ロックフィッシュを極める

紳士録 ~ 代表的なロックフィッシュについての解説 ~

■ カサゴ / Sebastiscus marmoratus

 カサゴの仲間は英語で“Mail-cheeked fishes”と呼ばれる。Mailは手紙のメールではなく、金属でできた甲冑や鎖カタビラのこと。Cheekは頬なので「甲冑の頬をもつ魚類」の意味になる。この名が示すように、カサゴ目の魚には、硬い装甲で身を護っていた時代の痕跡が色濃く残っている。とくにモヨウキホウボウやトクビレなどはまるで甲冑魚のようだ。
 ところが、カサゴ目が初めて登場したのは4000万年ほど前の始新世(ししんせい)中期。甲冑魚どころか、魚類の長い歴史からみればほとんど先端部分に位置し、現在もまだゆっくりと進化と分化を続けている状態である。
 カサゴは個体によって体色の違いが大きい。そのため、少し前まで、沖の深場にいるカサゴが大きくて色も薄いのは、環境への適応だと考えられていた。それがDNA鑑定によって新種だと判ったのが1978年。標準和名でウッカリカサゴと命名されたのが1979年。不完全ながらその見分け方が見つかったのが1999年のことだ。両者のビジュアルは非常によく似ており、とくに小さい個体では見分けることが難しい。分化して間がないから似ているのである。
 ネルソンの「世界の魚類」(1994)によると、カサゴの仲間は7亜目25科266属でおよそ1,270種類の大グループを形成している。
 カサゴ目を特徴づけるのは目の下の骨(眼下骨棚)の形状である。フランス人の分類学者Cubeは、一般的な魚類ではL字型をした第三眼下骨が、逆T字型になっている一群の魚類をカサゴ目として分類した。最初の一匹の特徴が子孫達に引き継がれていると考えたのだ。研究者たちは長い間、その分類が完璧だと信じてきたのだが、遺伝子研究の発達によって、逆T字型の魚類はどうも1系統だけでないようだと判ってきた。
 つまりカサゴ目は、共通の先祖を持つ単系統のグループではなく、いくつかのルーツが混じった多系統のグループだった訳だ。メバルやオコゼ、カジカなどはよく似ているので疑うまでもないが、棘どころかウロコすら持たないホテイウオやクサウオなど、明らかに印象の異なる魚を仲間に入れたのは間違いだったのではないか。今後の研究によって大きく編成が変わることが予想される。

■ キジハタ / Epinephelus akaara

 瑠璃色の眼が雉(きじ)の羽根を連想させることからキジハタと命名されたようだ。関東以外ではアコウという地方名も一般的だが、これは、特徴のあるオレンジ色の体色からアカウオ→アコウとなったものだ。学名のEpinephelusとはラテン語でハタやメロのこと。Akaaraはアカァーラではなく、なんと「赤アラ」のローマ字表記である。命名者はシーボルト。彼には自分の名前を学名につけるイヤなクセがあったが、キジハタのときは居住地長崎での呼び名である赤アラをそのまま採用してくれた。ちなみにアオハタ(タカバ、アオナ)は Epinephelus awoaraで、これは「青アラ」が由来である。
 キジハタが多いのは岩の凸凹が大きくて体を完全に隠せる荒根の岩礁である。海底がゴロタ石や平たい岩盤の場所にはあまりいない。体が赤いのは保護色だから、紅色藻の生えた場所が本来の居場所になる。もちろんショアからも釣れるが、明るいうちは緑色の藻が繁っているような場所にはいないことが多い。キジハタもアカハタも紅色藻の中でこそカモフラージュ性を確保できるからだ。
 堤防から釣るなら夜釣りが圧倒的に有利である。ちもとホタルでエサをアピールし、テトラの際や堤防の切れ目、または潮通しのいい場所をロングキャストで広範囲に探る。活性が高いときは中層まで浮いてエサを追うから、少しくらいポイントから外れていても、誘われて出てくることがある。
 釣り座から移動できないときは生きアジやイワシの泳がせ釣りが適している。コツはとにかく活きのいいエサを使うこと。死んだエサではまず釣れない。眼がいい魚なのでハリスを細くして最低でも50cmはとる。
 足場のわるいテトラの上から釣るときや、探り釣りをするなら、手間のかからない プニイカ がお勧めだ。バイトがあっても千切れないので手返しは最高である。普通、ワームをいったん口にした魚は、次はヒットしないけど、塩素を含まず生分解性の高い プニイカ なら追い喰いしてくるし、ケミホタル25 をセットすれば、飛んでいく軌跡が見えるのでポイントを狙い打ちにできる。

■ メバル / Sebastes inermis

 一般的に外洋性の魚と中・深海魚は赤色に対する視感度が低いのだが、メバルは赤色に非常に敏感に反応する。月明かりのない暗い夜、ワームを赤色に変えただけで入れ喰いになった経験はないだろうか。または、それまで喰い盛っていたのに、カラーチェンジしたらパタリと喰わなくなって、元の色に戻したらまた入れ喰いになったこと。メバルを釣るときは赤色のワームがキーになる。
 水温と透明度によってヒット率は変わるけれど、冬は濃い赤または黒にヒットが集中する。夏になるとクリアとパールに釣果が移っていき、秋と春には透明赤と透明ピンクにアタリが集中するようになる。年間を通じて万能なのは、パールとクリアと赤の3色だ。昼間ならパールの釣果が圧倒的で、赤にヒットする確率は数パーセントしかない。ところが、いったん夜を迎えると、赤色ワームの効果は絶大になる。だから夜釣りをするなら年間を通じて赤とパールの2色だけで問題ない。アピールカラーだとスレが早いが、赤とパールならいつまでも釣れ続く。
 どの季節、どのカラーであれ、表面が滑らかでバイブレーションが発生しないワームはヒットしにくい。群れをつくるタイプの魚は、常に側線レーダーでほかの魚との距離を測っているためバイブレーションに敏感である。テールが長すぎて、アタリがあったのにフッキングしないときは、鈎が口の中まで入るように切って短くするが、このときも切るのはヘッドの方である。テールを切ってしまうとアタリは明らかに激減する。
 メバルは外灯がない港湾でも色を見分けるほど優れた色感を持っているうえ、明暗差に対する感受性も高い。しかし、いかに暗視能力の優れたメバルといえども、暗い海中を素早く動く物体を捕捉するには限界があるから、獲物を眼でロックオンして襲いかかれるようにデッドスローでリーリングする。それもできるだけ姿を見られないように釣るのである。とくに、外灯を背にしたときは、水面に影が落ちないように注意しないと怯えて喰わなくなる。姿を見られないよう、姿勢を低くしてキャストするだけでも釣果が増える。

■ アイナメ / Hexagrammos otakii

 カサゴ目に分類されているアイナメだが、一般的なカサゴとは体型があきらかに違うし、口も受け口ではなくて顔の先端についている。頬の辺りのヨロイのような棘もない。また繁殖期のオスが黄色い婚姻色になる、メスが産み付けた卵を外敵から守るなど、生態もユニークである。
 ウロコが細かくて油を塗ったように滑らかなので、各地でアブラメとかアブラコ、アブラウオなどと呼ばれている。それで、アイナメの名前は、鮎(あゆ)のように滑(なめ)らかの「アユナメ」が由来だとする説が生まれた。
 アイナメには縄張りを作る習性があって、まるで鮎と同じだから鮎(あゆ)並(なみ)だとする説もある。ほかに、食べたときに鮎並みに美味しいからだという説。さらに、自分の子供を愛するから愛魚女だ。いやいや愛する女性のニオイがするんだ。卵をライバルのオスから守るときに互いの口を噛み合うから相嘗だという説もある。
 成魚の特徴として、同じ底性魚のキスやハゼのように浮き袋が退化していることが挙げられる。稚魚の頃までは残っているが、成長したアイナメは中層に浮いて静止することができず、浮くためには泳ぐ必要がある。かつては浮き袋を持っていたのだが、生活圏を浅場の海底に特化した結果、浮く必要がなくなって小さく退化したらしい。
 泳ぐのは得意で、ルアーを追う距離が長いから澄み潮が釣りやすい。エビ、カニ以外にイカやウニ、巻貝も食べるほど雑食性がつよいので、エサ釣りの場合は、その時期のアタリエサを探ることが重要である。
 ロックフィッシュ用のワームには様々なカラーバリエーションがある。ホワイト(パール)、透明、ブラックの無彩色鉄板トリオ以外では、ごく大ざっぱに言って、赤系統のヒット率が高くて青系統のヒット率は低い。では中間の緑色はどうなのか。緑色のワームはヒットのバラツキが大きく、釣れる場所と釣れない場所がはっきりしている。そして、釣れる場所には黄緑色をしたアイナメの稚魚がいるのである。つまり、アイナメの稚魚やイソスジエビ、コシマガリモエビなど緑色のエサを食べている魚だけが緑色のワームに反応するのだ。

■ ソイ / Sebastes zonatusschlegeli Hilgendorf

 魚をサカナと読むのは訓読みで、漢語の発音である音読みだとウオである。中国では魚をユゥ(yú)と発音していて、これが日本人の耳にはイゥと聞こえる。漢字が日本に輸入されたとき、魚という文字といっしょに読み方も伝わってきて、そのとき以来、イオまたはウオという読み方が定着した。沖縄では魚をイュというし、本土の漁師さんにもイオと呼ぶ人は少なくない。
 ソイの「イ」はこのイオから来ている。「ソ」は磯(いそ)のことだ。語源としては「磯場の魚」という意味で、もともとはイソイオだったのが短くソイとなったようである。(これには異論があってアイヌ語で穴を意味するスイが由来とする説もある)
 ソイは磯魚の集合名詞であり、クロゾイのほか、ウスメバル、エゾメバル、エゾムラソイ、キツネメバルなどを含んでいる。これらの魚は形がよく似ているうえに、体色の個体差も大きいので区別が難しい。そこで、ごく大ざっぱに、眼が大きければメバルとして、大きくて色が黒っぽければソイとしているようである。メバルの腹部を海底に押し付けて安定をよくした魚がカサゴだから、もちろんカサゴにも似ていて、生息環境にも食性にも共通点が多い。ソイは東北から北海道にかけての人気魚である。九州にもちゃんと棲息しているのだが、知名度が低いためメバルやカサゴと間違えられることが多い。
 ベッコウゾイやムラソイは昼釣りが一般的だが、クロソイは圧倒的に夜釣りの方がよく釣れる。エサ釣りだとLEDウキに中通しオモリ3号くらい。スイベルをオモリ止めにして、ハリスは4号を50cm。エサはなんでもOKだ。最初はタナを底近くに合わせて、だんだんと層を上げていき、海面から2mくらいまで探ってくる。外灯があるときは浮いているかも知れないので場を荒らさないよう上から下へと探っていく。
 ルアーの場合はジグヘッドにカーリーテールかシャッドテールで、中層をスイミングで水平方向に広く探っていく。ヒットがなければジグヘッドを軽くしてスピードを緩くしてみる。底根の粗い場所を釣るときはテキサスリグに変更すればいい。
● ロックフィッシュの繁殖戦略 ●
 外洋性魚のほとんどは、おびただしい数の分離性浮遊卵を産んで、あとは波まかせ風まかせの戦略をとっている。海の平均の深さは3700mくらいで水温も2~4℃しかない。海底は砂漠状態なので、卵を産み付けるのに適していないし、孵化した仔魚のエサも乏しいのがその理由である。
 太陽光のあたる表層ならプランクトンが多くて食料に困らないうえ、波や風に運ばれていった先で生活圏を広げることも可能だ。潮流にバラ撒いて密度を薄くすれば食害も集中しないし、広い外洋なら食べられる前に大きくなれるだろう。100万粒の卵のほぼ全部が食害に遭っても2粒が大人になって子孫を残せればいい。実際、エンジン付きの漁船が出てくるまで、魚類はこの方法で大繁栄していた。
 イカの多くは卵塊を海底に産み付ける。ところがスルメイカは外洋でゼリー状の卵塊を産み、漂流している間に大きく成長させる戦略を選んだ。これも一時は年間27万トンもの水揚げを誇ったものの近年では半減してしまった。
 ロックフィッシュの中では、例外的にキジハタが浮性卵を産む。アイナメは沈性卵を岩礁に産み付ける。敵は多いけど孵化するまでは、オスが辛抱づよく食害から守り抜く。
 カサゴ類のごく一部に、凝集性浮遊卵を産む種類がいるが、残りのすべてのカサゴ類、およびメバルとソイは、メス親の胎内で卵を孵化させ、仔魚になるまで育ててから外部に放出する卵胎生魚である。
 生物の一般論として、進化が進むほどに多産から少産に向かう傾向が確認されている。膨大な数の卵を捨石にして、あとは運に任せるような方法をとらなくても、すでに遊泳力を備えた仔魚を生めば、競争の厳しい場所でも生存率を飛躍的に高めることが可能だ。
 沿岸は棲息に適しているだけに様々な魚種の住処となっている。海藻が多くて、ハッチした仔魚たちの隠れ場所が多いのはメリットだが、仔魚ばかりではなく、その仔を産みに来た親もいる。ベラやハオコゼなど周囲はライバルだらけなので、卵があればあっという間に食べ尽くされてしまう。つまり、卵胎生でなければ生き抜くのが難しい環境なのである。

特別授業 ~ 5分でわかる! 魚類の歴史 ~


 およそ4億9000万年前~5億4000万年前の5000万年間をカンブリア紀と呼びます。カンブリアとは英国ウェールズ地方の古い呼び名で、カナダのバージェス頁岩(けつがん)をはじめ、ウェールズ地方と同じ年代の岩盤からは数多くの古生物の化石が発掘されています。
 この時代、すべての動物はまだ海中にいました。クラゲのような無脊椎動物の全盛期を経て、初めて眼を持った生物が登場するのがカンブリア紀です。生物は眼を持つことで、敵や獲物の大きさ、正確な位置などを知り、自分自身の装備を発達させて種の多様性を増してきました。
 中期にはナメクジウオに似た脊索動物が誕生します。エラとヒレはあるもののウロコを持たず、まだ顎が備わっていなかったため、円形の口でエサの体液を吸い込むように補食していました。肉食動物が少なかった時代でもあり、泳ぐ動作は緩慢だったと考えられています。
 次にくるのがオルドビス紀の5000万年間です。この時代にはウニやナマコ、ヒトデなどが爆発的に増えています。円形の口をした甲冑魚(甲皮類)も誕生しました。オルドビス紀に続くシルル紀に入ってから、上下の顎を備えた甲冑魚(板皮類)が登場したものの、頭部だけを装甲して可動部を保護できない不完全な構造だったため、やがて絶滅してしまいました。
 重い外骨格の甲冑魚に素早い動きは無理だとしても、顎で肉を噛みちぎるほうが、エサをしゃぶるよりも優位なことは明らかです。上下に動く顎は、それまでの藻や腐肉を食べる静的な生活から、動物を追って補食する動的な生活へと変化をもたらしました。魚類の発生から5000万年以上を費やして獲得した顎の構造は、その後のすべての脊椎動物に引きつがれていきます。
 4億2000万年~3億6000万年前のデボン紀を迎えると、サメの仲間などの魚食性魚が次々に誕生しました。デボン紀の6000万年間は、多くの種類の魚類化石が出現することからから「魚の時代」とも呼ばれます。
 魚類の繁栄に大きく貢献したのは、体の中心に硬い骨を持った硬骨魚たちです。硬骨魚は淡水域に進出した魚類から生まれました。川の流れに逆らって泳ぐため、力強くスムーズに動く筋肉と、それを支えるべく骨格が発達し、さらに素早い泳ぎをコントロールするために脳が発達したことで海への再進出が可能になったのです。
 ハイギョやシーラカンスの仲間もこの時代に登場しました。空気中での呼吸を可能にする肺と骨格のある丈夫なヒレ。さらに皮膚を乾燥から守るウロコを獲得したことで、魚類は陸上への進出を果たし、のちに両生類から爬虫類、鳥類、哺乳類へと分岐していきます。
 デボン紀の魚類の多くは、魚食性恐竜やサメから身を護るために、象牙質でできた硬いウロコで覆われていました。骨が表皮で発達したものがウロコです。ガーやアロワナのように、象牙質で菱形のウロコは硬鱗と呼ばれます。一枚板の装甲と違って、動きの自由度は改善されるものの、敵に襲われたときに牙が通りにくいだけであって、筋肉へのダメージは避けられません。そこで魚類はさらに外装を軽く仕上げ、内部骨格を丈夫にして、噛まれる前に逃げる方向に進化しました。
 イワシやアジなど現代の魚類の大多数は、コラーゲン繊維の上に骨質層がコーティングされた薄片状のウロコを持っています。この軽量なウロコを円鱗と呼び、硬骨魚類の中でも、この円鱗とウチワ状の尾ビレを備えたものが真骨類に分類されます。その最初の一匹はおよそ1億年前の白亜紀に登場したニシンの仲間でした。
 ウロコが薄くなったために失われた強度は重ね合わせることでカバーできます。胴体の屈曲性が劇的に改善されたおかげで、かつてない高速な動きが可能になりました。外装が軽くなって重心が中央に移り、直進安定性だけでなく俊敏な回転性能も獲得したことで現代の魚が完成したのです。およそ28,000種とされる魚類のうち、この真骨類に所属する魚類は20,000種にのぼります。地上種を含めて全部で63,000種の脊椎動物中、最大のグループであり、多様性(種の豊富さ)を尺度とする限り、もっとも成功したタイプといえるでしょう。
 魚類はいまやチベット高原にある標高5,030mのプマユムツォ湖から、水深8,000m以上の深海にまで適応放散しています。どちらも現時点では非常に厳しい環境ですが、地球的規模の変化が起こったときには適応できる可能性を秘めています。棲息する環境次第では、運動性能よりも浮遊性能、擬態や集団行動などが優先されるケースもありますが、水中環境の大きな変化に適応するには、画一的で融通の利かない生物群よりも、多様性を持った生物群の方が有利なのは間違いありません。
 5億年前から進化を続けてきた魚類は4億年もの時間をかけてその基本構造を完成させました。生態系の下位の魚たちは防御の方向へと、上位の魚たちは攻撃の方向へと、弱肉強食の世界への対応してきた結果が現在の姿です。顎を作り背骨を作って、円鱗を持つまでに4億年。ひどく遅い歩みにも感じられますが、アフリカのビクトリア湖が1万2000年前に干上がったあと、最初に住みついたたった数種類のシクリッド(カワスズメ科)が700種類にまで分化した例からすると、魚類の適応と進化のスピードは想像以上に速いことが判ります。
*白亜紀(1億5000万年前~6500万年前)
*ジュラ紀(2億年前~1億5000万年前)
*三畳紀(2億5000万年前~2億年前)
*ペルム紀(3億年前~2億5000万年前)
*石炭紀(3億6000万年前~3億年前)
*デボン紀(4億2000万年前~3億6000万年前)
*シルル紀(4億4000万年前~4億2000万年前)
*オルドビス紀(4億9000万年前~4億4000万年前)
*カンブリア紀(5億4000万年前~4億9000万年前)
註:オルドビスもシルルもウェールズに住んでいた古代ケルト部族の名前。デボンは英国南西部の州名。英国の地質学者が中心で研究したため英国関連の命名となった。石炭紀は石炭が取れる地層だから。ペルムはロシアの地名。三畳は三色の地層が重なっていたため。ジュラはフランス東部のジュラ山脈に由来。白亜とは石灰岩のこと。

 ロックフィッシュの仲間で一番大きく成長するのがハタ科のタマカイです。英名はGiant Grouper。繁殖時にグループを作ることからグルーパーと呼ばれます。体長2.7m、体重は400kgに達するというからその大きさはほとんどジュゴン並みで、サメをも喰らうと伝えられています。このモンスターの胸ビレには肉鰭類のシーラカンスのように、骨の入った腕があります。両者は姿も習性も似ていてデカイくせに岩陰が大好き。屋久島周辺のタマカイはテトラに潜んでいるというから、やはりロックフィッシュの仲間なのは間違いありません。

 英語圏でもRockfishといえば日本と同じでカサゴやメバル類の総称なのですが、その守備範囲は非常に広くて、メヌケやキンキといった深海性の赤魚や、銀色のウロコをした中層魚のストライプトバス、地域によってはナースハウンドと呼ばれる小型のサメを指すこともあります。
 海藻の生えた岩場を好む魚たちに共通の特徴として、カモフラージュ性の高さが挙げられます。とくにカサゴ類は姿形が似ていて見分けにくいため、大西洋と太平洋の北部ではおおまかにRed-RockfishとBlack-Rockfishの二色に分類して、さらにトゲの硬さで2つに分けています。個々の種類はBlack、Blue、Bronze(銅色)、Brown(茶色)、Grass(草色)、Gray、Green、Olive、Pink、Vermilion(朱色)などと見た目の色で呼ぶことが多いようです。
● 日本のメバルの色の違い ●

アカメバル : 生体赤色 / 死後赤色

全体に赤っぽい体色をしているので一般的に赤メバルとか金メバルと呼ばれる。体色の変化が大きく、生時褐色のクロメバルと混同しやすいが体高が低くてスマート。さらにウロコが粗い。ヒレが黄色っぽい。胸ビレが長いことでも見分けが可能。藻の多い浅い場所に居着くタイプで全体的に小ぶり。資源量は多い。

シロメバル : 生体褐色~黒色 / 死後茶色

関東で黒メバルまたは茶メバル。西日本で黒メバルまたは本メバルと呼ばれる。アカメバルでなければほとんどの場合シロメバルである。体色は濃い褐色だが、死んだクロメバルほど真っ黒ではないためシロと名付けられた。やや体高があり、腹ビレと尻ビレが褐色なのでアカメバルと区別できる。岩礁帯のやや開けた場所に多い。

クロメバル : 生体青色 / 死後黒色

俗称を青メバル、青地、ブルーバックとも呼ばれるように背中に青い部分があるのが特徴。潮に乗って浮き、表層でヒットするため背中がサバのように青くなっている。体型はズングリとして非常にパワフル。性格は乱暴。西日本の外洋に棲息するが数は少なく、死ぬと黒く変色するので市場では黒メバルとして流通する。
一目でわかる進化度の見分け方

 魚類の形態はじつに様々です。いかにもスピーディに見える細長い魚も、ほとんど球形に近くて遊泳力の乏しい魚もいますが、意外にもこれらと進化には相関関係が認められません。進化の度合いを知る目安として、原始的な魚類ほど、運動性能に力点を置いた構造になっていないことが挙げられます。

: 運動能力の違いはヒレに現れます。背ビレの形状は魚類の系統と関係が深く、ごく大ざっぱに言って、初期の魚類の背ビレは一基だけでした。次に、俊敏に動くために背ビレを2基備えた魚類が誕生しました。代表的なところでスズキの背ビレは二基あります。カサゴ目の背ビレは膜で融合しているため一基に見えますが、これも本来は二基です。マダラやスケトウダラは三基もの背ビレを備えています。 : 目安のひとつとして胸ビレの位置にも注目してください。胸ビレはもともと腹の下側で海底に接する位置にありました。それがより高速でも安定するように、上へ上へと体の中心線近くまで移動してきました。また、腹ビレも最初はお尻に近い場所にあったのが、だんだんと頭部に近い位置へと移動してきました。発生の古いニシンやサケはほとんどお腹の中央にありますが、カサゴなどの腹ビレは胸ビレの真下まで移動してきています。腹ビレが胸に近いほど新しい設計だと言えます。 : 骨の数も進化と密接にリンクしています。進化するにしたがって、複雑な機構を手に入れ、骨の数が増えるかと思いきや、じつは進化するほどに、使わない骨が癒着・融合して少なくなってしまうのです。この、進化の先端にいるほど骨の数が減る現象はウィリストンの法則と呼ばれています。