クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 仕込み技編 】
005. 力が加わるとフリーになる。山元式ウキ止めの威力。 【 橋本敏昭 】
 本家本元の山元八郎さんは、大型のヒラマサが釣掛かりして逃走したとき、ウキに水圧がかかって道糸が高切れするのを防ぐため、このウキ止めを思いついた。カゴ釣りだから当然ウキは大きく、オモリ負荷は10〜15号だったそうだ。 ヒラマサが走るとウキの穴をウキ止めが通り抜けて、完全フリーの状態になる。その結果、ウキの抵抗が道糸にかからず、高切れすることはなくなったという。 このように、山元式ウキ止めには、ウキの穴からウキ止めが簡単に抜けるという特徴がある。それでいて、ウキの穴に対してウキ止めの糸が斜め〜真横になればウキ止めとして機能する。 だから、山元さん自身は、クロ釣りにおいても、魚が走ったときはウキが通り抜け、抵抗がかからなくなるから、根に入らなくなる機能を重んじている。 もっとも、山元さんは現在、山元式ウキ止めだけでなく、遊動クッションゴムなどを組み合わせた『なるほど仕掛け』という概念でとらえている。

 遊動クッションゴムにもそれなりの利点はあるのだが、私は山元式ウキ止めを、主に全遊動(スルスル釣り)で攻めるときに使用する。 水温が下がり、魚の活性が落ちてタナが深くなったときは、潮に乗せてゆっくりと仕掛けを落とし込む全遊動釣法に当たりがよく出る。が、だからといって、最初から全遊動で釣ることはしない。

 釣り初めは、たとえ厳寒期であっても、三〜四キロのウキ下で一時間ばかり流して探ってみる。それでまったく反応がない、ツケエがなくならないという状況であれば、全遊動に切り替えるというパターンだ。 そのとき、シモリ玉を組み合わせた通常のウキ止めでは、いったん道糸を切ってシモリ玉を除き、再び道糸を結び直さなければならない。

 しかし、山元式ウキ止めなら、強く引くだけでウキ止めはウキの穴を通り抜け、からまん棒の上までずり下げることができる。 もちろん、ウキの穴は、ウキ止めが通り抜けるだけの大きさが必要だ。道糸の滑りをよくするためという名目で、ウキの穴の上部にセラミックリング(ガラスやプラスチック製のビーズも同様)を使用したものがあるが、そんなウキは使えない。

 なお、ウキ止めに使う糸は腰が強いほうがいい。私はトヨフロンLハードの1・5〜l・7号を使用し、5o残して切る。ウキ止め糸が太く、切れ端が長いと、竿のガイドに引っかかりやすくなる。 ただし、大きなオモリを使うとき、ウキ止めの糸が1〜1・2号の場合は抜け落ちる可能性がある。


* 全遊動という釣り方は、魚のタナを探れるというメリットがある代わりに、デメリットもある。魚が当たっても、どのくらいの水深だったのかが分かりにくい。 前当たりがなく、いきなり竿先に乗ってくる事とが多いから、油断していると一発でノサれてしまう。
 また、海底近くで大型が食ってきたときは対処する間もなく、底根に向かつて走られて滴ズレすることも珍しくない。 ウキの抵抗が非常に小さいので魚の食い込みがいいことから、仕掛けは平均して太めで臨みたい。
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