〜 スズキ釣り実践編その2 シーバス・マスターをめざせ! 〜

意外とお手軽!! 投げスズキ / 解説 : ケミホタルフィールドスタッフ 中本嗣道

《 中本嗣道 プロフィール 》
● 関西在住のお気楽系投げ釣りスペシャリストであり、投釣倶楽部大阪会長。
● 月刊誌 「 関西の釣り 」 で 「 やめられまへん!! 投げ釣りはっ 」 を21年間にわたって連載中!
● ケミホタルフィールドスタッフ、ダイワ精工フィールドテスター
● SASAMEスペシャルフィールドテスター、ボナンザテクニカルアドバイザー

 僕ら関西圏のキャスターが実践するスズキ釣りといえば、もちろん 「 投げスズキ 」 。この釣りは複雑なテクニックや経験を必要とせず、ポイントへキャストした後はジックリとアタリを待つスタイルだから、老若男女を問わずに誰でもチャレンジできるお手軽な釣りといえる。しかも、うまくすれば80〜90cmを超えるようなビッグワンのゲットも夢ではないときているからたまらない。
 
 
【 シーズン 】

 釣れるサイズや匹数を問わなければオールシーズンが釣期だといっても過言ではない。ただし大型狙いにベストな釣期といえば、産卵のために接岸してくる晩秋 ( 10月下旬 ) から初冬 ( 12月〜1月 ) のいわゆる 「 腹太スズキ 」 の時期だろう。この時期は乗っ込みカレイの釣期と重なることから、ポイント条件に共通点が多いカレイ狙いのゲストとして釣れるスズキの釣果情報を小まめにチェックしておけば、そのエリア、釣り場におけるスポット的なスズキの釣期をつかむための判断材料になってくれる。
 
【 釣り場条件 】

 投げスズキの釣り場としてのキーワードは 「 ベイトの存在 」 だ。あくまでもスズキの基本食性はフィッシュイーターなので、エサとなる小魚が集まる、溜まる、回遊するなどのファクターは、釣り場を選ぶ条件として絶対的にハズせない。
 たとえば、代表的なスズキ釣り場の一つである河口は上流から富養素を含んだ真水の流れ込みと、浅い水深から起因する効率的な光合成によって植物プランクトンが発生・増殖すると、続いてそれを食べる動物プランクトンが発生する。さらに今度は動物プランクトンをエサとするベイトの小魚や小動物が河口エリアへと寄り集まり、最終的にはベイトを捕食するスズキが河口へと回遊行動を起こす。
 この食物連鎖のピラミッドこそが、スズキ釣り場を形成する際の最も大きな条件だといえるだろう。同じようにベイト類が数多く集まる条件を備えた湾岸部やサーフ ( 海岸 ) 、島部、沖堤や温排水口といった釣り場も、投げスズキの好フィールドとなっている。
 
【 ポイント攻略 】

 そんな投げスズキの釣り場で攻めるべきポイントといえば、やはりベイト類が集まる場所になるだろう。ただしスズキには 「 居着き 」 と 「 回遊型 」 の2タイプがあり、居着きは一定のスポットを根城にしてエサを捕り、回遊型はエサを求めて広範囲に移動することから、タイプ別で攻めるポイントにも差異ができる。
 まずは、魚体が黒銀っぽいガンメタル色に輝く居着きタイプは、基本的に湾岸エリアの橋脚&テトラやバース、サーフ沖の砂止めテトラ、海底のシモリといった障害物の周辺に潜んでいることが多い。それらの障害物の際や潮裏の陰、夜間は常夜灯などの光が届く間際といったベイトの集まりやすいスポットの近くで待ち伏せするのが捕食パターンだから、そんなスポットをタイトに攻めてやるのが正解だ。
 逆に白っぽいシルバーメタリックに輝く美しい魚体は、沖から内湾へと入ってくる回遊型のスズキ。このタイプは干満へと動く潮流に乗って捕食回遊を行い、ベイトが群れで移動する海底のカケ上がりや落ち込み、部分、潮流でプランクトンが吹き溜まってベイトが集まる窪み等の海底の変化に沿ったルートで移動を繰り返している。
 スズキの回遊路の途中にある大小のシモリ周辺にも捕食スポットは点在しており、まずはそんな海底の変化をチェックして、その周辺にエサを置いてやるのが回遊型の攻略セオリーだといえるだろう。
 
【 時合い 】

 夜釣りがメインとなる投げスズキの時合いといえば、ベイトの動きが活発化する 「 タマズメ〜日没直後〜午後10時 」 と 「 夜明け前〜早朝 」 といった時間帯がアタリの多いゴールデンタイムだ。さらに、その時間帯に潮変わりのような潮流の大きな動きがリンクすれば、一段とスズキの活性を押し上げてチャンスの輪を広げてくれる。
 また、日によっては潮の動きに敏感に反応するケースもあり、陽の高い日中であってもほんの小さな流れの変化をキッカケに活性が上がるパターンもあるので油断は禁物だ。いずれにしても、有望な時間帯を見逃して無駄に過ごさぬよう、事前に潮見表などで当日の潮の動きをチェックしておきたい。
 
【 タックル&エサ 】

 複数本の置き竿でアタリを待つスタイルの 「 投げスズキ 」 で使用する投げロッドは、機動性に勝る振り出しタイプがベスト。アイテム的にはスズキのパワーに対抗できる30〜33号クラスで、長さは取り込み時に有利な4.25mがお奨めだ。
 リールはアタリの強さに応じて自動的にラインを送り込め、食い込みにアドバンテージを発揮する 「 ドラグフリー 」 が使えるドラグ付きの投げ専リールが適している。そのスプールには夜釣りでも視認性の高い蛍光ナイロンライン4〜5号を巻き、オモリにはアタリが大きく出て食い込みに有利な遊動式テンビンの27〜30号を選びたい。
 そして、夜釣りでスズキからのアクセスを知らせる大事な役目を担う穂先ライトといえば、もちろんルミカの 「 ぎょぎょライトエクセレント 」 で決まりだ。
 仕掛けは全長150〜180cmのフロロ6〜8号に、大物用投げ専バリ15〜18号を結んだシンプルなタイプ。ただし、チモト部分にルミカの 「 ちもとホタル 」 を装着するのがミソである。
 魚の視界は色覚はあるものの視力は弱く、漆黒の海底でボンヤリと映る 「 ちもとホタル 」 の輝きがエサの存在をひと際アピールしてくれる。しかも、取り付け用の黒いゴム管によって細かに光量を調節できるので、好みの明るさでスズキの食い気へアプローチすることが可能である ( これホンマに効きまんねんわ ) 。
 また、テンビンのオモリ部分にもルミカの 「 ピタホタル・ミニ 」 を貼り付けておけば、さらにアプローチ面での効果が倍増する。
 エサには 「 動き 」 があることでスズキへのアピール度が高い 「 アオイソメの房掛け 」 や 「 ユ虫 」 を使用するキャスターが多い。ちなみに、アオイソメの房掛けはハリに刺した虫の長さを一定に切り揃えることでキャスト時に身切れがしづらく、しかも切り口からにじみ出る体液の臭いが集魚効果を発揮するので即効性が高い。ただし、カットしたアオイソメは弱りが早いので、キャスト毎にエサ替え作業が必要となるのがネックだ。
【 釣り方 】

 活性が高いスズキのアタリは大きい場合が多いが、低水温などで活性の低いときはビックリするほど小さなアタリしか出さないケースもある。疑わしい穂先の動きには、迷わずに合わせを入れておきたい。また、大型ほど小さな前アタリが出る傾向が強いので、穂先の動きが小さいからといって、油断はできない。
 合わせの動作は相手に自重があるだけに向こう合わせが効きやすく、小さくシャープな合わせでOKだ。それだけにシッカリとハリを食い込ますことが大事で、アタリの後はドラグフリーでスズキを充分に走らせてから合わせを入れたい。
 スズキといえばジャンプしてエラ洗いという抵抗が常套手段だ。この抵抗をかわして取り込むには、魚体が海面から飛び出さないように穂先を低い位置に構えてラインを巻き取っていく方法がベターだろう。とくに魚が手前にきてからの不意のエラ洗いは、直接バラシの原因につながるから、相手との距離感をシッカリとつかんだ上で、穂先を海中へ突っ込んでスズキのジャンプを抑え込む思いきったロッドコントロールも場合によっては必要だ。
 しかし、夜釣りではスズキとの距離感はつかみにくいもの。そこで、前述したオモリの 「 ピタホタル・ミニ 」 と仕掛けの 「 ちもとホタル 」 の灯りが有効に働いてくれる。暗い海面で輝く ケミホタル の光が魚の位置を教えてくれるので、主導権を握っての対応が可能になる。
 ヘンにノドの奥深くまでハリを呑み込まれているときは要注意。口から出るハリスがスズキの歯に触れてキズ付くケースがあるので、無理な取り込みはハリス切れを起こす原因になる。フィニッシュにはタマ網を使用して、安全確実に行いたい。
 ちなみに、90cm以上にまで育つスズキを取り込むには、最低でも60cm枠のタマ網を用意した方がスムーズに取り込める。また、タマ網の枠にマーカーとして 「 ピタホタル・ミニ 」 を貼っておけば、暗い海面でタマ網の位置が一目瞭然。さらにスムーズな取り込みが可能になるのである。
 
 
 てなことで、ザッと 「 投げスズキ 」 の概要を書き連ねましたが、要は一度でも70〜80cmの大型魚と1本のラインを通して引っ張り合えば、この釣りのオモシロさが理解してもらえるハズです。さあ、都市近郊の湾岸エリアや河口の釣り場で仕掛けを投げれば、次はあなたに80cm、イヤさ90cmオーバーってな大物が釣れるかもしれまへんで
 でっ、そんな大型スズキがみごとに釣れたならば、口から飛び出る決め文句はコレしかおまへんわ 「 やめられまへん! 投げ釣りは 」
 
 




堤防からウキ釣り

 スズキの棲息範囲とクロダイの棲息範囲はオーバーラップしています。スズキの胃の中には、ときおりクロダイの幼魚が入っていますが、大きく成長したクロダイは補食できないためか、同じ場所で泳いでいることがあります。
 スズキの引きには重量級のパワーがあります。しかし、円筒型の体型から想像できるように2号ハリスをブチ切るほどの瞬発力はありません。落ち着いて対処すればクロダイ竿でも取り込めるので、タックルも釣場もクロダイ釣りと同じ感覚で楽しむことができます。ただし、クロダイはベタ底狙いが基本で、夜間でも壁や係留ロープなどの拠り所がないと浮き上がってきません。スズキはベイトの層や明るさによってタナが変化します。餌を探すときは海底から1〜3mのスズキ道を回遊するようですが、漁師さんや水族館の飼育員さんの話だと、普段はサメの泳層を避けて表層1mを泳いでいるそうです。ベイトの泳層と明るさ、水深によってその日のタナを推理しながら釣る必要があります。
【 釣り方 】

 テトラの際に居着いていることが多いので、際スレスレをテトラと平行に流します。もちろん小魚の多い常夜灯の周辺が狙い目になります。堤防の場合は、鈎が壁に引っかからないよう太めのハリスをごく短く使って波止際30〜50cmを流すのが基本です。1mも離れるとヒットしてきません。潮が波止と平行に流れるときにアタってくるので注意してください。
 もしなにかコンストラクションがあるようなら、いったんその向こう側まで遠投してからポイントの上まで引いて来てください。フィッシュイーターは動く物体に反応します。潮と同調して流れるのは木クズか流れ藻だから喰ってきません。
 ポイントの上では竿をあおって餌を浮き上がらせて誘います。潮に乗せてウキを流すときは、ウキにブレーキをかければ浮き上がり、ブレーキを緩めれば沈みます。上下の動きが誘いになるのはもちろん、ラインを張ることでアタリが出やすくなる効果もあります。

アジの泳がせ釣り

【 堤防の泳がせ釣り 】

 現地で釣った小魚を生きたまま餌にして、スズキやヒラメなどのフィッシュイーターを釣り上げるのが泳がせ釣りです。一般的にはどんな釣りでも、冷凍の餌を使うときは、餌が生きているように動かして誘う必要があります。ところが泳がせ釣りだと、餌自体が勝手に動いてくれるので、誘いの手間が不用になります。弱って動きの鈍い小魚を選んで襲いかかるフィッシュイーターに、自由に逃げることのできない生き餌の誘引効果は絶大です。関西ではノマセ釣りと呼び、秋から初冬にかけて盛んになるこの釣り、処分に困る小魚が立派なスズキに変わってくれるので、サビキ釣りに飽きたときにはぜひ挑戦してみてください。
 
● ヤエンと同じ仕掛け
 タックルは普通の磯竿でOKです。ウキを使う、使わないもお好み次第ですが、釣った小魚を活かしておくバケツとブクが必要になります。しかも最初に餌を釣らないことには本命を釣り始めることができません。
 餌はイワシが最高です。ところが釣れる場所が限られていて、取り扱いがややデリケートなため、普通はどこでも簡単に釣れる子アジを使います。子アジが釣れない時期は、売っている生き餌を買うか、または現地で釣れた雑魚をなんでも試してみてください。
 スズキの通り道に餌を泳がせて釣るので、とりあえずスズキが釣れた実績のある場所が狙い目になります。スズキが回遊するタイミングと合えばスズキが釣れるし、本命のスズキが釣れなくても同じ仕掛けのままアオリイカや青物を釣ることができます。
 
● 釣り方
 アジは普段から泳いでいるタナが深いため、餌にされても潜っていく習性があります。釣り糸を下から引っ張る形になるので、鈎は背掛けにするのが一般的ですが、鼻掛けや口掛け、または尾っぽに結び付けてもなんら問題ありません。
 ウキを使って流すときは、アジが根に入れないくらいのタナに設定します。泳いでいくアジがウキを引き込んでアタリと間違わないよう、やや浮力のあるウキを選んでください。
 スズキに出会うとアジは怖がって逃げようとします。ウキや穂先にその動きが出ますが、すぐにアワセてはいけません。ラインを張って待っていると、ウキが消し込んでからスズキの重みが竿に乗ってきます。これでもう大丈夫。鈎がしっかりと刺さるように大きなアワセを入れます。残る問題はエラ洗いだけ。ラインが水平になるように竿を寝かせて、常にテンションをかけたまま、腰ダメで引き寄せてください。







【 磯の泳がせ釣り 】

 ベイトフィッシュが接岸するのは春と秋。ところがそれ以外の時期でも、全然いないわけではなく、条件のよい場所には寄りついています。ベイトがいて、水温が20℃±4程度で、サラシさえあればヒラスズキが釣れるチャンスがあります。そのサラシが発生するのが荒磯。普通ならとても釣りどころではない高波の日が狙い目になります。
 ポイントがグレ釣りの磯と重なっている場合、夜間の活性が高いヒラスズキがよく夜グレのゲストとして釣れてきます。これは生きエビを好むヒラスズキが撒き餌のオキアミに餌付いているからです。グレはオキアミが潮と馴染んで自然に流れないと喰ってきませんが、スズキは仕掛けを操作するときの動きが誘いになって喰ってきます。
 ゲストではなく、狙って釣るならやはり泳がせ釣り。白波が引き通す場所がポイントなので、トラブルの少ない円錐ウキが適しています。根が複雑で小アジを一定のタナにキープする必要があれば2〜3号ですが、アタリを見るだけなら仕掛けを軽くできる3B前後で大丈夫です。障害物がないときはウキなしで泳がせてもいいのですが、目印なしではどこにいるのか判りません。
 磯で餌の小アジを確保することはほとんど不可能です。本命がいる確率が高いほど餌は釣れなくなるので、事前に用意して持ち込む必要があります。荒れたサラシの外でも美味しい魚が釣れるので、少し多めに用意してください。





エビ撒き釣り

 太陽光線が充分届く浅場には植物プランクトンが発生し、それを食べるエビや小魚が棲息しています。昼間は沖で過ごすスズキも夜が近づけば浅場に戻ってきて餌を食べ、また翌朝には沖へと出て行きます。そのスズキを生きエビで足止めし、同じエビを刺し餌にして釣り上げるのがエビ撒き釣りです。スズキが沿岸を回遊する夕方から朝にかけての釣りで、撒き餌と刺し餌が同調しやすい緩い潮が適しています。
 エビは琵琶湖で捕れるシラサエビを使います。シラサエビは夜行性であり、色が白っぽいので暗い海中でもスズキの注意を惹きつけます。価格が安いうえに、大きくて鈎付けも容易ですが、水平に泳ぐ性質があるので、撒き餌にするときは手で握って弱らせてから使います。ただし弱らせ過ぎは厳禁で、動きがわるいと喰いが極端に落ちてしまいます。タナが浅いときは別として、エビの元気を保つためには底撒きカゴを使ってください。カゴを落とし込み、タナの少し上で竿をしゃくるとカゴが開くので、水深のある場所をダイレクトに狙うことができます。
 エビがピンピン動けるように刺し餌は鼻先にチョン掛けにします。脳を刺すと死んでしまうので注意してください。ヒネリのない細軸の鈎を、エビの口あたりにあるツボにスッと刺したら、海底から1〜2ヒロを基準にしてスズキの泳層を探っていきます。大型ほどアタリが小さいので感度のいいウキを使い、ツンツンとウキを引き込む前アタリを見逃さないようにしてください。
 


ズボ釣り

 ウキを使わずに、竿下のポイントをミャクで釣るのが関西のズボ釣りです。船でも堤防でも、仕掛けを手元にズボっと落とし込む釣りをズボ釣りと呼びます。ズボ釣りは沿岸を回遊するスズキを、桟橋やケーソンの上から狙う釣です。壁際を狙うので長い竿は必要ありません。タナを確実に捉えるよう、餌の位置を上下に1ヒロづつ変えて3本並べるのが基本です。
 ポイントをダイレクトに攻めるという意味では関東のヘチ釣りと同じですが、ヘチ釣りは足場が低く、ラインの変化でアタリを取るのに対して、ズボ釣りは足場が高く、竿先でアタリを取るのが違いです。竿を買うときにはできるだけ穂先が柔らく、ガイドが立っていてラインの送り出しがスムーズなものを選んでください。
 餌はアオイソメまたはシラサエビです。エビを撒いてポイントを作ることもありますが、大物狙いにはアオイソメの方が効くようです。
 スズキは大型ほど夜遅くまで活動し、群れが小さく、タナが深い傾向があります。深ダナでヒットするほどラインが長いので、ストラクチャーの中に逃げ込まれるなどして取り込みが難しくなります。
 仕掛けはシンプルです。ズボ釣り専用竿またはイカダ竿に、スズキの締め込みに耐えるベイトリールをセットし、置き竿でアタリを待ってください。突然のヒットに備えて、尻手ベルトと尻手ロープを装着しておきます。早アワセは空バリを引くので我慢。短い竿は大物が喰ったときにタメが効かず、一発でブレイクするおそれがあるのでドラグはフリーにしておきます。
 


特別授業 「 フロロとナイロン 」

【 フロロカーボンの基礎知識 】

フロロカーボンの分子は縦方向だけに整列しています。密度が高いためにピンとした張りがあってリールへの馴染みはあまり良くありません。ナイロンラインに比べると巻きグセが付きやすいのでガイドとの接触抵抗が大きく、キャスト時の飛距離も落ちます。重くて値段もやや高価なためハリスとしての用途が約80%を占めます。表面が緻密で摩擦につよく、根ズレでのラインブレイクもすくないものの、いったん傷が入ればあっさりと破断する傾向があります。
材質にはいくつかの種類がありますが、どれも比重は同じ1.79なので、重さを変えるために肉抜きや混ぜ物をすればやはり強度が低下します。メーカーでは、2〜4種類の材料をブレンドしたり、成形するときに中心に柔らかい材料を入れる、またはコーティングで二層構造にするなどの方法で結束性能や耐衝撃性を向上させています。柔軟になればバックラッシュや、太いハリスを鈎に結んだときのスッポ抜けも減少します。
意外なことにフロロもナイロンも最終的な直線引っ張り強度に大きな違いはありません。ナイロンは大きな負荷がかかったときに30%ほど伸びますが、フロロの伸びは20%以下と小さめです。とくに低負荷での伸び率が低いため、瞬間的な負荷に耐えて、小さなアタリが取りやすいのが特徴です。フロロの吸水率は1%以下であり、水分による強度低下は非常に緩やかです。また、紫外線による劣化もごくわずかなので、高温さえ避ければ10年間は品質を維持できます。ところがこの耐久性のよさが自然環境下での分解の遅さにつながります。使用後のラインを釣り場に放置することは避けてください。
 
● フロロカーボン製ラインは密度が高いから ●
┣ ・ 伸びが少なくて感度がいい
┣ ・ 光の屈折率が水に近いため魚から見えにくい
┣ ・ 吸水しないので低温につよい。水と親和しないため水切れがいい
┣ ・ 比重が重く、仕掛けを目的のタナまで素早く沈めることができる
┣ ・ 寸法精度がよく直径のバラツキが少ない。細くて弱い部分がない
┣ ・ ハリがあるので糸絡みしにくい。スプールに馴染みにくい
┣ ・ 摩擦やスリ傷につよいがいったん傷がつくと一気に切れる
┣ ・ 急な半径の折り曲げで結束強度が落ちやすい
┣ ・ 硬くてクッション性が乏しい
┗ ・ 水を吸わず、着色が難しい
 
 
【 ナイロンラインの基礎知識 】

長い1本の繊維だけでできた糸をモノフィラメントと呼び、何本かの細糸を縒り合わせた編糸をマルチフィラメントと呼びます。ナイロンラインはモノフィラメントですが、顕微鏡的にみると分子の鎖が整列してなくて、短い繊維がたくさん絡み合った構造になっています。1本のラインの中に、まるで毛糸のような隙間があることから、ナイロンラインの様々な特徴が生み出されます。
ナイロンにもいくつかの種類がありますが、どれも分子間の隙間が大きいために吸水しやすい性質を持っています。フッ素やシリカなどの撥水成分で分子の隙間を埋めれば、水分が浸透しにくくなって耐久性が高まり、摩擦が減少して遠投性能も向上します。しかし、強いアワセでラインが伸びれば、コーティングがヒビ割れて水分が浸透します。
ナイロンの比重は1.14です。水に浮かせるために軽くしたり、逆に、波風の影響を少なくするために重くした製品があります。人間から見やすく、または魚から見えにくくするために色素を練り込んだ製品もありますが、異物に混入によってナイロン分子が断絶されるため強度の低下は避けられません。
水分以上に影響を受けるのが紫外線です。紫外線は蛍光灯の光にも含まれているので、たとえ室内といえども充分に注意してください。蛍光灯に晒したらたった半年で本来の強度の50%まで落ちたというレポートもあります。
使用後は真水で洗って日陰で自然乾燥させてから保管します。吸水乾燥の繰り返しも劣化の原因になるため、湿度と温度が一定の場所をお勧めします。冷蔵庫の野菜室は温度があまり変化せず、紫外線も浸入しません。湿気に注意して保管するといいでしょう。
 
● ナイロンラインは分子の結合が緩やかなので ●
┣ ◎ 比重が軽くしなやか
┃ ┣ ・ スプールへの馴染みがよく放出時の抵抗が少ない遠投ができる
┃ ┗ ・ 魚がエサをくわえたときに違和感を与えにくい
┣ ◎ 伸びやすい
┃ ┣ ・ すぐに切れずに耐える
┃ ┣ ・ アワセ時のショックを吸収し、鈎の喰い込みをアシストする
┃ ┣ ・ アタリの伝達性が劣る
┃ ┗ ・ 表面のコーティングに隙間ができて水分が浸入する
┣ ◎ 水を吸う
┃ ┣ ・ コーティング剤を含浸させて撥水性や表面の硬さをUPできる
┃ ┣ ・ 液体が浸み込むから着色できる。比重を変えることも可能
┃ ┣ ・ 寒冷地では浸み込んだ水分が凍結して弱くなる
┃ ┣ ・ 寸法が変化しやすい
┃ ┗ ・ 弾性率が下がり使用中に強度が落ちる
┗ ◎ 表面の硬度が低く傷がつきやすい

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