クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 1 】
027. 足元コマセはフカセ釣りの原点である。 【 丹羽正 】
 釣りを始めた頃、耳にタコができるくらい言われたことは、コマセは足元!であった。私は、今でもこれこそがコマセの基本だと信じている。 昔は、クロはサラシを釣れというセオリーが今よりしっかり通用しており、足元のサラシ(払い出し)にコマセを入れ続けて釣るのが基本中の基本だった。

では、足元にコマセを入れ続けることの重要性をいくつか述べてみよう。

@ 自分が立っているところがスタート地点であり、できるだけその近くで食わせるほうが絶対的に楽である。
A エサ盗りの動きを把握することがでさる。
B 足元に打っておけば、必ず沖のどこかでコマセが効く。
C エサ盗りが多いときでも、周囲全体エサ盗りだらけという状況になることをある程度防ぐことができる。

 現在のクロ釣りで気になっていることは、ウキに直接コマセをかぶせて釣る人があまりにも多いことである。 確かにコマセとツケエを合わせることはクロ釣りの基本だから、それが悪いわけではない。 (ただし、ウキの頭にコマセをかぶせてツケエと合うかどうかは疑問である)。 問題は、足元にまったく入れないで、ウキの頭にばかりかぶせることである。もしウキの頭にかぶせて釣るのなら、その倍以上の量を足元に入れたほうがいいと思う。

 その理由の一つが@である。たとえば、10m沖に仕掛けを入れ、そのウキの頭にマキエをかぶせて釣り始めたとしよう。 その場合、10m沖がスタート地点となり、それを続ければ続けるほど自分が立っているところ(つまり、釣座)からポイントが遠く離れてしまう。潮が速ければ速いほど、ポイントが遠くなることは容易に想像できる。 ところが、たとえウキの頭にかぶせて釣ったとしても、その倍以上(エサ盗りの多い少ないにもよるが、できれば三倍以上はほしい)のコマセを足元に入れ続けておけば、スタート地点は常に足元である。

 また、Aについていえば、エサ盗りの動きが分かるのは足元だけである。沖になればなるほど海中の様子は見えにくい。つまり、ウキの周囲にばかりコマセを入れると、エサ盗りの動きを視認することができないのである。 足元にコマセを入れ続けているからこそ、「あっ、エサ盗りが出てきた!」とか「あれ、いなくなったぞ?」とか分かるのである。

 高水温時は、エサ盗りがふっと姿を消せばチャンスだし、逆に低水温時はエサ盗りが出てきたことで、あるいはその動きが活発になったことで、少しは食い気が出てきたと判断することができる。もちろん、エサ盗りではなく、クロの姿が確認できればしめたものだ。 沖にばかり打つと、ツケエのあるなしとか、ツケエの盗られ方とかでしか魚たちの動向を判断することができない。 それは多くの場合推測にすぎず、自分の目で確認する場合に比べて、精度は確実に落ちるはずである。

 Bについていえば、足元コマセをやっておけば、大外れが少ないということである。潮の流れを読むことはベテランでも難しいもの。平面的には分かっても、立体的には皆目分からないのが普通である。 Cについては特別の説明は必要ないだろう。

 こうして見ると、足元コマセは「技」と呼べるほどのものではなく、いわばフカセ釣りの原点である。難しい操作が必要なわけでもない。つまり、意識してさえおけば、誰にでも簡単にやれることなのである(簡単だけど、恩恵は大きいぞ!)。 仕掛けを巻き上げる前に一杯、エサをつける前に一杯、仕掛けを投入する前に一杯、そして仕掛けを流しているときも忘れずに一杯、二杯。こういうリズムを体に覚えさせてしまおう。 足元コマセがあって初めて、ウキにかぶせるコマセも生きるのである。
* エサ盗りは多いと苦労させられるが、重要な情報源でもある。工サ盗りの動き一つで様々な情報を手に入れることができる。
 にもかかわらず、ビギナーにはウキばかり見ている人が多い。それも、釣れないときほどその傾向が強くなる。観察眼を鍛えるのも実力アップの秘訣なのだ。
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