みち丸乗船記

対馬市で、いや長崎県北地区でトップクラスの知名度と実績を誇る遊漁船「みち丸」。その「みち丸」を縦横に操り、釣り客をポイントに導く波多野船長。久しぶりに彼を訪ねて釣りをすることになった。

 対馬へ出発当日の日、長崎空港は盛夏の名残、またぞろ熱波に覆われ、空は微塵の浮遊物一つもなく晴れ上がっている。しかし、夏の王として君臨していた「積雲」の姿はすでになく青空は限りなく高い。暑さはぶり返したものの、確実に季節は過ぎている。
 長崎空港から対馬空港までのフライトは35分!離陸し上昇飛行を続け、わずかな水平飛行時間のあとすぐ着陸のための降下飛行に移る。40人乗りの高翼双発プロペラ機、天候に恵まれ水平飛行は高度4000メートルを順調に飛行し、揺れることもなく無事対馬空港に着陸した。
 対馬空港ビル玄関を出ると道向うに停車した車の中から手を振り波多野船長、すでに出迎えてくれている。車のドアを開け簡単な挨拶を交わし乗車してスタートしてから、近況を交換し、今日の予定を協議した結果、「新生丸」の小田船長も加わり波多野船長が自ら経営する、無線機の会社事務所で時間調整を行うことになった。自ら公開しているホームページの「みち丸」釣り客の釣果の自慢話に波多野船長の熱弁が冴えわたる。

 対馬周辺の朝鮮海峡、対馬海峡を波多野船長と共にところ狭しと縦横無尽に走り回る遊漁船「みち丸」。GPS、レーダー、魚群探知機といった三種の神器ともいえる最新の機器を搭載しているという。「新生丸」の小田船長も「俺の機械なんか全然かなわない」と舌を巻く。「みち丸」釣り客の釣果の波多野船長の自慢話は、延々3時間にも及んだが聞き手を飽きさせない。

「GPSの誤差はたった30センチしかなかとやけん…」
県外からの釣り客を乗せ「みち丸」を出港させると、耳を研ぎ澄まし更に体全体でも風を読み、目は三種の神器のモニターを凝視し海底の地形を判断しながら、更に潮流を読み、ロープを引き鍛えられた強靭な太い指先が握る操舵桿を繊細な動きで操作し、操船するという。

「俺の嫁の名前からつけたとですよ…」
「みち丸」と優しい名前を奉られてはいるが、波多野船長の脳細胞と流線型の細長い巨大な船体が融合して初めて大きな獰猛な猟犬となる。
「国境線って言うたっちゃ、海の上に線を引いてあるわけなかですけんね…」
対馬は韓国と国境線を境にしており、国境線付近まで出張ることはしばしばだという。

時化の中熟睡中
時化てきたのでポイント移動中、昨夜飲み過ぎたかな?
4人同時ヒット
ポイント移動して一投目、オオ~ット4人同時にヒ―ット
お行儀のよいお方
なかなかお行儀のよいお方です、礼儀正しさが功を奏したか?この後入れ食いに
なんだ?この魚
んん~!!!この魚はなんだ??

話はクライマックス、
身振り手振りを交えた波多野船長の大捕り物の一劇をどうぞ…

「地図に等高線というのがあるやろ…海底の地形図は等深線って言うてモニターに線で高低が表示さるっとですよ。それらを見ながら進路を決めるし魚がおりそうなところもそれでわかっですね」
一固体の人間がモニターを見て「みち丸」の脳細胞と化し、その脳細胞は風、潮流、潮の干満、海底の地形を基に進路を導き出し、その進路の指令を「みち丸」に伝達する。指令を受けた「みち丸」は、獲物を探す猟犬のような、あたかも感情を持っているかのような動きで漁場のポイントを探すべく行動を開始するのだ。
 その日は1時間も走ると、視界の向うに黒い魚が海面を跳ねる。一匹ではない。5~6匹が、それも断続的に…脳細胞の回転数が増してきた。漁場は近い。

「船長!あそこ、あそこ!」
飛び跳ねる黒い魚を見つけ、乗り合わせた釣り客が指差し叫ぶ。「あそこ」の意味は、船首を「あそこ」に向けて、との意味を持っている。
「ばかっ!あそこまで行ったって、行った時にはもうおらんわいっ!」
「みち丸」の脳細胞は、ここで激戦を控えた戦闘最前線場所での司令官にも進化し、釣り客は歩兵であり、敵兵を束縛し捕虜とする前線歩兵部隊となった。

脳細胞の回転数は落ちず、高速回転を保っている。素早く観察した付近の潮の流れ、モニターに写る海底の地形が新たに脳にインプットされ、あそこの黒い魚の行き先を予想し、盛んに計算が行われている。

脳コンピューターが計算をはじき出した。そのはじき出された答えに基づき操舵桿を握った手が船首をゆっくりと旋回させ、司令官と化した波多野船長は兵である釣り客に断固として命令する。
「いいか、ここら付近で待つけ~!指示を出すから…出したら指示通りに行動せえよ!」

「みち丸」は敵兵の侵攻を息を殺して待ち伏せする防衛軍のごとく、低速で遊弋し牙を研ぎ獰猛な猟犬として付近の哨戒も怠らない。脳細胞はモニターと海面を交互に、矢が突き刺さるがごとく鋭い目で一瞥を繰り返し、体は海面をかすめるわずかな風向をも感じ取り見逃さない。

「今やっ!11時の方向に竿を打てっ!」
またもや脳コンピューターがフル稼働し正確無比な計算結果がはじき出されて、その計算結果に信念をかけた司令官は戦闘行為の開始を宣言した。

「どこに打ってるんや!11時の方向はこっちやないけ~!言うたとおりにせんか!こっちに早よ打たんか!」
竿が打たれると、海流、海底の地形を基にして肉眼では見ることができない敵兵の予想進路に「みち丸」を併行させなければならない。海面に向けられた竿、三種の神器のモニター交互に目をやり、わが兵が敵兵を絡めとろうとしている戦闘行為の奮闘に「みち丸」を加勢させるべく、脳コンピューターと合体した司令官は「みち丸」操船に全神経を集中させる。

「ヒット~!」
興奮している様子の掛け声が船上で声高らかに響きわたった。司令官は操舵室よりわが兵の戦場である甲板、竿の先の海面双方を一瞬の目で確認する。糸の引き具合、竿を持つわが兵の体重のかけ具合を観察すると、敵兵の図体の体長、質量がとっさに脳裏に浮かびあがる。

「大物や~!引け、ひけ~っ!」
必死に格闘しているわが兵の後姿に対して、督励ともいえる叱咤激励を繰り出すものの、兵たちの戦闘行動はひどく緩慢に見える。

「引かんか!もっと回せ~!」
わが兵の「引く、回す」の連携行動はどうにか軌道に乗りつつあるが、海面から突き出ている糸の先はピンと張りつめ右、左と瞬間的な蛇行を繰り返しながら、なお強大な余力をもって確実に前方への逃亡を企てている。「みち丸」は脳コンピューターを駆動させ、わが兵の的確な敵兵捕獲作戦を支援すべく敵の逃亡に船首を合わせる。

まんまと罠にかかり、首(口)に縄をかけられた敵兵であったが、余力はまだ強大である。「網呑舟の魚を漏らす」のたとえもある。敵兵と「みち丸」の縄の力関係の無理な態勢により、つい縄が切断され逃亡を許してしまうとも限らない。海面から突き出た縄の先を視界に捕らえたまま、手中にある操舵桿は繊細で微妙な動きを繰り返す。

わが軍兵の必死な捕獲作戦行動と「みち丸」の作戦支援活動により、首に縄をかけられた敵兵と縄の源である「みち丸」の距離がみるみる縮まってきた。依然として形相を鬼神と化した兵の「引く、回す」の作戦行動は続いているが、司令官としての判断は最後の詰めを迎えていることを悟っていた。行動を続ける兵に合流すべく司令官は甲板に降り立った。

「よ~し、もっと引け!もうちょっと引いたところで力まかせに甲板に引き上げるぞ!」
司令官も兵も形相を崩さず緊張の面持ちが全身からふつふつと沸き立っている。
最後の詰め。「みち丸」船腹まで、兵が持ち合わせるすべての力で手繰り寄せられているものの、「まだ捕まってなるものか」と浅い水中をなおも右へ左へと動き回り暴れ狂って抵抗する黒く太く長い敵兵。

「あがった~っ!」
ヒットしてから格闘すること1時間。モリを打ち敵兵の体力を減少させてからやっとのことで甲板に引き上げた。他の同乗者からもいっせいに歓声の声が上がる。捕獲作戦行動者は、力も、精魂も尽き果て頭をたれ、甲板に座り込んでしまった。司令官はその座り込んでしまった捕獲作戦行動者に近づき、そっと肩に手を乗せ、声を掛けた。

「よかったね~!こげな大物はめったに揚らんとばい…よ~頑張った!」
作戦は成功裏に完了し、現実に戻った。仕留めた敵兵は大物のクロマグロであった。
声を掛ける司令官は、もう司令官の顔ではなく陽にやけて潮に揉まれた温和で満面の笑みを浮かべた遊漁船「みち丸」の波多野船長の顔であった。

「おっと~!講談を聞きおるごたるね…」
遊漁船「新生丸」の小田船長も口をあんぐりし、感嘆する。

鰹です
見事な鰹です。魚の動きを読むのは流石でした。
最初のヒット

今回の遠征で最初のヒットは、5㎏のヒラマサでしたおめでとうございます。
岩佐先生キハダ

あれ!!なんか引きがちがうぞ・・・揚がってきたのはキハダメジでした。
岩佐先生クエ

前日のヒラメパ-ティ-の席で「船長明日はクエを釣ってクエ鍋をしよう」(誰かが余計なプレッシャ-を・・・)
朝一番、一投目で岩佐先生が見事クエをゲットしてくれました。感謝、感謝

波多野船長は、自ら経営する無線機の会社事務所の中。話がひと段落ついたところで、コーヒーを一口含んで、笑顔で得意気に…更に話を続ける。
「釣りんことをしゃべらしたら、おりゃあ1日じゅうでもしゃべっとるけんね…」

「海上でマグロのバンバン飛び跳ぬっとですけど、喰いつくヤツか遊んでいて喰いつかんヤツか、一瞬で見分けんばでけんとです。いくらようけおったっちゃ喰わんときは絶対喰わんですけんね。喰わんとき、マグロの進路に船をもっていけば、船の下をドラム缶のような図体をしたヤツがウジャウジャ通り過ぎっとが見ゆっとですよ。それを『ホラホラ、下を見てみろ』って釣り客に見せれば、お客さんは目ん玉ひんむいて歓声あげおっです」

「そがんお客さんばっかいに釣らせんちゃ、アナタが我が一人で出港してバリバリ釣り上げて、市場に出荷して金にしたらもっと儲かるとじゃなかとね?」
パチンコをする人が勝った時の話しかせず勝ってばかりいるような話と錯覚して、聞くと

「そりゃあ、もう漁師たい!おりゃあ、お客さんに釣らせることはさせても、自分で安定的に釣り上げて金に換え生活費を稼ぐ漁師の仕事はし~きらん!」と一喝。

「お客さんに釣ってもろて、そのお客さんの喜ぶ顔を見っとがたまらんとですよ。大物を釣り上げる時は、性格を一変させ『はよ引け~!』なんて、おうごって言うて釣らすっとですけど、釣り上げてしまえばお客さんからは『船長、ありがとうございました!』って指導のお礼を言わるっとですよ…『船長は釣りの仕方によって性格が変わりますね』っても言われますね…」と、笑顔で満足げな波多野船長。

「お客さんは日本全国から来てもらうけんね…一番遠いところは東北の岩手県…いろんな人との出会いでいろんなドラマに会うとですよ…それも楽しみですね。漁師では、こうはいかん」

「マグロは、テレビで青森県の大間をよ~写しおっですけど、大間のマグロはこの対馬のヤツが大間に行きおっとですけんね…大間は冬のちょっとした間しか釣れんですけど、対馬は年中釣るっとです!太さは?って…いっちょん変わらんですよ。太かです。現に太さ日本一のマグロは対馬海域で隣の壱岐の人が揚げとっとです」

話は尽きず聞いた講釈の内容はこんなものではなかったが、話の全部の内容は多すぎて記憶にとどまってはいない。いずれにしろ、つぎにまたいつ対馬に来れるかは未定。それまでは、波多野さんのホームページを拝見し、間接的な出会いを続けていこうと思う。

諫早市 LPガス設備講師 田中某記す


マリン対馬

11/1岩佐先生が釣ったクエを厳原のスナック「マリン対馬」(みち丸、春漁丸お勧め)のご好意により対馬の郷土料理、いりやき(鍋)で対馬遠征の打ち上げパ-ティ-、大いに盛り上がり、美味しくいただきました。
奥村パパ

3日間の対馬親子釣行、最終日にやっと凪になり本命ポイントに、良型を連発、まだまだ息子には負けられません。
奥村Jr.

朝一番から絶好調、ど-だ、親父~
竹市さん10㎏オ-バ-

キャスティングにこだわり続けた 竹市さんやりました、トップで10㎏オ-バ-の見事なヒラマサゲットです。
加賀さん

大阪より遠征の野本さんご一行、最初のヒットは 加賀ちゃんでした。
吉尾さん見事

野本さん、加賀さんが苦戦する中、吉尾さん意地の7㎏オ-バ-の初ヒラマサゲットです。
野本さんビッグなクエ

潮も止まり、誰かが冗談混じりに、高級魚のクエがこないかな~ 言った直後、お見事でした。