クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 2 】
051. 掛かりが悪くなったら、即鈎のローテーション。 【 丹羽正 】
 以前、釣紀行の取材で甑島の手打に釣行したときのこと、中のオサン瀬というところで、35〜45p級のクチブトが一時入れ食いになった。 が、その途中、ウキは変わらずにストンと入るのだが、鈎に乗らないようになった。まったく素鈎を引くというわけじゃなくて、合わせをくれたとき、一瞬グッという手応えはあるのだが、スッと外れてしまう。 連続二発外したところで、鈎をチヌ鈎からカットグレに替えてみた。すると、一投目からがっちり鈎掛かりし、同型をそのあと7〜8匹追加することができた。

 さて、問題は食いが渋いというわけでもないのに、なぜ突然鈎に乗らなくなったのか、ということである。 エサ盗りが多いという状況なら、それがエサを盗っていたとも考えられるが、そのときはエサ盗りもほとんどいなかったし、ウキの入り方もほぼ同様だったのである。 思うに、こういった現象は、そのときのクロの食い方にその鈎が合っていない、あるいは合わなくなったために起こるのではないだろうか。 もっとも、正直言って海の中のことだから、実際のところは分からない。なにか別の要因が働いて、掛かりが悪くなったのかもしれない。

 しかしながら、鈎を替えた途端にまた同じように鈎掛かりするようになったのだから、海の中の真実はどうあれ、方法としては正解だったである。 例として挙げた甑島釣行に限らず、これまで何度も同じような経験をしている。 一回外しただけならなんとも言えないが、ウキ下やオモリの位置を調整し、それでも二回、三回と外すようなら、まず鈎を替えたほうがいい。 その方法としては、同じ種類でもいいからまず新しい鈎と取り替えること。特に何匹か釣ったあとは、それだけで鈎先が甘くなっているかもしれない。

 また、根掛かりしたあとも同様だし、フグやウマズラといった口の硬い魚を釣ったあとも、できれば取り替えたほうがいいと思う。 当然、オナガの55〜60p級を釣ったあとはハリスともども新しいものにすべきである。 オナガの口も硬く、なによりも長く激しいやり取りによって、鈎の結びめが弱くなっている可能性が高いからである。

 とにかくまず新しい鈎に替えること。そして、それでダメなら今度は違う種類に替えてやる。これが掛かりが悪くなったときにやるべき方法である。 そのためには、鈎は一種類ではなく、何種類か用意しておかねばならない。 食いが渋いときに、鈎を小さくすることは誰でも知っているけれど、小さくするといっても限度があって、これ以上落とすことができないという場合、一種類しかなければ、もうそれでお手上げである。

 ところが、違う鈎を何種類か持っていれば、それらを試してみることができるのである。 これは私の口癖だけど、鈎のローテーションに限らず、釣りで大切なことは、間違ってもいいから、とにかくなにかやってみることなのである。釣れないときほどなにかやってみる。やってみてダメだったら、また違う方法を試してみればよい。 たとえそれでダメだったとしても、一日なにもやらず釣れないままで終わるよりは、まだましなのだ。 なにかやってみて、すぐそれが正解になることもあるし、間違っているうちに、正解にたどり着くこともあるのだから。


何種類もの鈎を持参するときは、比較的よく使う鈎を別にして、取り出しやすいようにしておく。

* 私の場合は、40p級クチフト狙いなら、通常カットグレ5〜7号、南方グレ5〜7号、チヌ0.5〜1号、アマスレ5〜7号の四種類を使い分けることが多い。釣場にはもっと違う種類と号数をとりあえず持って行くけれど、使うのは大体この四種類である。 この四種類について少し説明しておくと、軸が長くヒネリなしがカットグレ、軸が長くヒネリありがチヌ、軸が短くヒネリなしがアマスレ、軸が短くヒネリありが南方グレである。
 私の場合は、軸の長さとヒネリのあるなしの組み合わせで、四種類を使い分けているが、これがベストというわけではないので、自分の好みの鈎をいくつか選んで、こういうパターンを持っておくといいと思う。一種類よりはなにかにつけて心強いはずである。 釣りの道具の中で魚と直接触れ合うのは鈎だけだから、気を遣いすぎることはないのだから。
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