03 エサの種類

エサの種類と特徴

 クロダイは雑食性のうえに棲息範囲が広いため、エサの種類が非常に多いのが特徴です。本来釣りエサは、対象魚と同じ場所で捕れて、対象魚がその時期に喰い盛っているエサが最良だといえます。
 たとえば乗っ込みの初期、沖から来たばかりのクロダイはまだダンゴなどの人工的なエサに慣れていません。この時期は自然界で食べ慣れているエサを使うと効果があります。ところが、魚種によって漁獲量に周期的な変動があるように、エサの種類によっては資源量が大きく変動することがあります。
 また、工場排水や栄養塩類の影響を受けやすい河口域では、特定のエサ生物が減少し、クロダイの補食対象から外れてしまうことがあります。その年々で嗜好が変わる可能性も視野に入れて、ヒットエサを探し出してください。
 夏の昼間はエサ盗りとの戦いです。人気釣場にはエサ盗りの雑魚が居着いていて、撒き餌どころか、釣人の姿を見ただけで活性に火が点き、オキアミはものの3秒も持ちません。辛抱していれば、急に喰いが止まって本命が釣れることもありますが、撒き餌ワークでかわすことができない足の早い雑魚がいるときは、カニやイガイのような硬いエサを使ってしのぎます。
 クロダイは海には存在しないはずのカイコやスイカにまで餌付くので、コーンやグリーンピース、サツマイモなど、雑魚は食わない植物性のエサを使うこともできます。または、雑魚の少ない夜釣りに切り替えるとか、いきなり底まで届くバクダン釣りに切り替えるなどの対策もあります。

イソギンチャク

 明治43年発行の日本水産捕採誌‐釣漁業編には、「 イソギンチャクはクロダイがもっとも好むエサである 」と記されています。 昭和50年代になって、オキアミが使用され始めるまでは、イソギンチャクが特効エサだったのかも知れません。
 現代、釣り餌として販売されているのは砂泥地に分布するウメボシイソギンチャク科の一種で、九州の有明海周辺では食用にされています。シーズンは初夏。パチンコ玉くらいの大きさなら一匹がけで、大きすぎるようなら切って使います。このとき出る腹ワタは大好物なので捨ててはいけません。

練り餌

 鈎持ちがいいのでエサ盗り対策に用いられますが、その集魚効果も無視できません。練り餌は水で溶けると煙幕のようになります。これをクロダイが捕食すると、一部は胃の中に入るものの、残りはエラから勢いよく排出されて海中に広がります。周辺にいるクロダイも水中でエラ呼吸しているので、自然に練り餌の煙幕が口の中に入ります。大半はエラから外に出ていくとしても、一部は胃の中まで入ります。これがある一定量を超えると食欲中枢がガツンと刺激されて、補食スイッチが入ってしまいます。意図的にこの状態を作り出せるのが練り餌の効果です。

エビ

 釣りに使われるのはおもにモエビとボサエビ ( イソスジエビ ) の2種類があります。河口辺りに木の枝 ( ボサ ) を沈めて捕るボサエビは、海産なので海での使用には適しているものの流通量が少なくて高価です。
 モエビは淡水産のヌマエビ ( タエビ ) やミナミヌマエビの総称で、ブツエビと呼ばれることもあります。とくに琵琶湖産のエビをシラサエビと呼び、産地から近い大阪周辺で人気のあるエサです。魚が近づいたら怖がって暴れるのでクロダイががぜんヤル気になる特効エサです。中国産も輸入されているため比較的安価ですが、生きたまま使うので水温管理と、エアーポンプが必要になります。

ボケジャコ

 スナモグリとも呼ばれる砂地のエサです。食用のシャコに似ていますが、殻が柔らかいので喰いは最高です。弱りやすくてデリケートな面はあるものの、自分で動き回って誘ってくれるので、クロダイの活性が極端に下がる冬場の特効エサとして欠かせません。サイズにもよりますが一匹60~80円と高価なので、エサ盗りが多い夏場には使いづらいエサです。
 自由に動けるように仕掛けごと底に這わせるのが基本ですが、落とし込みや紀州釣りのエサとしても優れた効果を発揮します。

カニ類

 堤防釣りでもっとも多用されるエサで、磯や堤防にいる甲羅の固いカニは外道対策としても使えます。エサ持ちがいいので一日分20匹ほど用意すればいいでしょう。現地で採取したカニは、カニ自身にとっても過ごしやすい環境なので元気で長持ちします。
 ただし、脚がつよくて堤防の壁面にくっつくと外れないので、脚を切って使う必要があります。カニ餌は一度噛んでから吐き出すのでラインを張り気味にして早めにアワセてください。

サナギ

 サナギは集魚剤にも配合されるほど匂いの強いエサです。サシ餌にするときは、頭を取って中の空気を抜き、鈎にオモリを付けて沈めるか、またはクロダイを海面まで浮かせて釣ります。
 サナギはエサ盗りが多いときに効果を発揮します。エサ持ちはいいけどクロダイの喰いはオキアミよりはるかに下。ところが雑魚にはさらに人気がないので、結果的にクロダイがヒットしやすいエサになります。

イソメ類

 主流は大きく岩虫と青イソメの2種類に分けられます。岩虫 ( 本ムシ ) は川の流れ込みがあるような潮間帯の砂利浜に棲息していて、匂いがつよいので喰いがよく、さらに遠投まで効くのですが高価なのが難点です。
 青イソメ ( 青ケブ ) は湾内の岩礁地帯が棲息地で、輸入品が多く出回っているため安価に入手することができます。どちらも夜行性なので、夜間によく動くことと、表皮がギラギラと光を反射するので夜釣りによく使われます。大きさがあるためプラントン食の小魚には手が出しにくいエサです。クロダイは噛まずに吸い込むので比較的ゆっくりアワセて大丈夫です。
 関西から東海エリアで、初夏から秋にかけて流通するフクロイソメ ( スゴカイ ) は夜釣りの特効エサです。アタリだと思ったら竿をやや送りこんでからアワセを入れてください。イシゴカイ ( ジャリメ ) は細いのでクロダイに使うことはありません。

貝類

 貝は栄養価が高くて美味しい反面、硬い殻を攻略するのが難しいので、クロダイにとっては高値の花のご馳走です。だからたとえば岩場でジンガサを見つけたら、採ってエサにすればクロダイは一発で喰ってきます。 ( 採取禁止の場所があるので漁協に確認してください ) 見た目はよくないもののヘビ貝やフジツボも同様です。
 歯の頑丈な大型になるとフジツボどころか牡蛎までも砕いて食べますが、さすがに牡蛎あたりが限度らしく、牡蛎を食べるクロダイは口が腫れて傷んでいることがあります。
 岸壁についているイガイは落とし込みに使います。この貝の殻を割って喰えるのはトビエイと 30cm 以上の良型クロダイ以外ありえません。地域によってはクロダイの主食になっていて、腹の中には真っ黒なゴミ殻がたくさん入っています。このような場所では、まず岸壁をよく見て歩き、イガイが喰われた跡を見つけます。消化されずに排泄されたイガイのクズがあれば、そこに良型クロダイが居着いていることは間違いありません。

メイタで実証! 付け餌の喰い方

だれもが知りたい、餌の喰い方を写真で実況中継!

オキアミ生 / ★★★★★

 オキアミは頭部からかじりつくことがほとんど。エサの下部から接近し、かじりついたら胸ビレを忙しく使って後退しながら喰いちぎろうとする。小さいサイズのオキアミは一気に口の中に入れ、スポスポと何度も吐き出しながら食べる。これはマダイと同じだ。

オキアミボイル / ★★★★☆

『 頭部のヒゲや足など柔らかい部分から喰いにかかっている 』
 やはりエサの下部から接近する。中にはまずオキアミの脚の部分にかぶりつき少しずつ身を崩しながら喰うケースもあった。15~18cm クラスのメイタにとってボイルは硬すぎるのか食べ辛そうに見える。ボイルがエサ盗り対策に使われるのが納得できる。

アミ / ★★★★★

『 石の隙間に入り込んだアミまで器用に食べてしまう 』
 頭部、尾部にかかわらず一気に丸呑みしたあと、2、3度エサを吐き出すと同時にエラから余分なクズを排出しながら喰っている。強烈なニオイに興奮して、沈降するエサを猛スピードで追いかけ、水底に落ちたアミまで食べていた。メイタのサイズに合ったのか一瞬にして喰い尽くすほど大好物。

サナギ / ☆☆☆☆☆

『 2~3cm の距離まで近づいたものの知らんぷりをして通り過ぎる 』
 集魚効果バツグンとされるサナギ粉。乾燥したサナギ単体をいったん海水でふやかしたあと水槽に投入してみたが意外にも釣果ゼロだった。至近距離まで近づくものの、じ~っと見ているだけで決して口にしない。エサの前を素通りしていくメイタが殆どだった。チヌクラスの大きさにならないと口にしないのか?

練り餌 / ★★★★★

『 強引な引きを繰り返しながら練り餌を喰う。エラからニゴリが噴出されている 』
 市販のニンニク入り練り餌が、すごい勢いで喰い尽くされた。1.5cm大の塊に四方から強引にかじりつき、そのまま後退すると同時にエラから夥しい量の練り餌を噴出している。2~3mm程度に丸めた小粒のエサは着水と同時に喰らいつくことがほとんどだ。

アケミ貝 / ★★★☆☆

『 殻を完全に取り、ムキミにして入れてみたら、集団で喰い付いて奪い合いが始まった 』
 殻のまま投入してみるが、やはり見向きもしないので、殻を割って中身が見えるように入れてみたところ、1尾が食い付くと、我先にと次々のメイタが飛びついてきた。つついたり、引っ張ったりして食いちぎっている感じで食べて行く。

カニ / ★★☆☆☆

『 かみ砕けなかったのか、やがて吐き出してしまった 』
 メイタに対してカニが大きかったのか、丸ごと入れると警戒して寄ってこなかった。沈んで底に着いたカニは悠然としている。そこで、やや残酷ではあるが足だけを投入したところ、元気なメイタが飛びついてきた。まるでスルメを食べるかのように、口から足の先がはみ出していた。 ※ チヌが好むカニは地域によって違います。その地域で実績のあるカニを使ってください。

芝エビのムキミ / ★★★★★

『 ただいま観察中。この後、凄まじい勢いで喰い尽くした 』
 新鮮で身が柔らかいムキミはメイタの大好物。2cm程度のムキミを投入したらちょっと大きすぎたのか、しばらく距離をおいて観察していたが、その後、寄って集まってあらゆる方向からかじりつき、凄まじいスピードで喰い尽くしてしまった。

芝エビの頭部 / ★★★★★

『 2匹同時に喰いついた! 恐るべし脳ミソパワー 』
 ムキミにした際に余った頭部をエサにしてみたら、意外にもムキミよりも上の喰いっぷりを見せた。よく観察すると、頭部そのものというよりも、脳ミソだけを器用に吸い出すように貪り喰っている。殻が硬すぎるのか、ニオイの効果なのか。とにかく一瞬のうちに脳ミソをきれいに喰い尽くし、その後には殻だけがユラユラと漂っていた。

モエビ / ★★★★☆

『 下からのアプローチでモエビの頭部にかじりつくメイタ 』
 少し鮮度が落ちて弱っていたとはいえ、エサ自体が若干動くため、喰いつくまでしばらく距離をおき警戒している様子がみえた。やはり殻の硬さが気になるのか、吐き出しては喰いを幾度も繰り返し、時間をかけて身と殻を分別した。喰いつき方は基本的にオキアミ生と変わらない。

ムギ / ★★★☆☆

『 ムギ単体では興味を示すけれど喰いつきはしない。しかし、集魚剤に漬けると一転して喰い尽くした 』
 チヌ用の撒き餌には必ずと言っていいほど混ぜ込んである押しムギ。ヒラヒラと沈降していく様子に異常なまでの興味を示した! しかし、追ってはいくものの決して食べようとはしない。そこで、液体集魚剤に漬けてみたところ、今度は猛スピードで接近し一口で平らげてしまったのである。視覚的な効果はバツグンだけど、そのままでメイタに喰わす事は難しい。

付け餌用青ノリ / ☆☆☆☆☆

『 団体さんで見物にくるのだが知らんぷりして逃げてしまうメイタたち 』
 グレ用の味付き生タイプ青ノリを試してみた。2、3匹いっしょに様子を伺いにくるもののまったく喰いつこうとはしなかった。イカダのロープなどチヌの居場所にはこのような海藻が生えていて、じっさい地域によっては青ノリを喰うチヌもいるのだからいけると思ったが失敗。 ※ 冬場、青ノリを喰ったチヌは耐寒性が増すという。

バイオワーム / ★★★☆☆

『 思い思いのところに喰いつくメイタたち 』
 チヌ用の付け餌としてもその威力を発揮するバイオワーム。エサの先端からかじりつくのかと思いきや、いきなり胴の真ん中にカブリつくのもいれば、チモト側からかじりつくのもいた。刺し餌にはオキアミや練り餌を使うのが流行しているが、身崩れもなく使いやすいエサである。

青ケブ / ★★★☆☆

『 短くしたとたん胴の部分に喰らいついた 』
 虫エサの代表選手として青ケブを試してみた。様々な魚種に有効な青ケブはもちろんチヌのナチュラルフードでもある。ただしチビッコのメイタくんには大きさ、長さが問題になるようだった。さすがに長い青ケブだとそのまま素通り。「 こんなもの喰えるかい 」そこで3分の1ほどの長さにちぎってやると、これが見事に喰ったわけであります。