クロ釣りの技 【 仕掛けで差をつけよう - 小技・裏技編 】
098. コマセは、いつでも竿を出せる準備ができて初めて打つ。 【 丹羽正 】
 渡礁してまず一番にやることは、安全確認と荷物の整理である。特に波やウネリがあるときは、なにはさておき高台に荷物を運ぶこと。それをほったらかしにして、われ先に釣座を確保するなんて行為は厳に慎みたいものだ。

 次になにをやるかというと、タモをセッティングする。タモを組んでおけば、落とし物をしたときもすぐに回収することができる。 それからは、通常コマセ作りやツケエの準備、あるいは仕掛け作りである。その順番はいずれからでも構わないが、仕掛けを作る前に決してコマセを打たないこと。コマセを打つのは、仕掛けを作り、いつでも竿を出せる準備ができてからである。 なぜならば、もしそのコマセにクロが湧いたらどうするか。60pのオナガの姿が見えたらどうするか。 多分そういうことは滅多にないだろうけど、絶対にないとは誰にも言えないのである。 で、焦って仕掛けを作り、慌てふためいて釣座に立ったときには…後の祭り。 いつでも竿を出せる準備さえしておけば、そのオナガを釣ることができたかもしれないのである。少なくとも狙うチャンスはあったはずである。 つまり、『釣場に着いてやることにも順番がある』ということなのだ。

 「そんなこと、どうだっていいじゃん」と言われそうだが、この1匹をものにするしないの差は大きい。 これは、釣りを終える場合にも言える。先に仕掛けを切って竿を仕舞い、それから余ったコマセを海に捨てた。その途端、クロが湧いた・・・。こういう経験をしたことがある人は、案外多いのではなかろうか。 こういうときも、竿を出せる状態にしておけば、何匹かのクロを手にすることができたかもしれないのである。 さらに言えば、タモをセッティングしていなかったばっかりに、せっかく掛けた大物を逃がしてしまったなんて話もときどき耳にする。 これなど初歩的なミスと言うべきだが、B級釣場やC級釣場に上がったときに案外多いミスである。こんなところじゃ良型は釣れないやと油断(それとも諦め?)して、タモを組まないのである。

 要するに、当たり前のことではあるが、われわれは魚を釣るために磯に立つのであって、コマセを撒くために磯に行くわけではないということ。

 また、魚を釣るためには、一分でも二分でもツケエが魚と出会う時間を多くし、なおかつ取り込むまでの準備を万端整えておかねばならないということだ。 たとえば、ビギナーに対して、「手返しが遅いから、もっと早くしたほうがいいよ」と言ったりする。確かにその通りで、手返しが遅いよりは早いほうがいいに決まっている。 ところが、いくら手返しを早くしたところで、ツケエが魚と出会う時間が短いならば意味がない。手返しを早くすることの真の目的は、ツケエが魚と出会う機会を少しでも多くすることなのである。 これを勘違いして、単に一連の動作を早くすればよいと思っている向きがある。まだツケエがついているにもかかわらず、さっさと仕掛けを巻き上げてしまうなんてのがいい例で、これを指して手返しが早いとは決して言わないのである。


B級、C級釣場に上がったときもタモは一番最初にセッティングしておこう。実績のない釣場でも不意の一発はある。自然相手の釣りはだから面白いのである。
ライトハウス出版のサイトを表示する

このページを閉じる
九州釣り情報は株式会社ルミカが運営しております。 www.lumica.co.jp 株式会社ルミカのサイトを表示する