クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 2 】
056. 冬場のエサ盗りはオキアミカラーでまず正体をつかむ。 【 池永祐二 】
 エサ盗り対策というと、梅雨から秋にかけての比較的水温の高い時期を思い浮かべるが、昨今は冬場でも必要である。中でもキタマクラは、夏、秋にかけてのアジゴと肩を並べるほど厄介なエサ盗りである。

 特に大分〜宮崎の九州東岸の磯では、ここ数年猛威をふるっており、キタマクラのために釣りにならなかったという嘆き節を聞くことも珍しくない。私自身、こいつのおかげで貧果に終わり、泣きを見たことも一度や二度じゃない。

 1997年の春、大分・深島の松バエの角に上がったときなどは、あたり一面すべてキタマクラという状態で、ぞっとさせられたことがある。 朝マズメを迎え、さあ釣ろうと気合十分。で、海面を見ると、手前にも沖にもなにやら黒い影が映っている。 それがすべてキタマクラなのだった。当然、どこに仕掛けを入れてもこいつが食ってくる。あるいは、鈎を噛み千切ってしまう。 数が少ないときはそう怖くはないが、多いときはお手上げになることもしばしばである。そのうえ、次から次に鈎がなくなってしまうから始末が悪い。

 寒い時期の鈎結びは、ベテランでも億劫なもの。二度、三度と続けて鈎を盗られたら、うんざりして気持ちがめげてしまう。 キクマクラは低水温に強いのが特徴である。だからこそ冬場のエサ盗りの筆頭なのだ。潜って観察したわけじゃないが、釣っているときの感覚でいうと、上層から下層まで帽広く分布しているようだ。また、磯際には少なく、それから少し離れたところに多い。 数が多いときには本流の中に入っていることもある。本流を流していてガツンという竿引きの当たりがあり、よしっと思ってやり取りを始めたら軽い。正体はキタマクラだったなんてこともある。

 夏場に前述した深島でオナガを狙うとき、仕掛けを深く入れるとキタマクラが食ってくる。つまり、高水温が苦手で、夏場はそう水温の上がらない深場にいるのだろう。で、水温が下がるとともに上層から下層にいたるまで暗躍し始め、釣人を悩ませるのだ。キタマクラに限らずフグ・カワハギの仲間はエサを盗るのがうまく、当たりがないままにツケエを盗られるということも少なくない。 たとえば、ツケエが残るので二ヒロ、三ヒロとウキ下を深くしてゆき、竿一本でようやくツケエを盗られたとする。 これは、釣人から見れば吉兆である。まずこのタナを集中的に攻めねばならない。

 そして、次にやるべきことは、エサを盗っている魚の正体を見極めることである。そのためには、鈎に掛けねばならないし、その前にウキに当たりを出さねばならない。以前はそう言われていた。 だが、今は違う方法がある。そう、エサを盗られた時点で鈎をチェックするのである。

 私はがまかつの競技ヴィトムという鈎を使っているが、この鈎はオキアミカラーというピンクの塗装が施されており、この塗装の剥げ方で、ある程度魚種を判別することができるのだ。 ホンカワハギやウマズラの場合は、針の先でいくつもつついたような感じで塗装が落ち、キクマクラの場合は、その三倍くらい大きな剥げ方をする。スズメダイの場合は、剥げた跡が黒っぼくなるのが特徴。 そして、鈎になにも傷が入らずにツケエを盗られるときは、クロと私は判断している。 何回か鈎をチェックして魚の正体がつかめたら、次はその対策を講じることになる。したがって、釣り始めの一投〜三投は、特に鈎のチェックが必要である。


筆者が愛用しているオキアミカラーの競技ヴィトム。
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