クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 2 】
065. 寒の時期は、水深竿二本前後のところが攻めやすい。 【 池永祐二 】
 寒の時期は、エサ盗りもクロも活性が低く、マキエを打っても浮いてこない場合が多い。換言すれば、魚の姿がなにも見えないという状況である。 そういうとき、釣人は浅いところより深いところを好む傾向がある。底が丸見えの磯に上がったりすると、どうも釣れる気がしない。水温が低いのだからクロは深みにいる、したがって深い釣場、という心理は理解できる。 しかし、実際には深い釣場、たとえばドン深の釣場のほうが苦労させられる場合が多いのである。

 苦労の原因はタナボケで、次のような経験をしたことのある人も少なくないだろう。 ツケエが残ってくるのでセオリー通りウキ下を徐々に深くしていって、竿二本とか三本のウキ下で辛抱して釣っているときに、二ヒロ、三ヒロのタナに良型のクロが不意に二、三匹出てきて、マキエを食っているのが見えたとする。 これはいかんと思って、ウキ下を変えるために仕掛けを巻き上げようとするのだが、ものの一分もしないうちにクロは姿を消してしまう。そんなことが一時間に一回くらいの割合で起きるのである。 こうなると、釣人はウキ下をどこに合わせればいいのか分からなくなってしまう。

 これからゆくと、攻めやすいのは竿二本(水深10m)前後のところだと言える。竿一本くらいの浅いところは打つ手がなくなって具合が悪い。 もちろん、手前は竿一本くらいの水深しかなくて底が見えていても、沖にゆくに連れて徐々に深くなっていればよく、底が見えるかどうかの境め周辺が狙いめとなることが多い。

 かつて甑島の里で次のような経験をしたことがある。 大方底が見えるくらい浅い磯で、当然魚の姿はエサ盗り1匹見えないのだが、竿一本とちょっとのウキ下でゆっくり沈めてゆくと、途中でウキがもや−っとした反応を示すのである。 これはと思い、優しく竿先で聞いてやると、グ〜ンと竿に乗ってきた。 この方法でなんとか5、6尾釣ったのだが、型は1.2sと1.3sの良型混じりで、残りはいずれも800g級。 ときどき根掛かりすることがあったから、このときのクロは底スレスレで食ってきたものと思われる。

 同じようなことを大分・深島の波止において何度も経験しているのだが、この深島の波止のクロは捨て石(当時、テトラが入っておらず、捨て石が見えていた)に腹をつけたような感じで食ってくるのだった。型は1.5s級の良型である。

 ここから導き出されるセオリーは、松田さんのいう「実の時期は底からナンボ」という計算である。そして、この計算がやりやすいのが竿二本前後の水深の釣場なのである。ドン深よりもはるかに攻めやすい。 ドン深だと底近くまでマキエが効くかどうか心配だし、マキエとツケエを合わせるのも深くなるほど難しい。 このとき、注意すべきは、ウキの感度である。 底スレスレで食うのだから、高活性時のようなエサを口にして反転するといった就餌行動は期待できない。

 また、時期的にポイントは速い流れよりもゆったりとした流れが主になるから、ウキに出る当たりも総じて小さい場合が多いのである。 そのため、感度に優れる小さなウキ、軽い仕掛けでゆっくりツケエを落としてゆく。 風が強いときはウキを沈めてやるし、クロが底のほうで見えるのに食わないようであれば、ハリスウキを使ってツケエをさらにゆっくり落としてやるといった工夫が必要だ。

 いずれにしても、寒の時期のエサ盗り1匹魚が見えないような状況においては、竿二本前後の水深の釣場が攻めやすいことを覚えておこう。 深い釣場にこだわると、かえって難しい釣りを強いられる恐れがあるのだ。
* 海の透明度、光線の具合などにもよるが、通常肉眼で見えるのは5〜6mくらいまで。それも、光の屈折によって釣人の感覚としては、とても浅く感じてしまうのが普通である。見えるのに食わないクロを釣る方法については、「 クロ釣りの技 66 」 を参照のこと。
 
* 図らずもドン深の的場に上がることもある。そういうときは、クロを浮かせる努力をしながら、ウキ下は「底からナンボ」の計算で釣るしかない。ポイント的には、磯際や沈み瀬の際といった岩の近くをメインに狙うことになる。
ライトハウス出版のサイトを表示する

このページを閉じる
九州釣り情報は株式会社ルミカが運営しております。 www.lumica.co.jp 株式会社ルミカのサイトを表示する