クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 仕込み技編 】
021. バイプレーヤーとしての水中ウキの使い方。 【 鵜澤政則 】
 水中ウキは嫌いだという人が結構いるが、それは水中ウキをオモリと同一視しているからではないだろうか。 少々手前味噌になるが、キザクラから出している『鵜澤ディンプル水中』のコンセプトについて述べてみよう。 それによって、「水中ウキはオモリではない」ということが分かってもらえるのではないかと思うからである。

 そもそも私にとっての水中ウキとは、風や波の影響で仕掛けがうまく流れないとき、これをセットすることによって潮の流れをよく受けるという水帆の役割があくまでもメイン。 したがって、「オモリ負荷が小さくて表面積が大きい」という点が最も重要な要素である。小さくて重いだけの水中ウキは、その概念の中にないのである。それならばオモリ(ガン玉)で十分代用できるので、あえて高いお金を出して買う必要はない。

 水中ウキは、仕掛けがうまくアップすることこそが仕事なのだ。そのためには、サイズが比較的大きく、水中における安定性がよく、潮の抵抗をしっかり安けて仕掛けをぐいぐい引っ張ってゆくことが大切である。 そこで考えたのが、ウキのボディにはっきりとした溝を彫ることだった。 たったこれだけのことで表面積が増大し、同じサイズの溝のないものに比べて、水中抵抗が20%増加した。ということは、それだけ仕掛けが潮を受けやすくなったということである。

 では、どんな場合に水中ウキを使えばいいのだろうか? ビギナーの中には「潮が速いときに使う」という人がいるが、私は同意できない。単に潮が速くて仕掛けが入らないのであれば、オモリを打つことで対処できるからである。 第2回ロイヤルカップ(1998年1月)の決勝において、私が水中ウキを使った理由は、左手からビュンビュン吹きつけてきた横風が止みそうになかったからである。 あれだけ吹かれると、どう対処しようと道糸が大きな影響を受けてしまう。 ということは、水中の仕掛け全体もその影響を受けるということにほかならない。つまり、潮に乗って流れようとする仕掛けの動きを阻害してしまうのである。 また、水中ウキには沈むのも浮くのも遅いという性質があるため、道糸が瞬間的に風にあおられたとき、ガン玉のようにスッと浮いてしまうことがない。グッと踏みとどまってタナをある程度キープしてくれる。これも風が強いときに水中ウキを使うメリットである。

 では、逆にデメリットはどこにあるのだろうか。 一つは、クロがツケエを吸い込むときの抵抗になるということである。 確かに水中ウキであれガン玉であれ、なにもつけないほうが食い込みがいいのは当然である。 しかし、いくら食い込みのいい仕掛けでも、狙いの潮に入らない、狙いのタナまで届かないのであれば、絵に描いたモチと同じ。感度がいいとか食い込みがいいとかいうのは、ツケエが狙いの潮に入り、狙いのタナに届いて初めて問題にすべきことなのである。

 もう一つ、仕掛けが立ってしまうことも水中ウキのデメリットだと言われている。 しかし、これは従来の水中ウキ(黒檀が多い)がやたらと重く作られていたからにほかならない。軽い水中ウキであれば、仕掛けが垂直に立つことなく、斜めになった状態で流すことができる。 『鵜澤ディンプル水中』はこの点を考慮して、比重を水よりやや重めくらいに設定している。そのため、水中では軽く、流れがあるときなら潮に乗って斜めになって流れてくれる。 この水中で軽いことを利用すれば、次のような使い方もできる。たとえば、風が強く、潮もそこそこに走っているという状況をイメージしてほしい。

 こんなとき、2B+Bくらいのガン玉を打つところをマイナス2Bの水中ウキ+極小のガン玉という、より軽い仕掛けで流し込むことができるのである。寒の時期であれば、極小のガン玉を外してハリスを完全フカセにするという手も考えられる。 この水中ウキ+完全フカセという仕掛けは、流れが極めて緩く、少しでも中層、底の流れをつかみたいといった場合にも重宝する。

 さて、結論。 もし従来のただ重いだけという水中ウキのイメージにとらわれて使うのを敬遠しているのならば、そんなイメージはさっさと捨てて、新しい水中ウキを自分の仕掛けのバリエーションに加えてみてほしい。きっと重宝する場面に遭遇するはずだ。 オモリのように一気に仕掛けを沈めることはできないが、横風などで道糸を引かれるようなときでも、ノーマルな仕掛けに比べてゆっくりと自然な感じで流すことができる。 活性が低く食いの渋い冬〜春などは、特に有利に釣ることができるだろう。
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