06 スズキ釣り実践編その4

エビ撒き釣り

 太陽光線が充分届く浅場には植物プランクトンが発生し、それを食べるエビや小魚が棲息しています。昼間は沖で過ごすスズキも夜が近づけば浅場に戻ってきて餌を食べ、また翌朝には沖へと出て行きます。そのスズキを生きエビで足止めし、同じエビを刺し餌にして釣り上げるのがエビ撒き釣りです。スズキが沿岸を回遊する夕方から朝にかけての釣りで、撒き餌と刺し餌が同調しやすい緩い潮が適しています。
 エビは琵琶湖で捕れるシラサエビを使います。シラサエビは夜行性であり、色が白っぽいので暗い海中でもスズキの注意を惹きつけます。価格が安いうえに、大きくて鈎付けも容易ですが、水平に泳ぐ性質があるので、撒き餌にするときは手で握って弱らせてから使います。ただし弱らせ過ぎは厳禁で、動きがわるいと喰いが極端に落ちてしまいます。タナが浅いときは別として、エビの元気を保つためには底撒きカゴを使ってください。カゴを落とし込み、タナの少し上で竿をしゃくるとカゴが開くので、水深のある場所をダイレクトに狙うことができます。
 エビがピンピン動けるように刺し餌は鼻先にチョン掛けにします。脳を刺すと死んでしまうので注意してください。ヒネリのない細軸の鈎を、エビの口あたりにあるツボにスッと刺したら、海底から1~2ヒロを基準にしてスズキの泳層を探っていきます。大型ほどアタリが小さいので感度のいいウキを使い、ツンツンとウキを引き込む前アタリを見逃さないようにしてください。


ケミホタル - 夜釣りはこれがないと始まらない

ズボ釣り

 ウキを使わずに、竿下のポイントをミャクで釣るのが関西のズボ釣りです。船でも堤防でも、仕掛けを手元にズボっと落とし込む釣りをズボ釣りと呼びます。ズボ釣りは沿岸を回遊するスズキを、桟橋やケーソンの上から狙う釣です。壁際を狙うので長い竿は必要ありません。タナを確実に捉えるよう、餌の位置を上下に1ヒロづつ変えて3本並べるのが基本です。
 ポイントをダイレクトに攻めるという意味では関東のヘチ釣りと同じですが、ヘチ釣りは足場が低く、ラインの変化でアタリを取るのに対して、ズボ釣りは足場が高く、竿先でアタリを取るのが違いです。竿を買うときにはできるだけ穂先が柔らく、ガイドが立っていてラインの送り出しがスムーズなものを選んでください。
 餌はアオイソメまたはシラサエビです。エビを撒いてポイントを作ることもありますが、大物狙いにはアオイソメの方が効くようです。
 スズキは大型ほど夜遅くまで活動し、群れが小さく、タナが深い傾向があります。深ダナでヒットするほどラインが長いので、ストラクチャーの中に逃げ込まれるなどして取り込みが難しくなります。
 仕掛けはシンプルです。ズボ釣り専用竿またはイカダ竿に、スズキの締め込みに耐えるベイトリールをセットし、置き竿でアタリを待ってください。突然のヒットに備えて、尻手ベルトと尻手ロープを装着しておきます。早アワセは空バリを引くので我慢。短い竿は大物が喰ったときにタメが効かず、一発でブレイクするおそれがあるのでドラグはフリーにしておきます。

置竿一番 - アタリを待つときは置竿一番が便利。大事な竿を傷つけることなく、じっくりと狙える。

特別授業:フロロとナイロン

フロロカーボンの基礎知識

フロロカーボンの分子は縦方向だけに整列しています。密度が高いためにピンとした張りがあってリールへの馴染みはあまり良くありません。ナイロンラインに比べると巻きグセが付きやすいのでガイドとの接触抵抗が大きく、キャスト時の飛距離も落ちます。重くて値段もやや高価なためハリスとしての用途が約80%を占めます。表面が緻密で摩擦につよく、根ズレでのラインブレイクもすくないものの、いったん傷が入ればあっさりと破断する傾向があります。
材質にはいくつかの種類がありますが、どれも比重は同じ1.79なので、重さを変えるために肉抜きや混ぜ物をすればやはり強度が低下します。メーカーでは、2~4種類の材料をブレンドしたり、成形するときに中心に柔らかい材料を入れる、またはコーティングで二層構造にするなどの方法で結束性能や耐衝撃性を向上させています。柔軟になればバックラッシュや、太いハリスを鈎に結んだときのスッポ抜けも減少します。
意外なことにフロロもナイロンも最終的な直線引っ張り強度に大きな違いはありません。ナイロンは大きな負荷がかかったときに30%ほど伸びますが、フロロの伸びは20%以下と小さめです。とくに低負荷での伸び率が低いため、瞬間的な負荷に耐えて、小さなアタリが取りやすいのが特徴です。フロロの吸水率は1%以下であり、水分による強度低下は非常に緩やかです。また、紫外線による劣化もごくわずかなので、高温さえ避ければ10年間は品質を維持できます。ところがこの耐久性のよさが自然環境下での分解の遅さにつながります。使用後のラインを釣り場に放置することは避けてください。

フロロカーボン製ラインは
密度が高いから

  • 伸びが少なくて感度がいい
  • 光の屈折率が水に近いため魚から見えにくい
  • 吸水しないので低温につよい。水と親和しないため水切れがいい
  • 比重が重く、仕掛けを目的のタナまで素早く沈めることができる
  • 寸法精度がよく直径のバラツキが少ない。細くて弱い部分がない
  • ハリがあるので糸絡みしにくい。スプールに馴染みにくい
  • 摩擦やスリ傷につよいがいったん傷がつくと一気に切れる
  • 急な半径の折り曲げで結束強度が落ちやすい
  • 硬くてクッション性が乏しい
  • 水を吸わず、着色が難しい

ナイロンラインの基礎知識

長い1本の繊維だけでできた糸をモノフィラメントと呼び、何本かの細糸を縒り合わせた編糸をマルチフィラメントと呼びます。ナイロンラインはモノフィラメントですが、顕微鏡的にみると分子の鎖が整列してなくて、短い繊維がたくさん絡み合った構造になっています。1本のラインの中に、まるで毛糸のような隙間があることから、ナイロンラインの様々な特徴が生み出されます。
ナイロンにもいくつかの種類がありますが、どれも分子間の隙間が大きいために吸水しやすい性質を持っています。フッ素やシリカなどの撥水成分で分子の隙間を埋めれば、水分が浸透しにくくなって耐久性が高まり、摩擦が減少して遠投性能も向上します。しかし、強いアワセでラインが伸びれば、コーティングがヒビ割れて水分が浸透します。
ナイロンの比重は1.14です。水に浮かせるために軽くしたり、逆に、波風の影響を少なくするために重くした製品があります。人間から見やすく、または魚から見えにくくするために色素を練り込んだ製品もありますが、異物に混入によってナイロン分子が断絶されるため強度の低下は避けられません。
水分以上に影響を受けるのが紫外線です。紫外線は蛍光灯の光にも含まれているので、たとえ室内といえども充分に注意してください。蛍光灯に晒したらたった半年で本来の強度の50%まで落ちたというレポートもあります。
使用後は真水で洗って日陰で自然乾燥させてから保管します。吸水乾燥の繰り返しも劣化の原因になるため、湿度と温度が一定の場所をお勧めします。冷蔵庫の野菜室は温度があまり変化せず、紫外線も浸入しません。湿気に注意して保管するといいでしょう。

ナイロンラインは
分子の結合が緩やかなので

◎ 比重が軽くしなやか
  • スプールへの馴染みがよく放出時の抵抗が少ない遠投ができる
  • 魚がエサをくわえたときに違和感を与えにくい
◎ 伸びやすい
  • すぐに切れずに耐える
  • アワセ時のショックを吸収し、鈎の喰い込みをアシストする
  • アタリの伝達性が劣る
  • 表面のコーティングに隙間ができて水分が浸入する
◎ 水を吸う
  • コーティング剤を含浸させて撥水性や表面の硬さをUPできる
  • 液体が浸み込むから着色できる。比重を変えることも可能
  • 寒冷地では浸み込んだ水分が凍結して弱くなる
  • 寸法が変化しやすい
  • 弾性率が下がり使用中に強度が落ちる
◎ 表面の硬度が低く傷がつきやすい