第8回 実践編② アタリの取り方と合わせ

 イシダイ釣りの醍醐味は、なんといっても独特なアタリにあります。最初は軽くコツンと響き、それが段々と大きくなって最後は竿毎ひったくるように走る・・・この瞬間にイシダイ釣りのすべてがあると言っても過言ではありません。しかし、慣れないうちはアタリはあってもなかなかイシダイが走るまでには至らず、ここがイシダイ釣りの難しいところでもあります。今回は、どうしたら最後の走りまで到達できるのか、そこの部分に迫ってみたいと思います。

イシダイのアタリとは

 イシダイの捕食は、まずエサを見つけたら口先で軽くつつき、異常がないことを確かめたら徐々に攻撃を加え、最後にエサをくわえて反転する―――これが一連の動作といわれています。私自身、過去に何度も潜ってイシダイの捕食活動を観察してきましたが、エサの硬軟によって多少の違いはありますが、ほぼこの通りと思って差し支えないでしょう。

 これをアタリとして記述すると、前アタリ→押さえ込み→本アタリ、となり、俗にイシダイの3段引きといわれています。しかし、実際には前アタリと押さえ込みまでは多いものの、本アタリまでにはなかなか至りません。まあ、そこがイシダイ釣りのおもしろいところでもあるのですが、では、なぜエサを途中で離してしまうのでしょう。おそらく①エサを食っているうちに異状を察知した、②反転する(走る)スペースがなかった、③ハリからエサが外れてしまった、この3つが主な原因と考えられます。

 そこで対処法ですが、①の場合は何度か打ち返しをしてエサを食わせてやる、マキエで食い気を促す、などがあります。②のケースでは次の打ち返しのときにタナを変えてやる(一般的にはやや浅めにする)。そして③ではハリに装着するエサの数を増減したり、付け方を工夫する(輪ゴムで縛る等)があります。

 もちろん、これらの対処法はあくまで一般的であって、必ずしも効果があるとは断言できませんが、どうしても本アタリまで至らない場合は試してみるといいでしょう。

送り込み

 次に、手持ちのイシダイ釣りでもっとも大切な、送り込みについて説明します。送り込みとはイシダイのアタリに対して竿先を下げたり、時にはラインを送ったりして本アタリを促す行程を言います。送り込みのコツは、イシダイの押さえ込みに対して必要以上に送らないことで、ある程度のテンションをかけてやることが大切です。言葉ではなかなか言い表せませんが、たとえば10の力で押さえ込んだら8を送り、残りの2はテンションとして使います。よく初心者の方でアタリに驚いて10に対して10を送っているケースを見かけますが、それではいつまで経っても本アタリにつながらず、結局はエサの食い逃げとなってしまいます。

 ただし、大型になると最初の前アタリ後、一気に竿を絞り込んでくることもありますので、送り込みには万全の注意が必要です。

① 手持ちの送り込みでは竿を揺らさないように

② アタリに対して竿先を下げながらついていく

③ ある程度まで送ったら止めて本アタリを待つ

④ これは竿先を下げるのではなく、竿全体を伸ばす送り込み

⑤ 両手がほぼいっぱいまで伸びきったら送り込みを止める

⑥ 合わせは竿を跳ね上げてもいいが、引き抜きだと確実にフッキングする

合わせ

 さて、ようやく突っ走ってくれたイシダイに対する合わせですが、ほとんどの人は竿の大きく跳ね上げてフッキングさせます。イシダイの強靭なアゴにハリ先を貫通させるには中途半端な合わせでは通用しません。が、その合わせ方も時と場合によりけりで、完全に魚が走った場合まで待つと軽い合わせでも十分ハリを貫通させることができます。とくに「引き抜き合わせ」と呼ばれる方法では、竿をいったん伸びきった状態までもっていき、そらから手前に直線状に引き抜くためハリ掛かりはほほ完璧で、途中でバレることもほとんどありません。反対に跳ね上げ式の合わせは、どうしても早合わせにつながるため、締め込みの途中でポロリ・・・なんてことも多いようです。

釣果アップのコツ

 イシダイ釣りで大切なのは、まず最初の1枚を仕留めることです。そうすればアタリや送り込み、タナの取り方、合わせなど、それまでモヤモヤしていた疑問が一気に晴れるでしょう。では、どうすればイシダイとの距離が縮まるのか。その答えは「ヘタな小細工はするな」ということです。私は今まで数十人の方にイシダイ釣りを最初から教えてきましたが、その中から得た答えのひとつに「イシダイが釣れるまで竿に触るな」というのがあります。簡単に言えば置き竿で本アタリを待つということで、置き竿にすれば前アタリから押さえ込み、本アタリまでを自分の目で確認できます。そして、数枚を仕留めて自分に自信がついてから手持ちに切り換えるとアタリに対してどうすればいいのかを判断できるようになり、おのずと釣果はアップします。九州では手持ちが主流で、置き竿は邪道という風潮が残っているようですが、まずはイシダイ釣りの基本である置き竿でイロハを体得し、それから手持ちの攻めの釣りに切り換えていっても遅くはありません。

まだ1枚も釣っていないなら、まずは置き竿で挑戦しよう。必ず勉強になるはずだ