01 オナガの特性

イントロダクション

 繊細な釣りに似合わないハイパワーの持ち主で、最後まで諦めない強烈な引きが上物師を魅了します。
 昼間は潮通しのいい沖磯の中層を群れで回遊し、夜は岩の下や洞窟の中で寝るのが習性ですが、大きく成長した個体は独り立ちして夜遊びを始めることが多くなります。
 春から秋にかけては、水深60mくらいの海底や沖の根周りを回遊し、冬場になると水温低下とともに瀬際まで寄ってきます。この岸寄りしたオナガが一番釣りやすく、自己記録更新のチャンスになります。
 水温が20℃を切るようになると、アオサが岩礁につきはじめるので、オナガはこれを求めて深場から出てくるのです。20℃以下だとエサ盗りの活性は低くなりますが、外洋性のオナガは適応温度域が広く、急激な温度の低下がないかぎり11℃までは活発にエサを追います。16~24℃の間が好適水温とされ、30℃でも活発に動けるタフさを持っています。
 産卵期は2~6月。集団で行動する魚ですから、ある日突然、それまでの居付き場所から一斉にいなくなり、波の穏やかな浅場の産卵場所へと移動します。このとき漁師の仕掛けたタテ網に大量に捕獲されることがあります。

呼び名

 標準和名メジナのことを関西ではグレと呼び、九州ではクロと呼びます。クロは体色から、グレは生息場所が磯のガレ場(瓦礫場)であることから来ました。メジナは「目仁奈」と書きますが、これはブルーで目立つ眼が、体の先端部にあってくっつくように近いため、目が近い魚(ナ=魚をあらわす)→メヂカナ→メジナが由来とされています。メジナと名がつくのはオキナメジナ・メジナ・クロメジナの3種類あり、釣りの対象になるのはメジナとクロメジナです。
 磯の上物釣りは、この2種類を釣るために発達してきました。潮に乗せて仕掛けをサスペンドさせるフカセ釣りが主流ですが、タナが深い場合にはカゴ釣りも一般的です。

● メジナ = クチブトグレ = 地グロ
● クロメジナ = オナガグレ = 尾長グロ

オナガとクチブトの違い

オナガ : 全体的に細長い印象

 回遊性のオナガは水の抵抗を受けにくいスマートな体型をしており、大きく長い尾ビレが、強烈なパワーを生みだします。穏やかな湾内の磯で産卵し、1年で10㎝、2年で15㎝、3年で20㎝、5~7年かけて抱卵サイズの30㎝まで成長します。 クチブトよりも大きくなり、佐多岬で74.8㎝ 5.6kgが、長崎県沖の船釣りで83.3㎝が釣られています。磯周辺で成長し、大きくなるに従って外洋の黒潮に出ていくため、釣果は潮の接岸に大きく影響されます。
 植物性の食物を消化するため、ほかの魚に比べて格段に長い腸を持っている。季節によって水温が変化すると、その時期のエサに合わせて体内の消化酵素を使い分ける。

クチブト : 体型はややズングリ

 黒鉄色からダークグリーンの体色。地磯周りの水深30mよりも浅いところに棲み、離島では数が少なくなります。全長は30~40㎝までで60㎝を超えることはありません。内湾性がつよくゴカイ・フナムシ・岩についた海藻など食べる魚です。生息温度域はオナガよりも低く、まれに北海道で釣れることがあります。動きはやや緩慢で、餌を吸い込んだら、ひと呼吸おいてからゆっくりとウキを引き込んでいきます。

※ 自然交雑のため体形や体色などが中間的な個体も多く、各特徴が明確に出ないことがあります。( 写真提供 : 古川祐治氏 )