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“ 養殖業者さん ” に聞いてみた
グレとはいったいどんな魚なのか。大分県南の蒲江町でグレを養殖している丸二水産さんに聞いてみました。ウニ加工場の前にイケスがあり、マダイやヘダイといっしょにグレが泳いでいます。グレは一番底の暗がりにいました。

[ 取材協力 ] 丸二水産
大分県佐伯市蒲江大字西野浦2643
TEL 0972 - 42 - 1600

【 ブリのイケスで網のお掃除 】
 目の前の海で6〜10cmの幼魚を捕ってきてイケスで育てています。親から採卵して育てる完全養殖ではなくて天然種苗からの畜養ですね。幼魚がタダで手に入るので卵から育て上げる必要はありません。
 グレもオナガもイスズミも、オキナメジナの稚魚もみんなここにいるので、たぶん産卵も湾内でしていると思います。親は夜になるとヒザくらいの水深の場所までやってきて、石に寄りかかって寝ていますよ。
 ここのイケスの稚魚は海底にカゴを仕掛けて捕りました。物陰の好きな魚だからカゴの上から柴を被せて暗くしてあげないと入りません。湾内で生まれたグレは一部だけが地付きのまま残り、20cmくらいになるとほとんどが沖に出て行きます。磯伝いに移動していくようです。
 沖でモジャコ(ブリの稚魚)漁をしてもグレの稚魚が混じって捕れるので、湾内だけでなく沖の岩場でも産卵していると思います。アジの稚魚がいるような潮通しのいい場所ですね。捕れたグレの稚魚に商品価値はないので、ブリのイケスにいっしょに入れて、網の掃除をして貰います。イケスの網に海藻がつくと水の通りが悪くなるので、それを防ぐために草食性で海苔を食べるグレを入れるわけです。
 グレはほかの魚に比べて成長が遅いけど、沖のイケスなら天然の倍くらいの速さで成長しますよ。網につく海藻とブリの配合飼料のおこぼれだけ食べて4年で30cmくらいになります。


【 海苔とご飯大好き! 】
 自家用イケスにいるグレですが、当社では海産物を生産しているので、加工中に形の崩れたウニの卵巣や内臓、ムール貝のクズなどを餌にしています。天然の成魚は、なつきにくく餌付けには何日もかかりますが、飼われているグレは腹が減ればなんでも食べますよ。イケスを変えたりしていじめると1日ほど喰わないことがあるくらいです。
 普段は海苔みたいなコケの類を食べているようです。植物食が中心で、ワカメはあまり好きじゃないけどスイカやトマトまで食べます。ご飯も大好きでよく食べます。何でも食べてくれるのでアミや配合資料を与えずに済んで安上がりですね。
 雑食性がつよく、どんなエサでも一応は口に入れてみて、食べられないものは吐き出します。たとえばカキの身のクズをあげてカキ殻があれば一瞬で吐き出します。だから鈎では釣りにくいのですね。
 かなりの雑食ですけど共食いしたような話は聞かないし、生きた小魚を襲うことはないと思います。イケスから逃げ出してもなんとかやっていけるようで、ヒラメ養殖の排水口あたりでエサを拾っていますよ。

【 トリは嫌い 】
 グレはほかの魚と比べると優しい性格で恐がりです。好奇心がつよいし、知能は高いと思います。この辺りでグレのことをタカイオと呼んでいますが、知能が高いから高イオって言うのですよ。(イオはウオのこと)
 幼魚時代の天敵はゴイサギとウミウです。大きくなってからはカモメでしょうね。トンビは弱って浮いた魚しか食べないのでグレを襲うことはないと思います。グレは眼がいい魚ですから、海上の気配には非常に敏感で、イケスの周りで人間がトリのマネなんかすると怖がって引っ込んでしまいますよ。

【 足音を聞き分ける 】
 耳もいいですね。いつもエサをやりに行く人の足音を覚えていて、行くと喜んで浮いてきます。違う人が行くと反応しません。大きな声を出すと驚いて散ってしまうので人の声も聞こえていると思います。養殖のブリも自分ところの船のエンジン音は知っていて、エサをやりにいくと浮いてきますよ。よその船だと沈んだままで反応しません。

【 夏はショーガで煮物 】
 この辺りでは昔からグレとオナガの区別をしていました。オナガは体型がすらっとしていて味は一番いいです。オキナメジナのことはセグロと呼んでいます。ウロコの粗い魚ですね。味はグレと変わりなく美味しく食べられるのでこれも市場に出ます。
 どれも昔に比べて味はよくなったと思います。撒き餌のオキアミを食べているからだとも言われますが、たぶん氷が自由に手に入るようになって、みんながクーラーを持つようになったのと、ちゃんとシメて血抜きするようになったからでしょうね。それが一番大きな理由だと思います。
 基本的にエビ、カニなどの甲殻類を食べている魚は味がいいです。うちはウニを主食にしているので味は絶品ですよ。もし釣ったグレの匂いが気になるときはショーガを入れて煮付けにするか、または焼き物をお薦めします。植物食が中心の冬はもちろん刺身ですね。

【 グレの群れは20トン! 】
 11月から2月にかけての磯寄りする時期には大きな群れを作って移動するので、岬沖の定置網では時折10〜20トンという単位で捕れることがあります。
 年末になるとお正月魚のブリやマダイの人気が高まります。グレも味がよくてたくさん捕れる時期なのですが、市場の要求がないため浜値は下がります。2月も後半になってオキナメジナが捕れ始めたらグレの時期は終わりです。たぶんどこか沖の磯場に自由に遊びに行くのではないでしょうか。



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