クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 仕込み技編 】
017. 思い通りの釣りをするためにラインは早めに交換しよう! 【 石田順市 】
 これを今読んでいるあなたは、いつ道糸を巻き替えたか覚えているだろうか。 いやあ、ちょっと思い出せないとか、今年は一回巻き替えたきりだとかいう人も多いのではなかろうか。 別項でも述べたが、今は細糸の時代である。1.5号や2号の道糸を多用する現在にあっては、結びに気を使うことは基本中の基本。だが、その前に、である。

 結びをいくら完璧にしたところで、ラインが傷んでいたのでは元も子もない。細いラインはヨレが入るのも早いし、劣化も早い。 ヨレが入れば穂先に絡みやすくなるから穂先を折る恐れがある。ちょっとした傷でも入れば、それが致命傷となって高切れする可能性もある。 私は、1.5号の道糸なら釣行のたびに巻き替えているし、2号なら、せいぜい使っても二回までである。 道糸は、自分の思い通りの釣りをするための道具だと思う。いい仕事をして1匹を穫るためには、そこで費用を惜しんではならない。

 話は逸れるが、釣りをする上で主眼をどこにおくか−。さまざまな意見があるだろうが、私はトーナメントにおいている。 釣れても釣れなくても、一日楽しく過ごせればそれでいいという人なら、それほどシビアになる必要はないかもしれない。しかし、私が足を突っ込んでいるトーナメントというものは、一つ一つの細かいことの積み重ねがものをいう世界である。 そして、私はそこに釣りの面白さを見い出している。使い回した道糸は、思い通りの釣りを展開する上で大きな障害となることは明らかだ。 常にいい仕事をするために、道糸を頻繁に巻き替えることは絶対に必要だと思うのである。

 これはハリスにも同様のことがいえる。 私は、トーナメントのときなら足場を変わるごとにハリスを交換している。つまり、大体一時間ごとに替えているということになる。 また、食わなくなったときも、まずハリスを新しいものに替えてみる。この替えた直後の一投目に、それまで食い渋っていたクロが当たることはよくあるのである。 また、ハリスの中で、最も傷みやすいのがチモトである。ツケエに一番近いから、魚の歯などによってすぐに傷がついてしまうのだ。 もちろん、締めるときの摩擦も大きな原因になる。 そうしたことから、チモトを切ってまめに鈎を結び直す人は多い。しかし、それで十分だといえるだろうか。傷みやすいのはチモトだけとは限らないのである。

 ツケエを鈎に刺すとき、ハリスに手を触れない人はまずいないだろう。鈎を持つだけでは安定しないので、普通ハリスを小指や薬指で挟んでいるはすだ。 ツケエを装餌するたびにそのように握っているとなると、その接触部分からも糸が劣化することを考慮しなくてはいけない。私がハリスを切って鈎を結び直すときは、そのことを計算に入れて10pほどを切る。 これは、大体二十分ごとに必ず行っている。大変な手間だと思われるかもしれないが、非常に大事なことである。

 私はこう思う。魚に失礼のないように、特に魚の口に近いところには気を使おうと。 たとえば、同じ料理が美しい有田焼の皿と使い捨てのトレイに乗っていたら、あなたならどっちを選ぶだろうか。やはり、きれいなほうを選ぶはずだ。 それと同じで、魚にもきれいなハリスでツケエを食べていただきたいのである。 些細なことだが、実はこうした点に気がつくかどうか、またそうした些細なことの積み重ねで大きな差が出るのだ。


* 私は、道糸やハリスは−つの銘柄をとことん使い込む主義である。

 糸の性格は、銘柄によってかなり異なるので、同じ号数だといって安心していたら、かなり強度に差があったなんていうことにもなりかねない。 そこで、この銘柄の糸ならどのくらい強度があり、どのくらい伸度があるかといったことを、体と竿で覚えてしまうことをおすすめする。

 ラインの強度を覚えてしまえば、大物が掛かったときでも、「これなら取れるぞ」と判断できる。すると、ビクビクしたやり取りをせずにすむのである。 ラインの強度に少しでも不安があると、どうしてもやり取りが消極的になる。それによってバラすことが多い。 一つの銘柄のラインを究めることは、大物を取るコツでもある。
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