クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 3 】
070. 寒の時期、ツケエが残り続けるときはウキを沈めないで釣る。 【 丹羽正 】
 魚に適温水温があるのはご存じの通りである。一般的にクチブトなら16〜17度、オナガなら18度前後と言われている。ただし、これには地域差があるので、一槻には言えない。

 伊豆のイナンバという釣場の場合は、水温が高いときは30度になることがあり、そういうところに棲息している魚と、高くても25〜26度にしかならない海域にいる魚とでは適水温が違うからである。 とはいえ、水温が下がると、クロの活性が悪くなるのはどこも同じである。エサ盗りの姿も見えず、流せども流せどもツケエが残りっぱなしという状況を想像してもらえばよい。 そんなときは、まずなにより魚がいるタナを探すことが先決である。

 海女さんなんかの詰を聞くと分かるのだが、海の中には冷たい流れ、温かい流れといったいろんな水温の層があって、魚は居心地のいい層に集まる傾向がある。これは、クロもエサ盗りも一緒で、エサ盗りがいる層にはクロもいると考えてよい。ツケエがなくならないときは、この層(タナ)を探さねばならないということである。 で、こういうときの要点は、エサ盗りの当たりやクロの小さな当たりがとれる感度のいいウキを使うこと。次にウキを沈めないことの二点が大切である。

 寒の時期だけに、タナを探るというと、沈め釣りを連想するかもしれないが、ウキを沈めてしまうと、肝心のどこでツケエを盗られたかが分からない。同じ意味で、感度の鋭いウキも使えない。 ツケエを盗られるタナを探すのが目的なのだから、ちゃんとウキ止めもつけておく必要がある。沈め釣りも全遊動も確かに優れた釣り方ではあるけれど、万能ではないということである。

 実際のやり方は、矢引きくらいでウキ下を深くしてゆく。これは、寒の時期の魚がいる層が1m前後の幅じゃないかと考えているからである。もっとも、これはイメージだから当たっているかどうかは分からない。 そして、ウキに変化が現れたら、そっと仕掛けを巻き上げてツケエをチェックする。

 一概には言えないけれど、中身が吸われて殻だけ残っているようなときはエサ盗りの場合が多く、オキアミがスパッと切れていたり、グチャッと潰れていたりするとクロの場合が多い。 ウキやツケエに変化があったら、次の一投はウキ下を20cmほど浅くしてやる。これでゆっくりウキがスーツと入ってゆくことがある。

 寒の時期は、感度のいいウキを使っていてもいきなりスパッと消し込むことは少なく、プツプツという小さな前当たりが出ることが多いから、この前当たりを確実にとってやることも大切だ。 前当たりが出たら、ほんの少し仕掛けを張ってやる。ウキを10cmくらい手前に向けるような感じで張ってやるのだ。これでスーッと入ってゆくこともある。 前当たりをとるためには、前述したように感度のいいウキを使うこと、また、ハリスが張れていることが前提である。

 潮が速いところなら、流れによってハリスはある程度真直ぐになってくれるが、寒の時期はそういうポイントは釣らない。ゆったりとした流れを釣ることが多いので、仕掛けを投入したあと、ハリスを張った状態にして沈めてゆく必要がある。 水温が急激に下がって、いよいよ食い渋ったときの当たりは思いのほか小さい。こういうときこそウキが決め手になるのである。


丹羽ウキは高感度、高重心がウリなのだ。沈めて使うと、威力が半減するぞ。

* エサ盗りだの本命だのというのは、釣人が勝手に決めたことであって、魚にとってはまったく無関係。魚は魚なのである。だから、エサ盗りもクロも同じように居心地のよい層に集まる。これは、水中観察のビデオでも明らかである。
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