クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 食わせ技編 3 】
073. 仕掛け交換のあとの一段目に気をつけよう。 【 真崎芳弘 】
 釣っている最中に仕掛けを替えるという作業は、普通なら誰でもやることだ。 もし最初の釣り始めの仕掛けのままで魚がバンバン釣れるなら、当然そのままの仕掛けでいいだろう。ときどきハリスや鈎を交換するだけで十分だ。 でも、実際の釣りではそう簡単にはいかない。潮が変わった、エサ盗りが増えた、1匹食ったきりなにも食わなくなつた、まったく食わない、当たりはあるのに食い込まない、釣座を変えた、狙いのポイントを変えた、などなどいろんな状況で釣人は仕掛けを替える、というより替えざるを得なくなる。

 替える仕掛けは、ウキ、ハリス、鈎、ガン玉などが一般的だろう。ウキなら浮力、サイズ、種類。ハリスなら太さ、長さ。鈎なら大きさ、種類。ガン玉なら重さ、打つ位置といったパターンである。 場合によっては、リールも道糸もそっくり替えるとか、竿まで替えることもあるだろう。 そこで替えた仕掛けの、第一投日に注意することはもちろんだが、ここで述べたいことはそれだけではない。

 たとえば、替えた仕掛けがそれ以前のものとまったく同じ場合もそうだということだ。つまり、ウキもハリスも、鈎もガン玉も同じサイズ、大きさ、太さ、長さで交換した場合の第一投日である。 もちろん新しいハリスや鈎を使うのだから、厳密に言うとまったく同じというわけではないが、その第一投目にいきなり食ってくることが非常に多いのだ。

 なぜだか分からない。ハリスが新しくなることで、ツケエの動きやハリスのなじみ方がほんの少し変わったからだろうか。 たとえ同じものであれ、鈎一本、ガン玉一個が替わったことによって、それまでと違うなにかが、魚の食いを誘発したということなのだろうか。 同時に、釣人の目に見えない潮やその他の状況の変化があって、それが仕掛けの投入とうまくタイミングが合ったということなのか。 たぶんそれぞれのケースによって「答え」はあるのだろう。

 これは自分自身が、今までに何度も実釣で経験していることである。同様のことを経験したことのある釣人も多いのではないだろうか。 たとえばこんなふうだ。状況が日に見えて変わったわけではない。一連の釣りの流れの中で、ふと思い立って鈎を替えてみた。替えた鈎は同じものだ。そして、それまでと同じように仕樹けを投入した。 その一投目にクロが食ってきたのである。自分としては、なにがなんだか分からない。これというはっきりした理由が分からない。でも、クロが食ってきたのはまぎれもない事実である。言えることは、ただ鈎を替えたということだけ。

 同じことが、ハリスやガン玉の場合にもあった。やはり一投目にクロが食ってきた。 何度も経験すると、自然にそれが自分の釣りの一つのパターンになってくる。

 同じように仕掛けを投入して仕掛けを流しているときに、ふと「気分転換」のように仕掛けを替える。もちろんそれで食わないこともある。いや、食わないことのほうが多いだろう。 だが、なにもしないで釣れないよりは、なんらかの変化を加えても釣れないほうが、得ることは多いはずだ。

 名手の釣りを見ていると、額繁に仕掛けを替えていることに気づく。特に鈎やハリス交換は多い。当然、理由のある交換がほとんどなのだろうが、中には「理由なき交換」もあるのではないか。そんなことを勘ぐりたくなる。あるいは、自分には計り知れないなにかを、その名手は知っているのかもしれない。 それは、いわば「引き出し」の多さが違うということだ。そのレベルにまで到達するためには、もっともっと実釣経験を積んでゆくしかないのだろう。 いずれ必ず「答え」は見つかるはずだ。 今の私はそんなことを考えながら釣りをしている。
* 仕掛け交換後の第一投目に気をつけるという「法則」は、実はクロ釣りだけではなくチヌ釣りにも当てはまる。 さらに、他の釣人にも何度か確認した話だが、チヌの落とし込み釣りなどにも同様のことがあると聞いた。 これはますます興味深いことであす。もっと実釣データをシビアに積み上げていけば、なんらかのパターンが本当に見えてくるかもしれない。
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