クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 3 】
069. 軽い仕掛けでタナを探る全遊動もときには重いオモリを使う。 【 橋本敏昭 】
 九州で誕生した全遊動と呼ばれる釣法は、四国や関西では似たようなスタイルでスルスル釣りとして確立されている。 ウキ止めがないので道糸はウの中を自由に通り抜け、仕掛けはどんどん沈んでゆく。それにともなってツケエは上から下へゆっくり沈み、クロのタナに届いたところで食ってくる。分かりやすくいえば全遊動とはそんな釣り方である。 もちろん、誰もが簡単にできる釣法ではない。それなりに熟練は必要だと思う。

 難しいところは何点かある。 まず、ツケエは、マキエのオキアミと同じようにゆっくり沈むのが理想であるから、極力小さいガン玉を使う。それでいて、ツケエが先に沈んでほしい。 道糸を送りすぎるとガン玉が先に沈む恐れがある。といって、張りすぎると仕掛けが沈んでゆかない。流れつつ、沈みつつ、なおかつ鈎(ツケエ)が先という状態を保持しなければならないのである。 その状況を確実に設定するという意味で、とさには道糸を引っ張り、仕掛けを引き上げてやるのもいいかもしれない。

 加えて、道糸が長く出れば出るほど、風や潮の抵抗を受けて仕掛けは沈みにくくなる。20m沖は2号でも沈んでいたのに、40m沖となるとBでも沈まない可能性がある。その度合いは、横風が強くなればなるほど激しくなる。 穂先を海の中に突っ込み、道糸に風が当たらないようにしたとしても限度がある。 だからといって、水深がある釣場で、総じて魚の活性が低く、潮や水温の加減で瞬間的にしかクロが浮いてこないとき、つまりタナが変わりやすい状況では、ウキ下が固定される通常の釣り方(遊動、移動仕掛け)では狙いづらい。 そんな場合は、全遊動にお決まりのパターンである小さなガン玉という意識を捨て去ってしまう。そして、とにかく仕掛けを沈めることに徹する。

 そのためには、Bや2Bのガン玉を使わざるを得ない場合もあろだろう。それでも構わない。ただ、できるだけ鈎が先に沈むよう道糸を操作する。 オモリが重くなると、いくらフリーにしているとはいえ、道糸とウキの間に少しでも摩擦が生じると、ウキは沈んでしまう。それでも気にせず、仕掛けは沈めてゆく。 このときのマキエは必ず先に入れておく。仕掛けは流れつつ、沈みつつあるのだから、あとからマキエを投入してもまず追いつかない。

 自分のマキエがどこを流れ、どのくらいの速度で沈みつつあるかを准測し、それに合わせて仕掛けの投入・送り込みをする。それで食わなければどんどん修正してゆく。 全遊動にすると魚の食い込みがよく、当たりは道糸〜穂先にいきなり表れることが多い。その時点で魚はツケエをくわえて走っているわけだから、慌てずに態勢を整え、それからやり取りすればよい。


* 全遊動の場合は、水面近くだけが沖に流れていたり、底潮は手前に突っ込んでいたりすると根掛かりするが、それを除けば意外と恨掛かりは少ない。 だからといって、いくらでも沈めていいわけではない。釣場にもよるが、底近くはクチミ(フエフキダイ)やフグイなどの外道しかいない場合が往々にしてある。 といって、ツケエを盗られない以上は、やはり沈めてやらなければならない。
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