クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 1 】
024. クロ釣りのツケエはオキアミのみにあらず! 【 田中釣心 】
 言うまでもなく、クロ釣りのツケエはオキアミが主流である。最近では、それ以外のツケエを使っている釣人をほとんど見かけなくなった。 オキアミは日本近海に生息する生物ではない。釣人も昭和五十年代に入り、オキアミが大量に市場に出回り始めるまでは、アミ(小さいので装餌には大変苦労した)やモエビをツケエとして使っていた。

 なぜ、もともと生活圏にいなかったオキアミでクロが釣れたのか。その理由は定かではないが、永年、毎日のようにオキアミがマキエとして使われてきた現在、クロが好んでオキアミを食うのは当たり前になっている。 実際に、私が使うツケエとマキエはオキアミが主であり、あらゆるエサの中で抜群に食いがよいと感じている。 ただ、あくまでも「主に」使っているのであって、オキアミでしかクロを釣らないというわけではない。確かにオキアミは四季を通じて活躍する、いわば万能エサだが、それ以外にも、クロの生活圏に生息している(クロの常食と思われる)エサも、時期や使い方によっては強力な武器になる。

 話は戻るが、オキアミがなかった時代は、アミやモエビをツケエにしていた。また、それ以外にもムシ類やノリ、さらにパン粉などを使っていた。 思い返してみると、それらのエサは、それぞれ使われる時期がおおまかに決まっていた。釣る時期に応じて、クロが最も口にしやすいエサを使う、つまり、クロが普段食べているであろうエサを推理してツケエにするという方法は、自然で楽しいものである。

 さて、いつでもオキアミで釣れる現在に立ち返って考えてみよう。オキアミで釣れるのならそれでいいじゃないかと思うかもしれないが、これに昔風のツケエとその選び方をドッキングさせてはどうだろうか。 これにチューブエサ、オキアミのボイル、ムキミなどの新しいエサを組み合わせてみると、より幅広くツケエを使い分けることができる。

 ツケエを使い分けることで、どのようなメリットがあるだろうか。実際はもっとたくさんあるのだろうが、私は次の二点が大さなメリットになると思う。 まずは、食いのよさ。オキアミと違い、年間を通じて食いがよいわけではないが、使う時期によっては突発的に食いがよくなる。 特に、アミはクロの生活圏に生息しているから食いがよい(アミエビは暑くなると北上し、九州近海から姿を消すので、夏期に使用するとかえって食いが悪くなる)。マキエ用アミエビ(ジャンボ)がベストだが、市販のサシアミでも十分効果がある。厳冬期は特に効果が高いので試してほしい。

 また、フナムシのように磯の上に住んでいる生物も格好のエサになる。大波などで流されたそれらの生物を食っているのは間違いないからだ。 二点目は、エサ盗り対策。クロの食性という観点からは若干逸れるが、最近は近場のみに限らず、離島でもおびただしい数のエサ盗りに悩まされることが多くなった。 それらを完全にかわしてクロを釣るというのは不可能だが、本命を手にする確率を上げてくれるのは確かだ。 特に、エサ盗りが多い夏季は、ノリやパン粉、さらに、前に紹介したフナムシなどが効果的。高確率で良型のクロを狙い撃てるエサとして、すでに雑誌で取り上げられているから、知っている人も多いだろう。

 当たり前にいつもの仕掛けやエサで釣果を期待するのではなく、仕掛けや海況、また、本項のテーマである食性などを推理しながら戦略を練るのも、クロ釣りの醍醐味の一つではないだろうか。


* クロは、不思議となにかが変化した途端に食ってくるパターンが多い。その「なにか」はなんでもよい。 たとえばハリスを新品に替えたり、ガン玉の位置をずらしたりといった細かなことでもそれに当てはまる。 中でも、潮とツケ工は効果が大きい。潮変わりに食いが立つのはもちろん、ツケエの種類が変わった途端に食ってくるパターンは特に多く、相当な効果が期待できる。
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