クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 小技・裏技編 】
091. マキエ作りに欠かせないアイテム、それはシャモジである。 【 石田順市 】
 私はマキエを混ぜると、必ずシャモジを使っている。なぜかというと、貧乏でマゼラーが買えないからである。・・・というのは冗談だが、このシャモジ(私が使用しているものの正式名称は「チヌベら」という)、100円台で買えるわりには、かなりのすぐれものなのだ。

 別項でも述べたが、私はマキエをいっペんには作らない。クロ釣りの場合、小さいバッカンで何回かに分けて作っている。したがって、そのくらいの量(オキアミ一角+集魚剤半袋)は、シャモジで混ぜるのにちょうどいいのである。 実際に使ってみれば分かるが、シャモジというものは、驚くほど混ぜるのに適している。日本人だからかもしれないが、妙に手にしっくりくるし、チヌベらには一ヶ所角がついているので、バッカンの隅々まで混ぜることがでさる。まさに、釜の中のご飯を混ぜるような感覚で、マキエを作ることができるのだ。

 ほかにもシャモジを使うメリットは多い。いくつか挙げてみるなら、安い、軽い、サビない、バッカンやオキアミを傷つけない、それでいて丈夫と、いいことずくめである。 マキエを混ぜる道具としては、マゼラーやマキエプレンダーなどがある。 それらはそれなりに工夫されており、使い勝手もいい。ただ、私にとっては柄が短いほうが使いやすい。また、万が一、波にさらわれたとしても惜しいとは思わないから、シャモジのほうが便利なのである。 また、木製だから自然に分解されるので、環境に与える負荷も少ない。さらに、どんなにカを入れても、バッカンを破ることはない。 とはいえ、シャモジにできないこともある。凍ったオキアミを砕くことに関しては、マゼラーは非常に便利である。冬場は特に重宝する。

 さて、私がマキエをシャモジで混ぜている人を初めて見たのは、今から十五、六年前のことである。 当時、私はチヌを狙って北九州近郊に足繁く通っていたものだが、そこで驚異の釣人に出会った。 その人の釣り方は、まさしく、「遠投釣り」だった。3号の棒ウキを使用して50mくらい大遠投し、そして、そこに寸分違わずマキエを打ち込む。川仕掛けなら50m投げるのは可能だが、マキエをそこまで遠投するのには驚いた。 そして、釣果がまたすごかった。近郊の釣場で40cm以上のチヌをガンガン釣るのである。周りの人は開いたロがふさがらない状態だった。 その釣人の名は高木佐吉さん。チヌの遠投フカセ釣法を編み出した名手である。残念ながらすでに他界されたが、いまだに伝説の人として語り継がれている。 その高木さんが、遠投用のマキエを混ぜる際に、必ずシャモジを使っていたのである。 50mも遠投するとなると、マキエの混ぜ具合は命である。そこにシャモジが一役買っていたわけだ。

 昔はごく一部の釣人の間でしか使われていなかったシャモジだが、ここ数年でかなり普及してさた。釣場でも、よくシャモジでマキエを混ぜている人を見かけるようになった。 まだ使ったことのない人は、一度試してみることをおすすめする。この、なんの変哲もない炊事道具が、きっと手放せなくなることだろう。




一本あればほんとに重宝する。

* 伝説の人である高木佐吉さんの遠投釣法をマスターするにあたって、一番のカギとなるのはマキ工の遠投だった。
 当時、やるとなったら人に負けたくなかった私は、徹底的に遠投の練習をした。どういう方法でやったかというと、公園へ行って、砂場の砂を濡らして、それをひたすらヒシャクで遠くに飛ばす練習をしたのだ。 慣れてくると、砂は固まりで飛ぶようになり、飛距離は一段と伸びた。それからコントロールの練習へと移ったわけだが、この訓練は実に効果があった。今、私が狙ったところヘマキエを飛ばすことができるのは、そのときの練習のおかげといっても過言ではない。
ライトハウス出版のサイトを表示する

このページを閉じる
九州釣り情報は株式会社ルミカが運営しております。 www.lumica.co.jp 株式会社ルミカのサイトを表示する