カサゴの仲間は、はじめから遊泳力を持った幼魚を産みだす卵胎生魚がほとんどである。卵胎生は浮遊性分離卵や粘着沈性卵よりも進化した繁殖方法だけあって生存率が高く、カサゴ目に属する魚の種類は海産魚中2位の多さとなっている。そのすべてが季節性の直線的な移動または定着性のショートスイマーであり、海底で待ち伏せ型の捕食をする。ところが、採取されたロックフィッシュの胃には何も入ってないことが多い。その空胃率の高さからすると彼らの捕食のチャンスはかなり少なく、たぶんそのために、エサに遭遇したらじっくり確認することなく一気に飛びつくのである。岩の隙間に潜んでいるので、網で大量捕獲されることはないが、喰うや喰わずの生活のため、成長速度は極めて遅く、資源量は減少傾向にある。

ロックフィッシュってナニ?

海藻が茂るのは岩場がメイン

 澄んだ海でも水深が200mを超えると日光が届かなくなって海藻が光合成できなくなる。それで、一般的にはこの200mを境にしてそれより深い場所を深海と呼ぶ。200mより浅くても、海水が濁っていて光が届かなければ、食物連鎖の底辺となる植物性プランクトンは生産されない。
 日光が届く場所なら、海藻が同じ面積に生育する樹木の10倍もの酸素を作りだしてくれるし、海藻から発生する植物性プランクトンがワレカラや小エビ、イワシなどの小さなエサ生物を育ててくれる。
 水中の溶存酸素量が多くてエサが豊富で、しかも身を隠せる場所の多い岩場に棲みついた魚たちの代表がロックフィッシュである。現在、約28,000種とされる魚類のうち、淡水に約12,000種、海水に約16,000種が確認されているが、海の16,000種のうち、外洋の表層に棲息するのはアジやサバなどたったの360種あまり。冷たくて暗い深海に棲むのがおよそ3,200種。残りの12,400種もの魚類が、条件のいい沿岸に棲息していて、その多数を占めるのがスズキ目とカサゴ目の魚類である。ロックフィッシュの主役であるカサゴの仲間は沿岸のみならず、ほぼ世界中の海水域から汽水域、淡水域まで生息している。

砂地は海藻が少なく、生息するのは二枚貝やムシ類がメイン。キスやカレイはいるがロックフィッシュはほとんどいない。ただし、アマダイがいるような場所にはアオハタがいるので油断はできない。

根掛かり覚悟のロックフィッシング

 ほとんどのロックフィッシュは泳ぎがあまり得意ではなく、岩陰に隠れてエサの小魚が近づいてくるのを待っている。つまり待ち伏せ型の食性なので、彼らを釣ろうと思えば目の前にエサやルアーを送り届けてやる必要がある。アジのように回遊してくるわけではなく、グレのようにマキエすれば集まってくるわけでもない。
 とはいえ、ロックフィッシュがどこに潜んでいるか正確には分からない。だから、たぶんこの付近に隠れているだろうと予測して、その辺りにエサを落とし込むかルアーを泳がせなくてはいけない。彼らにあまり深い考えはないから細かい操作はいらない。目の届く範囲で、エサが生きているかのように動かせばパクッと喰ってくる。
 彼らがいるのは岩場であり、藻や障害物が多い。そんなところでルアーを躍らせるのだから、当然のことながら根掛かりが多発する。ロックフィッシュを狙うなら根掛かりは避けて通れない。これだけは覚悟しておく必要がある。

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ロックフィッシュの代表選手

数多いロックフィッシュの中で、よく知られているのがメバル、カサゴ、アイナメ、キジハタ、ソイ、タケノコメバルだ。

● メバル
冬の魚とされるが、これは冬に釣れる魚が少ないからで、本来のシーズンは初夏。広い範囲に生息し、ゲーム性もつよい。

● カサゴ
生息範囲が広く、以前はどこでも釣れていたが近年は数が減ってきている。最大30㎝まで成長。食味がいいので市場価格が高い。

● アイナメ
西日本ではそれほど大きくならないが、北日本に行くと50㎝を超える大型も見らる。首を振るファイトぶりはスリリングで、ファンは多い。

● キジハタ
美味なうえに絶対数が少ないので人気が高く、関西では「夏のフグ」と呼ばれて珍重される。各地にこの魚を専門に狙うアングラーも少なくない。よく釣れるのは40㎝までだが、オフショアでは50㎝クラスも望める。

● ソイ
クロソイが寒帯から温帯域にかけて生息するのに対し、ムラソイは関東より西のエリアに多い。シマソイは北日本が主体で絶対数が少ない。いずれも35~40㎝まで成長する。店頭ではメバルやカサゴとして売られることもある。

● タケノコメバル
北日本に多くエリアによっては一年中釣れる。メバルの中では大型種で、模様の濃淡がはっきりしている。平均20㎝、最大では40㎝を超えるまで成長する。

ロックフィッシュは夜が本番

● 昼間は岩陰に潜んでいて、暗くなると活発にエサを追う

ロックフィッシュのポイント

● ポイントに応じて釣り方もいろいろ

ルアーとエサ、どっちがいいの?

ロックフィッシュはルアーでもエサでも釣れる。だったらどっちがいいのか、ビギナーでなくても迷うところだ。ここでは、その二つを比較してみた。

ルアー釣りは意外にコストがかかる

エサを買う必要がないからルアーの方が経費がかからないと思っている人は多い。だが実際は反対で、1000円もするルアーの一つや二つは必ずロストする。その点、エサ釣りなら、ウキ止めさえつけておけば根掛かりしてもスイベルから下だけのロストで済む。ロックフィッシュにコマセはしないからあとはツケエ代だけで抑えられる。

ルアーは生エサを買う手間が不要

当たり前のことだけど、ルアー釣りにエサはいらないから、クルマにタックルさえ積んでおけばいつでも釣りに行ける。また、エサ釣りは小物が多くて仕掛けが少し煩雑だけど、ルアーの場合はラインの先にルアーを取り付けるだけなのでトラブルが少ない。それからムシエサは苦手な人が多い。そんな人にはやっぱりルアーだ。

ルアーは活性が高いとき

エサ釣りだと外道の雑魚が多いときにツケエを取り換える手間が大変だが、ルアーだとその手間が不要なので手返しが速い。反面、本命がいなくてもエサ釣りならベラやカワハギなどいろいろな魚を釣って楽しむことができる。魚の活性が高いときはルアー、低いときはエサ釣りが有利だ。

エサ釣りはまったりしたいとき

ルアー釣りは常にキャストしてリーリングしなければならない。手早く広範囲に探れるメリットはあるが、頭の中では、魚のいる場所やルアーのレンジをいつも考えている。その点、エサ釣りはウキを流していたり、置き竿でアタリを待つときなどはのんびりゆったりできる。