05 マダイ釣り実践編 その3

サーフ&イカの泳がせ釣り

 別名を「 イカ流し 」とも「 イカの落とし込み 」ともいい、マダイのほかアラ( クエ )やヒラメを狙える人気釣法です。春から秋にかけてイカを常食しているマダイを、スパンカーを使って船の向きを一定に保ったまま、イカの集合場所を狙って流し釣りします。
 海底に対して一定の場所を保てるピンポイント釣法ですが、船首の喫水が浅いと風で船が廻ってしまうため、風立ちのいい船でないと出来ません。( シーアンカーを使えば、潮流とともに流して広い範囲を探ることも可能 )
 エサは前日のうちに、箸の長さくらいのイカを釣って船のイケスに入れておくか、または当日の夜、夜焚きでイカを釣ると同時に、型の小さいイカを餌にして泳がせ釣りします。
 イカは弱らないように素早くミミとロートに2本の鈎を刺し、いったん海底まで降ろして底をとったら、オモリが底から10cmくらい浮く位置でキープします。このまま流してもイカが集まっているのは開けた岩場なので根掛かりの心配はありません。
 ただし、エサのイカがヤリイカとスルメイカではタナの取り方を変える必要があります。ヤリイカは水平に泳ぐので問題ありませんが、スルメイカは下に潜ろうとするので、タナをやや上に設定してください。
 冬はアジやイワシの群れている場所で釣ります。上層でブリやヒラマサが小魚を喰い散らすような場所には、弱って落ちてくる小魚を狙ってマダイが居付いています。したがって冬場はイワシやアジをエサにしますが、アジはイワシよりも喰いが劣り、死んで動かない冷凍物を使うと釣果はさらに1/10に落ちてしまいます。冬場は活きエビも特効エサですが入手が難しいのが難点です。


スパンカーとは日本で発明された船尾の縦帆のことで、船を常に風上に向ける効果がある。船は風の抵抗を受けて後退するが、エンジンを微速前進にすればほぼ一定の場所をキープすることが可能だ。

 夜のサーフはドカンと一発大物のチャンス!砂浜が岩場と隣接しているような場所ではサーフにチャレンジしてみましょう。エサはイソメかユムシ。エサの上15cmには ルミコ か、超小型の ちもとホタル をセットしてください。

ぎょぎょライト - 竿先の動きもしっかりチェック

ウキ流し釣り

 ウキ流しは長崎県沖のアジ曽根で始まったとされます。ズボ釣りが、胴付き仕掛けで船の直下を狙うのに対して、ウキ流しはエンジンを止めてアンカーを打ち、潮上からポイントに向かってカゴを流していく釣りです。
 ウキを使ってタナを一定にキープしたまま200~300mもの長い距離を探ることができるうえ、カゴから先がフカセになるため、仕掛けが馴染んで喰いが良いのが特徴ですが、反面、ちょうどいい速さの潮に出会わないと釣果が得づらいといった難しさもあります。
 漁師さんに聞いてみると、マダイは泡を含んだような音は好む( 註 )ものの、金属質の音は嫌う傾向があるそうで、エンジンを動かしたままで釣ると大物は釣れにくく、シーアンカーでエンジンを止めたときには大ダイが釣れると言います。この点からも、獲物に余計なストレスを与えないウキ流しは理にかなった釣法だといえます。

註:釣鐘型のナマリを海に打ち込んで集魚する紀州のドンブリ釣り( 房総でいうボコ釣り )や、ナマリの代わりに鉄棒を投げ込むタタキ網漁がある。

1mもの大ウキが消し込む!

 マキ餌もツケ餌も適度に沈んでくれる沖アミの生を使います。ツケ餌はなるべく大きなものを選び、エサが小さいときには2匹、3匹と重ねて刺して目立たせてください。
 電動リールをフリーにしてハリスの先端からエダスへと順番に海に入れていき、全体が潮に馴染んだ頃にカゴを沈めます。ウキはカゴを沈める前に入れておいても大丈夫です。いきなり全部を投げ込んでしまうと仕掛けが絡んだり、サシ餌との同調が難しくなるので注意してください。もし白くて見えやすいボイルを使うときには一度海中を覗いて仕掛けの流れ具合を確認するといいでしょう。
 カゴがタナまで届いたらウキが直立するので、ラインが出て行く抵抗をなくすため、竿先を道糸の方向に向けます。ここぞと思う場所まで流れたら電動リールをストップにして糸フケを取り、竿をあおってカゴの餌を出してください。マダイは動くものに反応するので、これが誘いになってアタリが出ることが多いのです。アタリがなければ潮に乗せてさらに流します。
 ウキが消し込んだらヒットです!道糸のフケや伸びを見越して大きくアワセを入れ、ロースピードで仕掛けを巻き上げてください。ポイントが近ければ手巻きで魚の感触を確かめながら巻くといいでしょう。
 このとき追い喰いを期待してあまりゆっくり巻くと、鈎を呑み込んでいない限り外れやすいので注意してください。手元まできたらウキとカゴを船に引き上げ、手で仕掛けをたぐり寄せます。ピンク色の魚体が見えたら、足元の道糸けを絡ませないように注意してタモで慎重に取り込んでください。慣れないうちは船長にお願いしたほうが確実です。
 ウキ流しでは、マダイはもちろんイサキやアマダイ、メジナもヒットしてきます。地域によって規制がありアンカーを打てない場所や、ウキ流しそのものが禁止されていることがあるので事前に釣り船にお問い合わせください。

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揺るぎなき王道コマセマダイ
解説:岡本光央

 タイラバ、シャクリ、喰わせサビキ。媒体ではコマセ無し釣法がクローズアップされがちの関東マダイ釣り。しかし、現実に釣り人口と船宿の数を見れば、関東のマダイ、イコールコマセ釣りは揺ぎ無い事実である。
 ポリビシ( 若しくはステンカン )にオキアミ( またはアミ )コマセ、オキアミ餌の、いわゆる「 コマセダイ釣法 」は昭和50年代に神奈川県真鶴で発祥・確立された。
 表向きは船長の指示棚を厳守していれば高確率でマダイを食わせる事が出来、適正なタックル選択とセッティング( ドラグ調整 )が成されていれば、入門者が大ダイを仕留める事も夢ではない。それまでは「 経験を積んだ釣人が最後に挑戦する究極のターゲット 」とされて来たマダイが簡単に( やや語弊はあるが )釣れるようになって人気が爆発。各メーカーが競って専用竿をリリースした事もブームに拍車を掛け、昭和の終りには神奈川から静岡全域まで普及した。
 基本タックルは胴調子コマセダイ用ロッドに小型電動リール。地域や船によってパーツのサイズは異なるが、ポリビシ、片天、クッションゴムの組み合わせは共通である。鈎は通常1本だが、近年は2本鈎を勧める船長もいる。理由は「 餌が目立つ 」「 片方が餌取りにやられても可能性がある 」とストレート?な物もあれば、「 鈎やサルカンが抵抗となり、1本鈎と違う流れ方、動きをするのが良い 」と理論的な意見もある。チモトに配するビーズやパイプも、発光による単純な集魚効果だけでなく、2本鈎同様の意味合いも含まれる。

 発光アイテムは深場や濁り潮に有効なギミックであり、この釣りでは「 ケミブライトフック 」「 ルミコ 」が活躍する。ルミコに付属しているブラックパイプ を活用すれば、潮の明暗、餌取りの多少で発光部分を調整可能。極端に餌取りが多いなら、全てをマスクして ルミコ を「 発光体 」ではなく、「 抵抗 」としてのみ活用する方法もアリだ。
 釣場によって海面、若しくは海底からの棚指示が出る。海底からの場合はビシが着底したら糸フケを取り、海面からの場合は指示棚+仕掛分まで落とし込む。ここからラインマークでハリス長を3等分( 10mなら3m・6m・指示棚という具合 )し、コマセを振りながら棚に合わせ、キーパーに預ける。
 3~4分経過したらロッドをキーパーから外し、ストローク分を大きく誘い上げる。これを2回繰り返して巻上~再投入となるが、餌取りがあれば棚取り直後でも即巻き上げる。シグナル無しでも怪しい時は上げる位のマメさが欲しい。
 高活性時は一気にロッドを絞るが、低活性時はゆっくりとロッドを誘い上げ、喰い込ませる事も重要だ。ヤリトリは魚が強い時には耐え、耐え切れない時はドラグでプレッシャーを与えつつ、最小限のラインをリリースする。魚が止まって重くなったらどんどん巻くが、引っ張り合いは絶対にしない事。ポンピングはロッドを倒す速さと巻上げ速度をシンクロさせ、常に一定のテンションを維持する。自信がない場合、釣趣は落ちるが「 ロッド仰角を維持し、魚の抵抗なりに一定ペースで巻く 」手持ちウインチスタイルが失敗は少ない。

岡本光央

● ケミホタルフィールドスタッフ
埼玉県川口市在住。ディープマスターの異名を持つ我が国深海釣りの第一人者。趣味は料理と魚体写真の収集。執筆歴20年を超すフィッシングライターでもある。

ケミブライトフック - 集魚効果はもちろんのこと、暗い場所での釣りでも危険な鈎先が見やすく安全です。
ルミコ - 付属のブラックパイプを活用すれば発光部分を調整できます。